第15回 若者言葉にみる共感コミュニケーション
掲載日:2012/08/08
「てへぺろ」という言葉をご存じですか?
もしご存じであれば、ジェネレーションギャップをあまり感じずに、いまどきの学生とおしゃべりできるかもしれません。もし、普段から使っているのなら、学生と「リア充」なコミュニケーションが可能でしょう。
先月、人材サービス会社のインテリジェンスが、ある調査データを発表しました。15歳~25歳までの若者2,447人を対象にした「若年層白書2012年版」です。そのなかに、ちょっと面白いランキングがありました。彼らの周りで使われている流行語ランキングです。
<流行ランキング・ことば(流行語)>
1位 てへぺろ/テヘペロ (87人)
2位 どうするぅ?/どうする~? (41人)
3位 だぜぇ/~だぜぇ (26人)
4位 ワイルドだろぉ/ワイルドだぜぇ (24人)
5位 OK/おっけー/オッケー (19人)
最近の若者はテレビを見なくなったと言われます。しかし、まだまだ大きな影響力を持っているようです。上位には、テレビ番組やタレントが使う言葉が並びました。しかし、若者以上にテレビを見なくなった筆者には、頭上に「?(クエスチョンマーク)」がいっぱいです。せっかくなので、ベスト30位以内で、気になった言葉をいくつか調べてみました。
【てへぺろ】
うっかりした時や失敗した時に、てへと笑ってぺろっと舌を出す仕草の擬態語
女子中高生を中心に広がった
【つらたん】
「辛い」を表す若者を中心としたネットスラング
残念だ、ドンマイなどの意味として使うこともある
【きゃわたん】
「かわいい」を意味する言葉で、女子中高生を中心に広がった
【リア充】
現実の生活(リアル生活)が充実していることを示すネットスラング
どのぐらいご存じでしたか?
仕事柄、学生とはよく話をします。耳にした前後の文脈から、ある程度のニュアンスは分かっていたのですが、詳しくは知りませんでした。
若者の流行語は、特定のコミュニティーで通じるものが多いようです。一定メンバーで親密度が高まると、必ずと言っていいほど、そこだけで通じる「言葉」が出てきます。その「言葉」を使うことが仲間であることの証であり、暗号のような役目を果たすのです。マズローの欲求5段階説ではありませんが、親和の欲求(集団帰属)を満たす行為なのかもしれません。
また、流行語ランキングには、彼らのコミュニケーションスタイルを反映しているものもあります。
16位 まじか/マジかぁ/まぢか
18位 マジで/まじで!?/まぢで
流行語と言うより、学生言葉(若者言葉)という表現が近いでしょう。筆者がよく耳にし、彼らのコミュニケーションスタイルが色濃く現れていると感じる学生言葉をまとめてみました。
<半疑問語>
→自分の意見や立場をやわらげ、相手の様子をみる
「~てきな?」
「~とか?」
「~みたいな?」
<強調>
→相づちとして使うことで、賛成反対をあいまいにしたまま強い共感を表す
「まじか」「まじで」
「やばい(スゴイという意味)」
彼らのコミュニケーションは、とても共感を大切にしています。それは、グループディスカッションでも見ることができます。自分の意見を主張し続け、一歩もゆずらない。そんな学生はあまりいません。自分の主張をいったん保留し、相手の意見を受け止めようとする姿勢。それは彼らの強みです。であると同時に、弱みでもあります。
グループディスカッションの例で言えば、共感性が強すぎて、あっという間に意見が1つにまとまってしまう。そんなケースがここ数年増えてきました。また、他者への共感ばかりで、自分の考えを明確に言うことが困難な学生も見受けられます。
学生のコミュニケーション能力を問題視する社会人は多くいます。確かに、社会人として足りない部分はとてもたくさんあります。しかし、強みと弱みはコインの裏表です。否定ばかりでは、今ある彼らの強みすらスポイルしてしまう。そんな危惧の念を抱いています。
彼らのおだやかで親和性の高いアプローチには、総じて好ましさを感じています。コミュニケーション能力という言葉が内包している要素はさまざまです。どんな点は評価できて、どんな点が足りないのか。周囲の大人は、あいまいにせず、明確に伝えていく必要があるのではないでしょうか。
執筆者紹介
キャリアコンサルタント 平野 恵子
大学低学年から新入社員までの若年層キャリアを専門とする。
大学生のキャリア・就職支援に直接関わりつつ、就職活動・採用活動のデータ分析を基に、雑誌や専門誌への執筆などを行う。国家資格 キャリアコンサルタント