トップ > 特集・コラム一覧 > 「採用現場ニュース」バックナンバー > 採用現場ニュース2015(2015年の記事)

採用現場ニュース2015(2015年の記事)

【2015年1月】ブラック企業といわれたら新卒採用はできない

 16卒の採用活動が始まるが、一昨年来、ブラック企業という言葉がマスコミに氾濫、就活をする学生や大学の就職担当者の間では、志望先が、ブラック企業かどうかが重大な関心事になっている。これは、企業側にとっても重大で、この傾向は、すでに大手の外食やIT、製造などの業界では明確な影響が出ている。こうした業界でブラックっぽいと学生にいわれただけで、応募者は激減するし、選考中の学生は、無断欠席し、内定後であっても親から強い調子で辞退がある。そのため15卒採用では、大手の外食産業ではどこも採用予定数の半数も確保できず、店舗展開を縮小し、今では、アルバイトからの正社員登用に人材戦略を変えている。

▼それにしても、この問題がやっかいなのは、ブラック企業の定義がさまざまで、マスコミ報道を含めてネット上でも事実誤認、デマ、風評が飛び交い、いつの間にかブラック企業と認定されてしまうことがある。例えば、大手広告代理店のように新入社員が1名、過労死したことをもってブラック企業としてしばしば話題になったり、企画職ということで入社したのに営業職に配属されたことでブラック企業と新聞で報道されたりしている。

 そもそもブラック企業問題が表面化したのは、2008年の不況時。その当時は、大量リストラ、賃金格差、派遣切り、新卒採用凍結など雇用問題が最悪の時期で、若者の間では「蟹工船」がベストセラーだった。そしてネットでは、「ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない」という記事が発信されていた。ここで舞台になったのがソフトウエア業界。主人公が長時間労働を強いられ、職場ではパワハラの毎日。とうとう耐えられなくなったが、それでもやめられないという日々を描いた。それから4年、文春新書で「ブラック企業」(今野晴貴)という本が刊行され、さらに広く知られるようになった。それからは、入社後、少しいじめられただけでも安易にブラックというレッテルを貼るようになった。これに拍車をかけたのが週刊東洋経済や日経ビジネスといった有名経済雑誌。「あの有名企業でもネットではブラック」ということで、誰もが知る世界的メーカーA社、時代の寵児といわれ急成長したB社、就職人気ランキング常連のC社、歴史ある高シェア安定企業D社、カリスマ経営者を擁するE社など企業に関心を持つ人ならおよその見当がつく企業がやり玉に挙がった。そこれらの記事は、企業の人事担当者や大学のキャリアセンターの担当者に大きな衝撃をもたらした。そして最近では、厚労省とともにNPO、労働運動家、弁護士などが「違法な労働条件で若者を働かせる企業」を告発するという社会的な動きとなっている。


▼では、どんな企業をブラックとしているのか。連続した長時間労働、労働時間や成果を反映しない給与、過酷なノルマとペナルテイ、パワハラが横行する体育会系組織、異常な社風、暴力氾濫、休日を取らせない勤務体系、退職させない職場、といった要素を持つ企業のことだとしている。 実際、こうした企業があるのかといえば、案外、上場企業でも少なくない。例えば、先に過労死自殺をした従業員の労災認定や損害賠償で係争中の外食大手の場合、労基署から受けた是正勧告は16項目に及んでいる。その内容は、長時間労働が常態化し、その賃金が支払われず、名ばかり管理者を任命し、残業代を支払わず、辞めるとなっても規定の退職手当が支払われず、健康管理はおざなり、店舗の衛生管理も軽視していたという。しかもこの事例が、全国各地の店舗で多数、指摘されたというから唖然とする。これでは、学生や大学の就職担当者から敬遠されるのは仕方あるまい。

 こうした労基法違反が明瞭な企業は別にして、独自の社風や人事制度の場合、学生やその親の理解を得るのは難しい。応募者の希望や勤労観に対して企業には、独自の経営方針、経営者の経営哲学があるからだ。例えば、「ブラック企業」に取り上げられた衣料品販売X社の場合だ。経営者の企業哲学を徹底的に体得し、自宅でもマニュアルを熟読し覚えこみ、半年で店長になるぐらい実績を上げ、次のステージでも毎月のように競争し、脱落しても簡単に辞めさせないという企業だが、これをブラックという。でもこの程度のことは、どこの企業でもいくつかは該当するのではないだろうか。企業自身もブラックの意識がないかもしれない。だが、従業員やその親からは反発があるのも事実だ。難しさはここにある。採用担当者からすれば、企業の経営方針や人事制度などが他社と違うことで企業の活力を生み出しているといいたいところだろう。


