第2回 ダイバーシティは何種類かありそうだ
掲載日:2017/06/29
ダイバーシティとは何を指すのであろうか。インターネットで『ダイバーシティ』と検索すれば、まず『女性活躍』が出現する。日本のダイバーシティ推進のお膝元である経済産業省で挙げられている『ダイバーシティ』も、ほぼ『女性活躍』である。
しかし、私たちの働く現場では、
「50代従業員が多数を占めており、彼らのキャリアをどのように活用すべきか」
「お客様対応の最前線は、非正規従業員の力に頼っている」
「こころの病気などで支援を必要としている人が増えてきた」
「子育て世代の女性の職場復帰は進んだが、男性社員の育児には協力的ではない」
「価値観(性格や個性、生き方、性的志向(LGBT)、宗教・信条など)が多様化してきた」
などを目の当りにし、『ダイバーシティ=女性活躍だけではない』と感じる人も多いのではないだろうか。
ダイバーシティに関して、欧米では40年ほど前からの研究結果が大量に蓄積されており、入山章栄氏は、ダイバーシティを内容と目標から2つのタイプに分類している(表1)。
(表1)2タイプのダイバーシティ
名称 |
①デモグラフィー型 【多様性(属性の違い)】 |
②タスク型 【多面性】 |
---|---|---|
内容 |
性別、国籍、年齢など、いわゆる 「目に見える属性の多様化」 |
実際の業務に必要な能力・経験の多面性 |
目標 | 個々人の多様性を生かす | 喫緊の人手不足を解消し、生産性を高める |
進め方 |
属性ごとの具体的な数値目標を掲げ、 東洋や職域拡大を行う |
人材に困っているところから、 個々の人材に対応したマネジメントを行う |
導入企業 | 大企業に多い | 中堅・中小企業に多い |
実践の ポイント |
経営陣の本気度 管理職のマネジメント 職場メンバーの共感・理解 |
個を生かすマネジメント 成功事例 |
入山章栄『ビジネススクールでは学べない世界最先端の経営学』日経BP社をもとに、筆者が加筆
以上から、各社の業種業態の違いによって、優先すべきダイバーシティは異なると推定される。また、ダイバーシティは、女性や外国人だけでなく、何種類か存在することが推定される。そこで、私たちは、当社従業員意識調査の顧客である4社6名のダイバーシティ推進担当者にインタビューを行った。インタビューでの質問内容は、(表2)のとおりである。
(表2)インタビューの質問内容
質問 | 内容 |
---|---|
ダイバーシティの優先順位 |
貴社のダイバーシティの優先順位 本社や事業所、工場で違いはあるのか |
ダイバーシティの実態 |
女性比率 外国籍の人数 障がい者雇用 シニア層の雇用と処遇 就業形態の多様性 LGBTへの取り組み など |
制度整備状況 |
ダイバーシティ実践にかかる制度の整備状況、利用者数の推移 ワーク・ライフ・バランス施策 |
ダイバーシティ実践で困っていること |
経営陣の理解 職場長、管理職の理解 同僚、部下の理解 |
インタビューの結果
インタビュー結果を取りまとめた結果、以下の2点が導き出された。
第1に、各社によって、ダイバーシティの優先順位が異なっている。また、社内においても、本社、工場、事業所内で優先すべきダイバーシティは異なっている。
第2に、ダイバーシティ経営のためには、経営陣の本気のリーダーシップが不可欠であるが、『上司の理解不足』『職場の同調圧力』が隠れた抵抗勢力であることが指摘された。
そこで、NOMA総研『ダイバーシティ意識調査』では、7種類のダイバーシティを取り上げることとした。
●多様性(属性の違い)
「女性」
「外国人」
「シニア層」
「就業形態の違い」
「身体のハンディキャップや、こころの病気のため、支援を必要としている人(以下、障がい者)」
●多面性として
「多面的な個性や価値観の違い(性格や個性、生き方、性的志向(LGBT)、宗教・信条など)」
「職務経験(キャリアの違い)」

次回は、ダイバーシティの実態と『当事者意識』を紹介する予定です。
第2回のまとめ
- インタビュー結果を取りまとめた結果、「各社によって、ダイバーシティの優先順位が異なっている」「社内において、本社、工場、事業所内で優先すべきダイバーシティは異なっている」ことが指摘された。
- ダイバーシティとして、7種類を取り上げることとした。
執筆者紹介
(株)日本経営協会総合研究所 主席研究員 山根 郁子

奈良女子大学文学部卒業後、大手サービス業にて支社勤務を経て、経営企画、内部監査を担当。同社退社後、(株)日本経営協会総合研究所に入社。主に従業員意識調査、コンプライアンス意識調査、ダイバーシティ意識調査、パワハラ実態調査を担当。内部監査の経験を生かし、仕組みや制度にとどまらない、健全な組織風土と個人の自律を支援している。筑波大学大学院人間総合科学研究科修了。修士(カウンセリング)。
公認不正検査士(CFE) 経営倫理士(第15期) 産業カウンセラー