第48回 売り手市場における就活生の不安や悩み
掲載日:2018/02/13
ここ数年、新卒採用では、学生優位の売り手市場が続いています。メディアでも頻繁に報道され、就職活動を終えた先輩からも、リアルな情報が入るので、もうすぐ本格的な就職活動に入る19卒生は、その恵まれた環境をよく分かっています。だからといって、不安や悩みがないわけではありません。毎年対象者が入れ替わる新卒採用では、“ベテラン就活生”という存在はあり得ません。ほぼ全員が、生まれて初めての就職活動を経験することになります。環境がどれだけ良くても、ストレスフリーというわけにはいきません。売り手市場の就活生は、どんな不安や悩みを感じているのでしょうか。学生アンケート(※)のコメントをもとに、まとめてみました。
<インターンシップが活況ゆえの不安>
「ゼミが忙しくて、就活できる時間が限られている。そのなかで、どのインターンシップに、どれだけ参加すべきか。情報が多すぎて、取捨選択に悩む」
→19卒採用では、インターンシップを実施する企業が大幅に増えました。実施時期も、昨夏以降、ほぼ切れ目なく開催されています。どんどん入ってくる情報の多さに、すでに疲弊している学生も見うけられます。
<水面下アプローチによる悩み>
「就活イベントで知り合った人から、数日後「人事から連絡きた?」と訊かれた。その人が呼ばれているのか分からないので、対応に困る」
→インターンシップや就活イベントに参加後、リクルーターや人事から、個別に連絡が入ることがあります。早期選考を案内されるケースも、19卒採用では目立っています。学生同士、何をどこまで話してよいか分からず、対応に苦慮する様子が伺えます。
<スタート時期が選べる不安>
「そろそろ就職活動をはじめるべきか、いま悩んでいる」
「外資やベンチャー企業は、すでに本選考が始まっていて焦る」
「周りから“内定”という声が聞こえはじめた。ものすごく不安」
「周囲の人のスタート時期がバラバラで、自分の就活が遅れているのか、大丈夫なのかが分からない」
→インターンシップと就職活動が地続きになり、スタートラインは一様でなくなりました。指針の影響力の低下で、選考も各社のタイミングで実施されています。スタート時期の幅が広がり、就活スタイルが多様化したことで、新たな不安が発生しています。
<要求レベルが上昇してしまう悩み>
「自分の条件に合った仕事を見つけられるか不安」
「売り手市場なので、親の期待が高まり、応えられる自信がない」
「志望企業から内定をもらえるか不安。もらえなかったとき、どこまで妥協すればよいのか悩む」
→売り手市場のため、自分だけでなく、周囲の要求レベルも上がっているようです。求めはじめれば際限はなく、上がれば上がるほど、不安は強まります。ちなみに、学生知名度が高い大手企業では、人気の集中による厳選化が起きています。要求を満たすのは、容易ではありません。
<就活あるある!な不安>
「会社が多すぎて、どうやって選べばいいのか分からない」
「業界本を見ても、業界が多すぎてしんどい」
「志望動機が書けなさすぎて不安。求める人物像が、どれも同じ感じがして、似たような内容になってしまう」
→新卒採用をおこなう企業は増えています。業界本も10年前と比べると、ページ数は約1.5倍で、業界のくくり自体も複雑化しています。1社で複数の業界にまたがることも多く、仕事経験のない学生が、一人で理解することは困難です。社会人メンターの必要性を感じます。
<時代を超えた普遍的な不安>
「果たして自分は何をやりたいのか、企業選びの軸は見つけられるのか。考えてもよく分からず、もやもやと不安」
→今も昔も、大学生というのは、モラトリアムかつ、アイデンティティ確立の時期なのでしょう。内省を深めることも、成熟のプロセスには必要です。ただ、ハイスピードで進んでいく今年の就活では、その時間がなかなか取れません。内定後に悩む学生が、多くなりそうです。
今の世の中、ネットを通じて、事前に得られる情報は膨大です。しかし、学生の経験値は小さく、得た情報を思うようには生かせません。そのギャップが、不安や悩みを大きくしているのでしょう。
社会人を長くやっている大人からすれば、「そんなことが不安なの?」と感じるかもしれません。最初は誰でも初心者です。少しずつ経験値を上げて、一人前の就活生(?)、社会人となっていくでしょう。彼らの成長を、温かく見守りたいものです。
※ブンナビ学生アンケート(1月)の自由コメントより抜粋および編集
執筆者紹介
キャリアコンサルタント 平野 恵子
大学低学年から新入社員までの若年層キャリアを専門とする。
大学生のキャリア・就職支援に直接関わりつつ、就職活動・採用活動のデータ分析を基に、雑誌や専門誌への執筆などを行う。国家資格 キャリアコンサルタント