採用・昇格・人材・組織開発の日本経営協会総合研究所

Vol.14 会社の魅力を高めるために

掲載日:2017/07/05

転職市場が活況を呈する今日、社員の離職や帰属意識の低下などに頭を悩ます人事担当者も多いのではないだろうか。社員にとって魅力ある会社であるかどうかは、単に離職率を下げるためだけでなく、優秀な人材を確保する上でも重要であり、会社が成長・発展するための条件と言っても過言ではない。
従業員意識調査『NEOS』では、会社および職場に関する領域を測定しており、それぞれの領域には『会社/職場の総合的魅力』という総合指標が設定されている。今回は、その中の『会社の総合的魅力』を取り上げ、会社の魅力を高める要因について考えてみたい。

下の(表1)は、2015年以降に調査を実施した企業7社(※約5200名)について、『会社の総合的魅力』の相関分析で共通して上位に挙げられた項目を整理し直したものである。これを見ると、上位には『仕事の魅力』に該当する項目が多く、その中でも「仕事のやりがい」は7社全てで挙げられていることがわかる。もちろん、何にやりがいや達成感を感じられるかは人それぞれだが、例えば、部下に権限を付与し、新たに挑戦する(能力を発揮する)機会を提供することは、会社の魅力を高める上で、上司が取り組めることの一つではないだろうか。また、動機づけという点では、職場内での役割や担当する業務の(社会的)意義を改めて伝えるなど、職業的自尊心を高めることを意識したマネジメントも効果的と考える。
その他に挙げられた項目では、主に経営層が取り組むものとして、「現場意見の吸い上げと施策への反映」がある。トップが意識的に現場の声に耳を傾けることで、施策に対する社員の納得度も高まり、結果として会社へのコミットメントにも繋がるというものである。「会社の将来に対する関心」や「会社における自分自身の将来」なども挙げられていることから、今後のビジョンや展望をトップ自ら伝えることもポイントとなる。
 
最後に、今回の分析で興味深いのが、給与などの処遇に関する項目が挙げられていない点である。処遇に不満がないという者は少数派だと思うが、給与体系の見直しは、会社の魅力を高める上で、大きな効果は期待できなさそうである。

(表1)『会社の総合的魅力』と相関の高い上位項目(※7社分析結果より)

項目 分野 該当社数
仕事のやりがい 仕事の魅力 7社/7社
定着志向 転職(定着)志向 6社/7社
仕事の達成感 仕事の魅力 5社/7社
能力の発揮 仕事の魅力 4社/7社
経営施策への現場意見の反映 経営施策の魅力 4社/7社
会社における自分自身の将来 会社の魅力 3社/7社
会社の将来に対する関心 会社の魅力 3社/7社

【対象企業概要】
2015年から2017年に調査を実施した企業7社約5200名
内訳:製造業3社/非製造業4社

執筆者紹介

(株)日本経営協会総合研究所 研究員 吉川 和宏

大学卒業後、金融機関勤務を経て、(株)日本経営協会総合研究所入社。現在は、主に従業員意識調査およびコンプライアンス意識調査を担当。調査から得られる数値情報を基に、各企業の組織改善のための指導・支援を行っている。
産業カウンセラー。

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