▼だが、採用担当者にとっては、ブラックというレッテルが貼られただけで、応募者激減、優秀な人材が採用できないという大きなダメージになる。とくに販売競争が激しく、成果主義の強い企業には、そうした噂が飛びやすい。外食、IT、住宅販売、アパレル、金融商品販売、旅行代理店、ゼネコン、運送、介護などは、常にその危険性にさらされている。これを回避するためには、あらゆる方法で誤解されないような採用活動とイメージの払拭をはかる必要があるだろう。そこで、こうした業界の採用担当者としてやるべきことは次の7つだ。

1.丁寧な選考で期待過剰や偏見を緩和する(圧迫面接は不可)
2.社員による仕事内容の公開(活動日記の公開)
3.人事制度、給与の公開、キャリアパスの明示(給料明細の公開)
4.先輩社員による学校訪問や学内説明会への参加
5.会社見学会(親を含む)やインターンシップの拡大
6.大学に対して卒業生の在籍状況の定期的な報告
7.懇切で定期的な内定者フォロー

 と、きわめて常識な対策につきる。
 その上で、学生や大学の就職担当者の理解を求めるしかない。これは、企業成長の苦しみでもあると考えて取り組んでほしい。

【掲載日:2015年1月19日】

このページの先頭に戻る

【2015年3月】これからの採用活動、3つのポイント

 16卒の採用活動が、3月1日、スタートした。この日、主要な就職サイトがオープン、求人企業の採用情報を公開し、全国各地では、大規模な合同企業説明会や大学内での企業説明会が一斉に開催された。

 今年は、「指針」によって就職情報の解禁や選考開始時期が大幅に繰り下げられ、就活の期間が短くなった学生たちには不安や焦りの気持ちからか、どこの企業説明会でも昨年以上に学生が押しかけ盛況となった。その一方、昨年末から採用活動をしている企業も多く、すでに内定を出した企業もあるとの噂がしきりである。そのため採用活動がスタートした翌日のテレビや新聞では、「すでにヤマ場?」とか「3月に内定も」という報道も目に付いた。

 では、「指針」が、どの程度、遵守されているのか、今後の採用活動はどう展開するのか、新たな採用の課題は何か、など気になるポイントを以下にとりあげてみよう。


▼新たな採用ルールである「指針」が発表されたのは2年前。
 それだけに企業側の準備期間は十分にあったのだが、現状はどうか。
 当面の検証は、「採用情報の解禁日」というべき2月末までの採用情報公開の規制である。このルールについては、全体としては遵守された。これは昨年同様、行政や大学団体からの要請を受けて大手の就職情報サイトが足並みをそろえたからだ。そこは評価できるが、企業の情報解禁日前の採用活動には問題があった。

 企業が、夏のインターンシップに加えて秋、冬にもインターンシップを開催し、年末から今年の1、2月には、会社説明会と同義語である1Dayインターンシップを急増させ、広範囲に自社に関心のある学生を大量に囲い込んでいたからである。さらに1月から一部の企業では、特定の学生に対して先輩社員との小規模な懇談会を継続的に開催してきた。
 これらは、残念ながら採用活動といえよう。つまり3月情報解禁という「指針」は、遵守されたが、実態は相当に形骸化されていたようだ。

▼では、これからの8月までの展開はどうなるのか。
 大手就職情報会社の調査によると2月までに4割の学生がエントリー済み、3割の学生が選考過程にあるという。そうなると3月における企業の採用活動は、先輩社員との質問会、懇親会、各種テスト、面接となる。かくて4月上旬は、人事面接から最終面接、そして4月中旬から連休前に内定ということが予想される。これは、昨年と同じスケジュールだ。ただし、これは、大企業や人気企業の話。

