採用・昇格・人材・組織開発の日本経営協会総合研究所

第73回 新入社員の大切な仕事

掲載日:2022/04/07

新年度をむかえ、多くの若者が新社会人となりました。今年の新入社員は、インターンシップから内定式まで、ほとんどがオンラインです。対面で先輩社員と上手くやっていけるか、リアルな職場に馴染めるかなど、コミュニケーションに緊張や不安を感じている人は多いでしょう。何気ない会話を通して、安心させてあげてください。
雑談時の話題として、簡易年表を作ってみました(4年制大学をストレートで入学、卒業した場合)。

<2022年度、新入社員年表>

  • 1999年生まれ
  • 2004年(5歳)日本の人口がピーク
  • 2007年(8歳、小学2年)YouTube日本語版開始
  • 2008年(9歳、小学3年)Twitter日本語版開始、リーマンブラザーズ破綻
  • 2011年(12歳、小学6年)東日本大震災が発生、LINE開始
  • 2013年(14歳、中学2年)東京オリンピック開催決定
  • 2016年(17歳、高校2年)高校生のスマホ所有率93%、マイナス金利
  • 2017年(18歳、高校3年)「忖度」が流行語大賞
  • 2019年(20歳、大学2年)「平成」から「令和」へ
  • 2020年(21歳、大学3年)新型コロナにより大学はオンライン授業に
  • 2021年(22歳、大学4年)東京オリンピック開催

人口が減少していく社会で育っています。小学生のときにYouTube、Twitter、LINEといったSNSサービスがスタートしました。リーマンショックや東日本大震災も小学生のときです。東京オリンピック・パラリンピックの誘致が中学2年生で決定し、大学4年生のときに1年遅れで開催。新型コロナによって規模は大幅に縮小されましたが、学生ボランティアとして参加した人もいるでしょう。光と影を交互に体験しながら、成長してきた世代と言えそうです。

また、成熟した社会性を獲得するための大学生活を、半分近く損なった世代でもあります。それまでいた集団を離れ、異なる環境や文化で育った人たちと交流することで、言葉遣いや挨拶の意義、人との物理的もしくは心理的な距離感の適切さなど、社会的な立ち振る舞いを成熟させていきます。そうしたトレーニング機会が得にくく、家族を中心とした同質的コミュニティーで過ごすことを強いられました。例年よりも、未成熟さを残している人は多いでしょう。

育成する立場からすれば、今年の新人は大変そう…ということになりますが、コミュニティーに未成熟な人間がいることで、組織(チーム)力が高まる可能性もあります。

数年前の新入社員研修の出来事です。受講生のほとんどは大卒および院卒でしたが、数名の高卒者もいました。この年代の4~6歳差というのは大きく、経験値も知識量も格段に違います。チームでビジネスワークをおこなうプログラムでは、研修内容についていけるか、メンバー同士の協働が成り立つのか、少し不安でした。しかし意外なことに、高卒者がいるチームの方が、より円滑にビジネスワークをこなし、活発な対話が成立していたのです。

印象的だったのは、休憩時間の過ごし方です。多くの受講生はスマホを取り出し、画面を見ながら、たまにメンバーとおしゃべりをする…といった感じで過ごしています。でも、高卒者がいるチームは「△△はテキストのココを参考にするといいよ」「〇〇の書き出しは私が手伝うね」など、最年少メンバーを中心に、多くの会話が成立していました。結果として、よりスムーズな協働が機能したのでしょう。

経営学の古典的研究では、新メンバーの加入効果として、組織や職場の活性化をあげていますが、新卒採用では未成熟さという要素が加わることで、周りの人間の庇護欲も高めているように感じます。新型コロナをきっかけにテレワークが増え、職場のコミュニケーションは乏しくなっています。だからこそ、新入社員への庇護欲を組織(チーム)内コミュニケーションのトリガーとして活用し、既存メンバーの協働を引き出す効果が期待できそうです。意欲ある未成熟な若者は、その存在だけで組織に貢献しているのかもしれません。つまり、新入社員の大切な仕事の1つは、多くの先輩社員に助けてもらうことなのでしょう。

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執筆者紹介

キャリアコンサルタント 平野 恵子

キャリアコンサルタント 平野恵子

大学低学年から新入社員までの若年層キャリアを専門とする。
大学生のキャリア・就職支援に直接関わりつつ、就職活動・採用活動のデータ分析を基に、雑誌や専門誌への執筆などを行う。国家資格 キャリアコンサルタント

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