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第80回 “ガクチカ”と“ブラックインターン”の関係

掲載日:2023/06/16

“ガクチカ”(就職活動における定番質問「学生時代に力を入れたこと」の略)という言葉を、大学1~2年生の口から聞くことが増えました。入学早々のタイミングで「ガクチカを作るには、どんなことをすればよいのか」といった相談を受けたこともあります。この数年、コロナ禍の大学生活で、ガクチカが書けずに困っている……といった話題が、メディアで幾度となく取り上げられました。就活用語だった“ガクチカ”という言葉の認知が広がり、不安に感じる学生が増えたのでしょう。

同じタイミングで“インターンシップ”という言葉を、目にする機会が増えています。昨年6月に文部科学省と厚生労働省、経済産業省の三省が合意して「インターンシップの推進に当たっての基本的考え方」(以下、三省合意)(※1)が改正されました。今年度から該当プログラムがスタートしているので、注目度が高まっているのでしょう。それに合わせて、インターンシップ募集のための専門サイトの新設が目立っています。

少し横道にそれますが、三省合意に関する補足説明をさせてください。インターンシップで得た情報を、採用選考に活用できるようになりましたが、それは「3月広報開始、6月選考開始」という政府主導の採用スケジュールを順守したうえでの話です。また、実施は長期休暇に5日間以上(専門活用型は2週間以上)で、半分以上を就業体験に当てる必要があります。つまり、今年の夏休みに手間のかかるインターンシップを実施しても、内定を出せるのは来年の6月以降になります。こうした運用上のルールを知らずに、インターンシップという名のプログラムを実施すれば、採用に活用して良いといった誤解が一部にあるようです。ご留意ください(※2)。

(閑話休題)

インターンシップ専門サイトを見ると、就活生ばかりでなく、低学年を対象にしたものが数多く掲載されていることが分かります。「大学1年生・2年生歓迎」と謳っているサイトも少なくありません。ガクチカに不安を抱える学生の増加。インターンシップへの注目度の高まり。この2つが影響し合い、低学年インターンシップが盛り上がりそうな気配を感じています。低学年インターンシップの場合、長期で実務を担う有給タイプのものが多く存在します。給与はアルバイトと同程度か少し低いケースが多いのですが、ガクチカ経験ができる分、アルバイトよりタイパ(タイムパフォーマンス)が良い!と考える学生が少なくないようです。職場で実際の業務に触れる。仕事をする社会人と交流する。こうした経験は、学生に多くの気付きを与えることができるので、有意義な活動と言えます。

しかし、問題がないわけではありません。インターン生を労働力として期待する企業のなかには、ワークルールを軽視した動きが見られます。ある長期インターン専門サイトには「長期インターンでの給料は、あなたが“戦力かどうか”によって決まります。(…)あなたの成長に合わせて無給から有給へ進化していくものと考えましょう。(…)成長して実力が伴ってきたタイミングで有給インターンへと変化します」と書かれてあり、最初は無給が当然のような伝え方をしています。

使用者から業務に関わる指揮命令を受けて、利益につながる仕事をしていれば、インターンシップであっても労働者に該当します。当然、労働基準法をはじめ、最低賃金法が適用されるわけです。しかし、あるインターン求人では、電話やオンラインを使った営業活動をおこないながら、給与は成果報酬制でした。時給が最低賃金に満たないものもあります。ブラックインターンと言われても仕方がないでしょう。

「インターンシップだから無給でも仕方がない」「未経験でも実務スキルを磨けるならやってみたい」と考える学生が多いのも確かです。ガクチカにもなるし、上手くすれば内定につながる可能性だってある。そんな話を聞けば、学生が興味を抱くのは当然でしょう。仕事にやりがいを感じて、自分の労働条件に疑問を感じていないケースもありました。本人が納得している以上、問題が表に出ることはありません。グレーゾーンが広い労働形態と言えそうです。

学生が納得しているからと言って、ワークルールを軽視してよい理由にはなりません。似たようなブラックインターンは以前からありましたが、盛り上がりを見せている今だからこそ、学生向け・企業向けのガイドラインが必要だと感じています。三省合意への正確な理解とともに、インターンシップという名の下で行われている労働についても、ワークルールに則った正しい認識が求められます。

  1. 「インターンシップの推進に当たっての基本的考え方」改正
  2. 産学で変えるこれからのインターンシップ

執筆者紹介

キャリアコンサルタント 平野 恵子

キャリアコンサルタント 平野恵子

大学低学年から新入社員までの若年層キャリアを専門とする。
大学生のキャリア・就職支援に直接関わりつつ、就職活動・採用活動のデータ分析を基に、雑誌や専門誌への執筆などを行う。国家資格 キャリアコンサルタント

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