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第14回 コンプライアンス不適切行動群に見られる不満足要因(1)

掲載日:2018/05/21

コンプライアンス上、不適切な考え方や不適切な行動をする人は、会社・職場のどんなところに不満を感じているのであろうか。彼らの会社・職場に対する不満を把握し、適切に対応できれば、コンプライアンス違反を減らすことができるのではないだろうか。当社蓄積データによる分析結果を2回に分けて紹介する。

調査概要

非製造業 約800名。コンプライアンス意識調査2014年~2015年実施。

分析方法

  1. あなたの行動4項目について、「適切な行動」回答者と「不適切行動」回答者の回答割合を算出する。
  2. 「適切な行動」回答者、「不適切行動」回答者をそれぞれグルーピングし、職場項目の平均値を算出する。
  3. 2の「適切行動群」の平均値と「不適切行動群」の平均値の差を算出し、平均値の差の大きい上位10項目を抽出する。
あなたの行動4項目 (第14回は前半2項目を掲載)
(1)法令や企業倫理の遵守と矛盾を感じた場合の行動
(2)職場で不正行為が行われようとした場合の行動

この分析のポイントは、 「適切な行動をとる人」と「不適切な行動をとる人」とでは、 どのような項目の満足度の差が大きいのか、ということである。言い換えれば、「不適切な行動をとる人」は、「適切な行動をとる人」に比べ、 どんなところに不満を抱いているのか、が分かれば、 不適切な行動をしないように、不満をためがちな項目を把握し対応できれば、コンプライアンス違反を減らせると推測できる。

調査結果

(1)法令や企業倫理の遵守と矛盾を感じた場合の行動
Q.あなたは、売上や利益の目標達成を目指す過程で法令や企業倫理の遵守と矛盾を感じた場合、どう行動しますか。

結果

(上司の指示であれば)「目標達成を優先する」と回答した人は、6.0%(①)。
不適切行動群は、適切行動群に比べ、企業理念やコンプライアンス体制に対する認知度が低かった。さらに、「上司や仲間とのチームワーク」「(職場の)知識・技能を向上する雰囲気」「(自分の持てる)能力が発揮できている」の3項目で、不適切行動群は、適切行動群に比べ大きく下回る結果であった(黄色網掛け)。

(2)職場で不正行為が行われようとした場合の行動
Q.あなたは、職場で利益追求や目標達成のために不正行為が行われようとした場合、どう行動しますか。

結果

「黙認する」「干渉しない」と回答した不適切行動群は、8.9%(②)。
不適切行動群は、適切行動群に比べ、企業理念やコンプライアンス体制の認知度が低いだけでなく、「自分の持てる能力が発揮できていない」と回答する人が多く、「業務面接」「上司の倫理的行動」への支持が低かった(黄色網掛け)。

考察

上記2項目は、いずれも判断に迷ったときに、正しい判断ができるかどうかを問うたものである。不適切行動群は、全体の6.0~8.9%を占める。不適切行動群は、企業理念やコンプライアンス体制の認知度が低いか、納得感が得られていない状況である。「能力の発揮」「仕事のやりがい」など、コンプライアンスの最後の砦である『職業的自尊心』が低い。また、上司や職場メンバーとの信頼関係が構築できておらず、職場で孤立している可能性が示唆される。

まとめ

不適切行動群を減らすためには、以下の3点がポイントである。

  1. 企業理念、コンプライアンス体制の理解度を高めるため、コンプライアンス教育を定期的かつ継続的に実施する。
  2. 上司は、「模範となる倫理的行動」を実践する。「業務面接」を通じて、部下ひとりひとりと「仕事の意義」「今後のキャリア」について十分時間をかけて話し合い、部下の「仕事のやりがい」を醸成する。
  3. 職場で、人となりを理解し、情報共有を行う。部下が職場で孤立していないか、上司が気を配る。

次回は、「コンプライアンス不適切行動群に見られる不満足要因(2)」を紹介する予定です。

第14回のまとめ

  • 不適切行動群は、適切行動群に比べ、企業理念やコンプライアンス体制の認知度が低かったが、『仕事のやりがい・誇り』『職場の相互の信頼感』の満足度も低かったのが特徴的である。
  • 不適切行動群を減らすためには、以下の3点がポイントである。
  1. 企業理念、コンプライアンス体制を周知させるため、コンプライアンス教育を定期的かつ継続的に実施する。
  2. 上司は、「業務面接」を通じて、部下の仕事の意義・キャリアを話し合う。
  3. 職場で人となりを理解する。職場で部下が孤立していないか、上司が気を配る。

執筆者紹介

(株)日本経営協会総合研究所 主席研究員 山根 郁子

(株)日本経営協会総合研究所 主席研究員 山根 郁子

奈良女子大学文学部卒業後、大手サービス業にて支社勤務を経て、経営企画、内部監査を担当。同社退社後、(株)日本経営協会総合研究所に入社。主に従業員意識調査、コンプライアンス意識調査、ダイバーシティ意識調査、パワハラ実態調査を担当。内部監査の経験を生かし、仕組みや制度にとどまらない、健全な組織風土と個人の自律を支援している。筑波大学大学院人間総合科学研究科修了。修士(カウンセリング)。
公認不正検査士(CFE)。経営倫理士(第15期)。産業カウンセラー。

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