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Vol.7 ハラスメントの実態と内部通報制度

掲載日:2016/12/06

従業員意識調査『NEOS』を導入する際、標準項目にない設問を追加するケースがよくある。近年、追加項目で多いものとして、「女性活躍支援」や「コンプライアンス」「育休・産休や介護休等の各種制度」等に関するものが挙げられ、これら取組みに対する各社の関心の高さが窺える。今回は、「コンプライアンス」関連項目の一つでもある「ハラスメント」について考えてみたい。

「ハラスメント」については、「セクシュアル・ハラスメント」「パワー・ハラスメント」に関する追加設問の依頼を受けることが多く、その回答結果をまとめたものを表1に示した。表1では、過去1年間にどのような行為が発生したかについて、製造業9社約10,500名(2013~2015)におけるセクハラ、パワハラ行為の上位3つを抽出した。「卑猥な冗談を言う」や「しばしば馬鹿にしたような態度をとる」等、日常業務において、これらの行為で悩む実態が窺える。本調査は無記名式のため、個人を特定することまではできないが、所属別や年代別など、データを細かくチェックすることで、ハラスメントの現状を知る手がかりとなりうるものである。

さらに、これらハラスメントに悩む社員が相談窓口として利用するであろう『内部通報制度』について、「相談(通報)したいと思っていることがあるか」聞いたところ、「あるが相談しないつもりである」と回答した者が11.6%であった。その理由については、「相談しても大して状況が変わらないため」48.9%、「相談したことが職場内に知られ、かえって職場内の雰囲気が悪くなるから」24.3%、「相談したことが上司に知られ、人事評価が下がるかもしれないから」11.8%云々という順位である。興味深いのは、通報の秘匿性より、相談しても状況が変わらないことへのあきらめ感の方が上回るという点である。

内部通報の様な社内の法令違反対策に関わる制度は、既に多くの企業で導入がされているかと思うが、通報者対応や通報内容の取扱い等の運用方法について、再考する時期なのかもしれない。

(表1)『過去1年間に発生したセクシュアル(パワー)・ハラスメント行為』上位3項目
対象:製造業9社 約10,500名(2013年~2015年調査実施。全数調査。)

『セクシュアル・ハラスメント』行為 上位3つ

1 卑猥な冗談を言う 6.6%
2 服装・化粧・髪型・体型などについて、とやかく言う 4.2%
3 身体に触れる(挨拶代わりに触る・肩を揉む・手を握る等) 3.5%

『パワー・ハラスメント』行為 上位3つ

1 しばしば馬鹿にしたような態度をとる 8.2%
2 職場であたり構わず暴言を吐く 6.1%
3 上司・先輩との会話がほとんど無く、目の前にいるのに指示はほとんどメールで来る 5.3%

執筆者紹介

(株)日本経営協会総合研究所 研究員 吉川 和宏

大学卒業後、金融機関勤務を経て、(株)日本経営協会総合研究所入社。現在は、主に従業員意識調査およびコンプライアンス意識調査を担当。調査から得られる数値情報を基に、各企業の組織改善のための指導・支援を行っている。
産業カウンセラー。

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