 中堅・中小企業の場合はどうか。中小企業の採用においては、学生が中小企業に目を向ける時期がいつごろかが勝負になる。そうすると今年は、第一の山が5月下旬、第二が7月下旬となる。形式的には、8月が想定されるが期待はできない。大手企業の選考が8月に集中するとは思えないからだ。それでも経団連加盟の大手企業のなかには「指針」に定められたように8月選考に取り組む企業もなくはない。こうした企業では、他社と同調して過半数を5月末までに内定するだろうが、2割程度は、夏の選考に残しておくだろう。ただし、その場合は、グローバル職や技術職、地方採用、既卒者といった枠だから中小企業の採用とバッテイングすることはない。もちろん、前半で失敗した学生にとっても期待できない採用だろう。

 つまり、今年の採用において中小企業は、工夫のある採用活動をしない限り、一段と深刻な採用難になることが見込まれる。

▼新たな問題点
 16卒の採用活動がどのように展開するかは、すでに指摘したとおりだが、新たな問題点も浮上した。
 それは、内定者管理、来年のインターンシップ、夏採用への取り組みの3つだ。
 まず、内定者管理という課題だ。これは、「指針」に反して早期内定をしたことによる悩みなので同情はできないが、内定から入社までの期間が長いことによる企業、そして学生の不安である。とくに気になるのが、大手企業による夏採用の実態が読めないことである。人気のある企業、大手企業が夏採用をすれば内定者が逃げてしまうからだ。それを防ぐために継続的にさまざまな内定者対策を実施しなくてはならない。ここでも知恵と工夫が勝負だ。

 インターンシップのあり方も考え直さなくてはなない。教育目的の場合は、悩みはないが、採用に関連したものであれば、採用活動開始時期に近い方が望ましいはずだ。そうすれば、インターンシップの開催時期は、夏でなく、秋、冬、春ということになる。これは、予算の関係もあるので早急に内容や時期などを決めなくてはならない。

 もう一つの課題は、8月の選考日をどのように位置づけるかである。「指針」は正論であるだけに。今後、企業は採用活動を8月にシフトすることが求められる。そのステップとして春採用に加えて夏採用(二次募集でなく)を明確化して採用時期の分散をはかることによって将来への布石を打つべきだろう。

 16卒の採用は、まだ始まったばかりだが、「指針」の初年度として早期化が予想されるが、今後の課題が浮上したことも留意しておきたい。

【掲載日:2015年3月11日】

このページの先頭に戻る

【2015年5月】本格化した採用活動

 就職情報が解禁されて2カ月。企業は大学内での企業説明会・イベント会場での大規模な合同説明会などを経て、志望学生のエントリーを受け付け、面接の段階に入るなど採用活動を本格化させている。

 危惧されていた「指針」についても、大手企業は2月末まで抑制した活動にとどめ、遵守の姿勢を見せている。例外として、外資系企業・大手IT企業・新サービスのベンチャー企業が、早期から学生と接触し、内定を出していたが、これは例年のこと。今年は、学生の側に余裕があったのか、あまり話題にならなかった。しかし、これからは微妙な時期である。就職情報が解禁されたものの、選考開始は8月1日だからだ。あまりに助走期間が長いので、企業も学生も疑心暗鬼になっているようだ。

▼前回の本欄でも紹介したように
2月までに4割の学生がエントリー済み、3割の学生が選考過程にあった。そこで3月には、多くの企業において先輩社員との質問会・懇親会・各種テスト・面接が実施された。そのため4月上旬からは、人事面接から最終面接、そして連休前に内定ということを予想した。だが実際には、企業の採用活動のテンポは4月中旬から緩慢となった。昨年のように4月末に内定ピークが来ることもなく、あいまいなままに連休を越えた。この動きは、学生の就職人気の高い金融・商社・食品・運輸のトップ企業において顕著だった。

 この背景にはどんなことがあるのだろう。第一にあげられるのが企業の「指針」への遵守姿勢である。政府が肝煎りで提案した「指針」に経団連加盟大手企業が真面目に対応したのである。これは、かつてないことである。第二は、情報解禁日から選考開始日まで4カ月もあることで、早期の内定は効率が良くないと判断し、内定出しを抑制した。第三は、ここ数年増加している内定辞退への警戒である。その点を考慮し、大手企業の多くが、最終段階のままじっくり面談を行い、8月に内定を確約することにしたのだろう。

