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Vol.10 ストレスと業務知識の不足感の意外な関係

掲載日:2017/03/02

現場で働く社員のストレス管理は、近年特に重要なテーマの一つと言える。2015年12月より従業員数50名以上の企業に義務化された『ストレスチェック』や昨今の働き方改革等、関連するニュースを耳にする機会も多いのではないだろうか。従業員意識調査『NEOS』では、ストレス状態を4項目で測定しており、項目によって状態の程度がわかる設定となっている。(※表1)これらストレスの原因となるものはいくつかあるかと思うが、「業務知識の不足感」がストレスに影響を及ぼすことが過去の分析から明らかとなっている。人材育成に関連した項目の一つである「業務知識」は、若年層を中心にスコアが低い傾向を示すことが多く、これは経験不足や習熟度に応じた業務の割当ができていないことが主な要因と考えられる。このような状態が続くことで、業務遂行に支障をきたし、結果としてストレスに繋がるというものである。

このような状態を未然に防ぐためには、上司が部下の業務習熟度に応じた仕事の割当を行うのはもちろんのこと、OJTなど職場内の育成環境を整備することがポイントとなる。研修などのOff-JTでは、コミュニケーションやセルフマネジメントなどのスキルは学べるが、これらは職場で実践して初めて習得することができる。「人が育つ職場をいかにして創り上げていくか」を追及することが、メンバーのストレス状態の改善に寄与することがわかった。今回の結果は、管理職にとっても興味のあるものではないだろうか。

従業員意識調査は無記名式のため、『ストレスチェック』の様な個人を対象としたものとは活用する場面が異なるが、会社や職場という視点から改善に取り組むためのヒントを与えてくれるものであることは間違いなさそうである。

(表1)『ストレス状態』に関する4項目

項目 程度
プレッシャーに疲れる 軽度
イライラする
気持ちが集中できない
理由もなくゆううつになる 重度

(表2)「業務知識の不足感」と相関の高い上位項目 製造業A社(従業員約3,000名)分析結果より

項目 分野 相関係数
仕事の適性 仕事の魅力 .324**
気持ちが集中できない ストレス状態 .309**
理由もなくゆううつになる ストレス状態 .251**
プレッシャーに疲れる ストレス状態 .249**
イライラする ストレス状態 .222**
顧客の満足感 従業員の顧客志向 .216**
能力の発揮 仕事の魅力 .207**
二重の指示・命令 職場内コミュニケーション .197**
自主的な判断の余地 仕事の魅力 .184**
会社における自分自身の将来 会社の魅了 .160**

執筆者紹介

(株)日本経営協会総合研究所 研究員 吉川 和宏

大学卒業後、金融機関勤務を経て、(株)日本経営協会総合研究所入社。現在は、主に従業員意識調査およびコンプライアンス意識調査を担当。調査から得られる数値情報を基に、各企業の組織改善のための指導・支援を行っている。
産業カウンセラー。

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