採用・昇格・人材・組織開発の日本経営協会総合研究所

Vol.18 中間職の負荷

掲載日:2017/11/02

これまで携わった『従業員意識調査』の結果を見ていると、属性によっていくつかの傾向があることに気づく。例えば、性別による違いでは、男性が高く、女性は低い結果となることがよくある。これは、男性が建前的、女性が本音に近い回答になっていることが主な要因と考えられる。また、所属による違いでは、営業部が高い一方、製造部や研究開発部、品質保証部等の部門では低い結果となることが多いようである。そこで、今回は属性の中の職位に着目し、回答傾向の違いと、そこから見える課題について考えてみたい。

まず管理職についてだが、この階層は会社や職場に対してポジティブに回答することが多く、概ね良好な結果が示される傾向にある。当然、対象者も少なくなることから、本人特定を嫌い、望ましい回答をする者もいるとは思うが、全般的には肯定的に現状を捉えている傾向が強い。また、会社の施策などを俯瞰的に捉え回答するのも管理職の特徴で、例えば人材育成の取組みに対する厳しい評価が見られるのは、その一例と言える。

一方で、より実態に近い回答が見られるのが非管理職層であり、彼らが会社や職場をどのように捉えているかを知ることは、現場を理解する第一歩となる。一般社員と中間職(※監督職やリーダー職など)で構成される非管理職層において、特に中間職は負荷やストレスが集中しやすく、各階層の中でスコアがボトムになる会社も多い。主に30代から40代で構成されるこの階層は、管理職から責任を伴う業務を任され、プレーヤーとしても中心的な役割を担っている。また、一般社員のOJTや業務サポートなどの役割を託されるのもこの階層である。

では、中間職の負荷やストレスを改善するために、どのような取組みが考えられるだろうか。まず、管理職には必要に応じた支援をお願いしたい。意識調査でも、中間職における上司のマネジメントに対する支持が高い一方で、「側面からの援助」については評価が低いことはよくある。この場合、上司の期待に応えようと、必要以上に抱え込む恐れもあり、管理職の方から意識的にコミュニケーションを取ることが求められる。次に、一般社員の戦力化と育成機会の充実を挙げたい。先にも述べたように、一般社員の育成は中間層の重要なミッションの一つだが、プレーヤーとして多忙であることを理由に、これが後回しにされることが多いように思われる。研修とは違い、職場で人を育てるためには、さまざまな機会を与え、経験させる必要がある。そのため、意欲が比較的高い20代の内に、中間層が積極的にその機会を提供し、成長を体感させることが、若手を戦力化していく上では重要となる。一般社員が育つことで、中間層も安心して業務を依頼することができ、結果として、自身の負荷の軽減にもつながると考える。

管理職の候補者でもある中間職は、職場に与える影響も大きく、その振る舞いによっては、職場全体の士気を下げることにもなりかねない。もし負荷が集中しているようなら、職場づくりの観点からも、その改善を考える必要があるのではないだろうか。

執筆者紹介

(株)日本経営協会総合研究所 研究員 吉川 和宏

大学卒業後、金融機関勤務を経て、(株)日本経営協会総合研究所入社。現在は、主に従業員意識調査およびコンプライアンス意識調査を担当。調査から得られる数値情報を基に、各企業の組織改善のための指導・支援を行っている。
産業カウンセラー。

人事課題について
お聞かせください