採用・昇格・人材・組織開発の日本経営協会総合研究所

Vol.8 自社調査で陥りがちな罠

掲載日:2017/01/06

当社では、『従業員意識調査活用セミナー』を例年実施しており、毎回参加者より多くの質問をいただく。近年は、従業員意識調査や社員アンケート等を社内で実施している会社も増えており、自社調査に関する悩みを伺うことも多い。今回は、よくあるご質問の中から、自社調査で陥りがちな罠についてまとめてみた。

調査を内製化している会社では、質問項目や回答選択肢の作成から集計・分析まで、限られたメンバーで行わなければならず、そのような実務担当者が抱える悩みにはいくつか共通する点がある。例えば、「調査結果が全般的に高く、課題がどこにあるのか判断できない」もその一つである。一見すると非常に良好なデータに見えてしまうのだが、本当に社員の実情を反映したものなのかというと、残念ながらそうではない可能性がある。データの「質」という観点では、社員が日頃感じていることをそのまま本音で回答できることが重要であり、望ましい回答や心理的なバイアスのかかったデータでは、実際の意識との乖離も大きくなってしまう。それでは、本音の回答を得るためには、どのような点に配慮する必要があるのだろうか。以下には、調査内容を検討する際、工夫すべき点をいくつか挙げてみたので参考にしてほしい。

1 質問の聞き方 解釈に困る聞き方(ダブル・ミーニング等)や
特定の回答に偏ることが想定される質問になっていないか
2 回答選択肢の設定 質問文に対応した選択肢が用意されているか
(全ての質問で同じ回答選択になっていないか等)
3 属性の設定 個人特定が疑われる設定になっていないか
4 質問の順番 回答者が回答しにくい質問から聞いていないか

特に、「質問の聞き方」については、一度誤った質問を設定してしまうと、定点観測で次回調査する際、質問の変更がしにくいということがある。(※前回と比較する際、同じ聞き方でないと厳密な比較ができないため。)既に自社で調査を実施されているところは、是非回答者の立場になって質問文を読んでみてほしい。望ましい回答に誘導される聞き方や回答に困る質問になっていないだろうか。意識調査について、その後の活用がうまくいっていないという相談を受けることがあるが、その原因の一つにデータの「質」が考えられないか、一度検討してみることをお勧めする。

執筆者紹介

(株)日本経営協会総合研究所 研究員 吉川 和宏

大学卒業後、金融機関勤務を経て、(株)日本経営協会総合研究所入社。現在は、主に従業員意識調査およびコンプライアンス意識調査を担当。調査から得られる数値情報を基に、各企業の組織改善のための指導・支援を行っている。
産業カウンセラー。

人事課題について
お聞かせください