▼ところで、この大手企業の内定出し抑制については、
子細に見ていく必要がある。こうした経団連加盟大手企業といえども、一部だが、昨年末からインターンシップや各種懇親会に参加した学生、リクルーターによってターゲットとされた学生については、すでに若手社員との懇親会やリクルーター面接を経由して、それぞれ評価を行っている。高い評価の学生には文書は出さないが、握手をしたり、歓迎会をしたりすることで内定を示唆、リクルーターによる囲い込みに入っている。その数字は企業によって異なるが、大手企業においては採用計画数の3割程度とみられている。その推測が、採用活動がスタートした日のテレビや新聞で「すでにヤマ場?」とか「3月に内定も」という報道となったのである。

▼だが、そうした企業でも採用活動は終わっていない。
多くの企業が、連休後においてもエントリーを受け付け、会社説明会を予定している。例えば大手商社は、3月の同社セミナーに参加した学生を対象に4月に小規模な会社説明会を予定し、5月と6月には、中堅社員との交流会を開催して選考を進める。別の大手商社も3月から大学別の説明会、合同説明会で関心層を集めた後、5月から東京と大阪において6回、6月に8回の面談会を開催する。これは、大手製造業も同様で5月エントリー、6月エントリーを受け付け8月の選考を公言している。このように通年型の採用活動に転じたことが今年の採用活動の大きな特徴だろう。

▼では、これから8月まで企業の採用活動の展開はどうなるのか。
 前述した就職人気の高い大手企業は、「指針」通りに採用活動を進めるしかないが、コア人材については、早期に確保する手堅さは必要だろう。そのためにもこれからの3か月、エントリーを受け付けながら選考し、面接し、順次内定候補者を蓄積して8月まで進めていくことになる。

 一方、早期内定を出した企業は、内定者フォローが重要課題になる。だからといって強引な誓約書の提出や過度の接待や拘束をすれば直ちにインターネットで暴露されるから控えた方が良い。ひたすら内定者とのコミニュケーションをとって辞退防止を図るしかない。そうしながら採用活動を継続させていくことも忘れてはならない。では 中堅・中小企業の場合はどうか。

 今年は、大企業の採用活動がヤマを越える7月頃が勝負になる。しかし、この時期は夏休み前なので、学生の動きが鈍い。そこで敏速な対応と早い決断で採用を進めていくことになる。中堅・中小企業の採用活動の決め手である大学との連携は、夏休み後の9月下旬になるが、この時期になれば学生の焦り・職業観も定まっている。内定辞退もなく、確実だが、学生が応募するかどうかがカギになる。

 このように今年の中堅・中小企業は時間が無いので、機敏さとワンポイントで学生を引き付ける魅力を持った採用活動をしない限り、昨年以上の深刻な採用難になることは必至だろう。

【掲載日:2015年5月20日】

このページの先頭に戻る

【2015年7月】これからは内定者フォローが勝負

 3月の就職情報解禁までは、整然としていた採用活動だったが、4月からは昨年と同じような過熱状態になり、6月末には第一ラウンドが終了したという感触だ。

 だが、採用活動を終了したという企業の多くは、準大手企業や中堅企業がほとんど。経団連加盟の主要企業は、最終内定を学生に通知したところは少なく、8月1日に最終選考をするというスタンスを学生に示している。

 だが、こうした経団連加盟企業においてもすでにエントリーは、締め切り、各種選考試験は実施済みであり、いつでも内定を出せる状態のまま8月1日を迎えようとしている。16卒の採用は、これで9月に終息するのだろうか、見通しは、波乱含みといえるが、その前に早期内定を出した企業と8月選考企業との駆け引きがある。採用担当者にとっては、深刻で失敗は許されない課題である。

▼大手就職情報会社の調査によれば、6月末の学生の就職内定率は、
44%と報告されているが、その内定保有者のうち48.4%の学生が内定先に「入社したい」と回答し、就活を終了している。だが、残りの学生はどうか。「できれば別の会社に」という回答が45.6%、「入社したくない」という回答は、6.0%もあった。

 なんと、内定を持っている学生の半数が、就活を終了することなく、これからも企業にエントリーしたり選考試験があれば挑戦したりすると回答している。その理由は、次の3つだ。

