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第11回 セクシュアルハラスメントの原因を考える

掲載日:2012/11/14

職場でのセクシュアルハラスメントは、働く人の個人としての尊厳を不当に傷つける社会的に許されない行為であるとともに、働く人が能力を十分発揮することの妨げにもなる。また、職場秩序の乱れや業務への支障につながり、社会的評価に悪影響を与えかねない問題である。職場におけるセクシュアルハラスメントを防止するために、事業主が雇用管理上講ずべき措置として、厚生労働大臣の指針により9項目が定められている。
(http://www.mhlw.go.jp/general/seido/koyou/danjokintou/kigyou01.html)

この9項目のポイントは以下の4点である。
(1)事業主の方針の明確化およびその周知・啓発
(2)相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
(3)職場におけるセクシュアルハラスメントに係る自己の迅速かつ適切な対応
(4)上記(1)から(3)までの措置を併せて講ずべき措置(プライバシー保護など)

では、当社蓄積データ(6社約50,000名のデータ)から、「職場のセクシュアルハラスメント」の実態を見てみよう。

  • セクシュアルハラスメント行為の発生・・・「発生した」平均約3%
  • セクシュアルハラスメント行為15類型・・・最頻値は「卑猥な冗談を言う」約10%
  • 職場で「セクシュアルハラスメント(セクハラ)」がなくならない原因
    第1位「セクシャル・ハラスメントを行う従業員の資質」約50%
    第2位「社会の風潮」約18%
    第3位「職場の風土」約16%
  • ホットラインの認知度・・・「知っている」約80%、「知らない」約20%
  • ホットラインへの相談事項の有無・・・「ある」約7%、「ない」約93%
  • ホットラインを利用しない理由
    第1位「相談しても、大して状況が変わるとは思えないから」約58%
    第2位「相談したことが漏れる心配があるから」約25%
    第3位「相談したことで、人事評価が下がったり、異動させられたり、嫌がらせを受けたりといった不利益な取り扱いを受けるかもしれないから」約9%

当社「コンプライアンス調査」における『セクシュアルハラスメント行為の有無』では、「発生した」が約3%である。蓄積データを経年で見ると、「発生した」回答が逓減しており、上記(1)事業主の方針の明確化およびその周知・啓発の効果によるものと思われる。

「セクシュアルハラスメント(セクハラ)」がなくならない原因として、第1位「セクシャル・ハラスメントを行う従業員の資質」約50%が挙げられた。前回のパワハラの原因で、第1位「上司・先輩の資質」約70%と比較すると、セクハラは第2位「社会の風潮」約18%、第3位「職場の風土」約16%など、環境要因が大きく影響していることが推定される。

ホットラインの認知度は、経年比較では上昇していることから、(2)相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備についても、多くの企業で整備が進んできたものと思われる。
しかし、「ホットラインを利用しない理由」として、「相談しても、対して状況が変わるとは思えないから」が約58%を占めることから、(3)職場におけるセクシュアルハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応については、各社とも現在進行形にあるものと思われる。

職場におけるセクシュアルハラスメントに係る自己の迅速かつ適切な対応として、「事実関係の迅速かつ正確な確認」「当事者に対する適正な措置の実施」が求められている。具体的には、「相談窓口担当者による事実関係の確認」「当事者双方の主張を公平に聞く」「行為者への一定の制裁を課す」「被害者へのメンタルヘルスケア」など、各ケースに応じてきめ細やかな適時の対応が求められる。

次回は、「メンタルヘルスを考える」を紹介する予定です。

第11回のまとめ

  • セクシュアルハラスメントに対する「事業主の方針の明確化およびその周知・啓発」「相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備」については、多くの企業で整備が進んできている。
  • 「ホットラインを利用しない理由」として、「相談しても、対して状況が変わるとは思えないから」が約58%を占めており、「職場におけるセクシュアルハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応」は、各社とも現在進行形にあり、各ケースに応じたきめ細やかな適時の対応が求められる。

執筆者紹介

(株)日本経営協会総合研究所 主席研究員 山根 郁子

(株)日本経営協会総合研究所 主席研究員 山根 郁子

奈良女子大学文学部卒業後、大手サービス業にて支社勤務を経て、経営企画、内部監査を担当。同社退社後、(株)日本経営協会総合研究所に入社。主に従業員意識調査、コンプライアンス意識調査、ダイバーシティ意識調査、パワハラ実態調査を担当。内部監査の経験を生かし、仕組みや制度にとどまらない、健全な組織風土と個人の自律を支援している。筑波大学大学院人間総合科学研究科修了。修士(カウンセリング)。
公認不正検査士(CFE)。経営倫理士(第15期)。産業カウンセラー。

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