採用・昇格・人材・組織開発の日本経営協会総合研究所

第69回 オンライン授業の出席率が高い理由

掲載日:2021/08/18

暑くて少し重い空気の毎日が続いています。配慮を要する生活も長引いているので、心も体も頭も疲れ気味…という方は多いのではないでしょうか。今回、難しい話題はできるだけ避けて“オンライン授業あるある”を中心に、気取らない学生の日常生活についてお話ししたいと思います。

出席率アップのオンライン授業

40~50代の方が大学生だった頃と比べて、授業の出欠席は厳密に管理されています。文部科学省の指導にしたがい、3分の2以上の出席を単位付与の条件としている大学が多く、毎授業後に提出するリアクションペーパーを平常点として加算するケースも少なくありません。真面目に出席するのが当たり前で、(私の事例で言えば)グループワークを毎回行う、つまり苦手意識を持つ人が多い対面授業でも、おおむね85%前後の出席率を維持していました。

新型コロナの影響で、今はオンライン中心の授業(Zoomによるリアルタイム授業)です。オンラインでもブレイクアウトルームを使って毎回グループワークを行うし、慣れないオンラインコミュニケーションを嫌がり、出席率は下がるかも…と当初は心配していました。しかし、杞憂に終わりました。出席率は約10ポイント近くアップし、平均95%前後をキープしています。当然、学生が頑張ってくれているおかげですが、オンラインならではの創意工夫(?)も要因の1つと言えそうです。

オンライン授業あるある

<パソコンの前にいない学生>
少人数ワークのためにブレイクアウトルームへ招待しても、メインルームから移動しない学生が必ず何人かいます。何度呼びかけても無反応です。授業用Zoomにアクセスはしていても、パソコンの前には誰もいないのでしょう。熟睡しているのかもしれません。とはいえ、ほとんどの学生はカメラオフなので、サボっていると断定することはできません(補足/通信に負荷がかかったり、ハラスメントになり得たりするため、授業でカメラオンを強制することはありません)。該当学生には、授業後にメールで個別に事情を確認していきます。チェックされていることが分かると、このケースは一気に少なくなります。

<さりげなく退出してしまう学生>
オンラインの場合、クリック1つでミーティングを退出できるので、気軽に授業を抜け出す学生が出てきます。グループワークに強い苦手意識を持つ学生は一定数いるので、ワーク開始前になると参加人数を示す数字がすっ~と減ることも珍しくありません。個別に事情を聞くと「通信環境が悪くて退出になってしまった」という返事が多く返ってきます。これは本当にあり得る理由なので、意図的な行為との区別が困難です。そんなときはZoomのアクセスログが便利です。不慮の退出なのにすぐの再アクセスがなく、ワーク終了後にログインしている理由を確認します。入退出時間が全て記録されていることが分かると、意図的な途中退出は徐々に数を減らしていきます。

<どんな状況でも授業に出席してしまう学生>
ネットにつながっていれば、どこからでもオンライン授業に参加できてしまう。これを生かした(?)ユニークなケースを紹介しましょう。ある学生はアルバイト先の休憩室から受講していました。授業開始ギリギリまでアルバイトをして、終わったらすぐに戻るシフトで働いていたようです。別の学生は電車の中から受講することがあると話していました。ある授業はオンラインで、次の授業が対面といった場合、受講しながら通学するパターンは意外とあります。「話せないがチャットでワークに参加するので、Wi-Fi完備のカフェから出席を認めてほしい」と言われたり、「授業開始までに帰宅できないので、親戚宅から10分遅れで授業に参加する」と連絡してきたりする学生もいました。オンライン授業の高い出席率は、学生のさまざまな努力のたまものと言えそうです。

変化の中の新しい面白さ

オンライン授業では、LINEで友達とおしゃべりしていても分かりません。他授業のレポートだって書けちゃいます。対面のように学生の様子を目で確認できないので、疑心暗鬼になることもあります。個別メールで状況確認したり、入退出ログをチェックしたり、手間と時間と多少のITリテラシーが必要になります。対面の方がよほどシンプルです。

それでも私は、オンライン授業が結構気に入っています。褒められる行為ばかりではないけれど、なんとか出席にしようと工夫する姿勢に感心し、彼らの行動に驚きと新しさを覚えます。オンラインだからこそ私も新しいことにチャレンジし、惰性に気付くことができました。学生のふとした疑問から、ものごとの本質を捉え直す機会もありました。大変なことが多いのは確かですが、変化の中にある面白さに興味があります。それを学生と一緒に楽しんでいきたいと思います。

※当コラムに記載されているシステム名・製品名などには、必ずしも商標表示(Ⓡ、TM)を付記していません。当コラムに記載されている会社名・製品名・ロゴマークは各社の商号、商標または登録商標です。

執筆者紹介

キャリアコンサルタント 平野 恵子

キャリアコンサルタント 平野恵子

大学低学年から新入社員までの若年層キャリアを専門とする。
大学生のキャリア・就職支援に直接関わりつつ、就職活動・採用活動のデータ分析を基に、雑誌や専門誌への執筆などを行う。国家資格 キャリアコンサルタント

人事課題について
お聞かせください