1.内定をとったが、第一志望ではないのでチャンスがあれば応募する
2.別の良い会社の採用が、これからも多くありそうだ
3.希望する大手企業(商社、銀行、保険など)の採用が、これから本格化する

▼このように学生の就職活動は、まだ終わっていない。
とくに学生の人気が高い経団連加盟の総合商社、銀行、保険、メーカーなどの主要企業が8月から内定を出すというだけにすでに内定者を多く抱える準大手や中堅企業は、戦々恐々。7月からは、内定学生の入社の意思確認だけでなく、説得のための食事会、若手社員との懇親会、先輩社員とのブラザー制度の実施、親のための会社見学会など硬軟さまざまな対策に取り組んでいる。

 だが、なかには、「オワハラ」といわれる内定者への締め付けというきびしい対応をとっている企業も少なくない。その事例は、大学側の報告によると以下のようなものだ。

・「今後、就職活動は行わない」という文言が記載された誓約書にサインを求められた。
・ 親の承諾書を提出するように求められた。
・口頭で就職活動をやめるよう強要され、就職ナビサイトを退会するよう言われた。
・内定辞退を伝えに会社に行ったところ、怒鳴られ、内定辞退を撤回するよう求められた。
・最終面接の後、受話器を渡され、他の応募を今辞退すれば内定を出すと言われた。
・ 大学キャリアセンターもしくはゼミ指導教員の推薦状を提出すればすぐに内定を出すと言われた。

▼こうした企業によるオワハラは、
学生の受け止め方で大げさに報告される場合もあるが、その場合は、直ちに学生によってネットにアップされ、大学のキャリアセンターにも通報される。そうなれば、今後3年間、新卒採用はできなくなる。そのためにもここ2カ月は、慎重に、懇切に内定者フォローに取り組むしかない。

 一般に企業の魅力による違いが大きいが、準大手企業や中堅企業の場合、内定者の半数は、第一志望ではないと考え、辞退率は、全体の3割程度はあると覚悟しておかなくてはならない。無理やり拘束して学生を縛り付けても限界があるし、入社後定着することはないだろう。そのためには、大きな視点で内定者フォローをするしかない。好例が、大手流通会社のケース。同社は、約300人の内定者のうち4割が8月までに他社を受験、合格すればそのまま内定を辞退すると予測しているが、他社への応募を妨害するのでなく静観している。同社は、より難関といわれる企業に挑戦するような人材こそ求める人材だと評価している。これも人材の見方であり、現状の採用活動の実態を十分に理解しているからだろう。

 そうした前提の上で内定者フォローを実施しなくてはならない。そのキーワードの一つが「魅力ある若手社員」。過去の採用において学生がなぜこの会社に決めたのかを思い起こしてほしい。その多くが、社長の魅力、ユニークな商品、卓越した技術などのほかに「魅力ある若手社員」というのが強力なアピールポイントであったはずだ。

 そう、これから夏までの内定者フォローは、「魅力ある若手社員の配置」につきる。こうした社員を2カ月間、現場から離すのは業務に支障を生じるだろうが、今の時期はそうするしかない。内定した学生たちが、この若手社員と一緒に仕事をしたいと思わせることこそ内定者対策であり、定着対策になるのではないか。

【掲載日:2015年7月9日】

このページの先頭に戻る

【2015年9月】16採用のキーワード

 16卒の採用活動は、8月末でほぼ終了した。まだ活動中の企業もあるが、多くの企業は、早くも来年度の採用活動計画に取り掛かっている。採用総括には早いが、これまで発表された各種調査や企業、学生へのヒアリングをもとに16採用のキーワードを8項目とりあげてみよう(本号では、4項目をとりあげ、残り4項目は次号に掲載)。

1.採用ブーム到来
 16卒の求人倍率は、4年連続増加の1.73倍(昨年は、1.61倍)。企業の採用意欲は昨年以上に旺盛だった。求人総数も72万人と4年連続で増加だった。内訳をみると採用に意欲を見せたのは、従業員数300人から4999人の準大手企業と中堅企業。業種でみれば、流通業、製造業だった。だが、従業員数5000人以上の大企業や就職人気の高い金融業の求人数は、前年並み。たしかに「選り好み」をしなければ、誰でも就職できる環境にはなったが、大手企業や人気企業への就職は一段と狭き門だった。

2.内定ペースは早く、複線化
 「指針」によって採用スケジュールは変則的になった。しかし、企業の採用活動は、大手も準大手、中堅企業も例年のように早期から活発だった。変化は、内定の早いペースだ。準大手、中堅企業は、前半期である6月にシフト、これに対して大手企業は早期内定に慎重で8月にシフトした。そのため学生の就職内定率は、情報解禁2か月後の5月は3割、7月は5割だったが、そのほとんどは、準大手、中堅企業。大手企業は、採用選考が開始された8月からだった。これまでと違って内定のピークが分散し、複線化したのである。これは、準大手、中堅企業の旺盛な採用意欲に加えて長すぎた待機期間、後のない活動期間という今年特有の現象かもしれない。

3.早期内定者にオワハラの嵐
 今年は、4月からの選考のペースが問題だった。準大手と中堅企業は、5月中旬から6月上旬に内定のピークを設定、予定通り採用計画数を達成した。これに対して経団連銘柄といわれる大手企業は、6月から8月中旬にかけて内定を順次出したがその数は3割程度。多くは7月から8月に内定を一気に出した。これは、「指針」を遵守すると表明した企業にとっては既定路線だったが、早期に内定を出した企業にとっては、深刻な問題となった。折角、採用した人材を逃がすまいと過激行動に走ったのが企業によるオワハラ。内定者に入社誓約書の提出、遠隔地での研修、連日の懇親会、親や大学教職員による入社誓約書提出など過度の拘束が社会問題になったのである。

4.長期化した採用活動で企業も学生も疲弊
 今年は、「指針」の初年度。そのため企業には「指針」が遵守されるのかどうか、思惑が錯綜した。情報解禁では、足並みをそろえたものの、選考開始、内定出しについては、大きく乱れた。とくに準大手、中堅企業は、大手企業と一緒に8月に選考、内定するのでは勝てない、と判断。

 そこで準大手、中堅企業は、大手企業の前に採用活動を展開し6月上旬までに内定を出すことで学生を確保した。これが今年の準大手、中堅企業の採用戦略だった。しかし、大手企業は、何もしないのではなく、年初から採用活動はスタートしていた。むしろ長期間にわたって採用活動を継続フォロー(ゆるい拘束)して、内定を出すのを遅くしただけ。それでも6月からは内定出しを開始していた。そのため準大手、中堅企業には、6月から内定辞退が連日のように通知され、採用担当者は内定辞退への慰留、説得、その一方で繰り上げ内定、追加募集、夏・秋採用準備という業務に忙殺された。「指針」の不徹底で採用活動が、むしろ長期化し採用活動が通年化した。これは、就活をする学生も同様で、大手企業の夏採用にチャンスをかけるだけでなく、不安から早期に内定を確保しておく行動も当然となった。このことによって、学生の就活は、3月から8月までとなり、多くの企業に応募できたものの半年間が就活の日々ということになった。

 「指針」によって学生も学生生活を充実させることなく疲弊することになったのである。

以下のキーワードは、次号。
5.さらに変質したインターンシップ
6.古くて新しい社員面談という選考
7.予想通り中小企業の採用は大苦戦
8.「指針」とは一体、何だったのか


【掲載日:2015年9月17日】  

このページの先頭に戻る

【2015年11月】16採用、8つのキーワード

 採用活動のルールである「指針」を継続するか、見直すかで経済団体と大学団体で対立しているが、すでに多くの企業は、選考時期の繰り上げを前提に来年度の採用活動をスタートしている。

 そこで今回は、前号に続いて16採用のキーワードを8項目とりあげて、来年度の採用活動の方向を探ってみよう(前号では、1.採用ブーム到来、2.内定ペースは早く、複線化、3.早期内定者にオワハラの嵐、4.長期化した採用活動で企業も学生も疲弊 という4項目をとりあげた。今回は、残り4項目を取り上げよう)。

5.さらに変質したインターンシップ
 「指針」によって採用活動が大幅に繰り下げられたことに企業側が、どのような対抗手段をとったのか。

 最も多かったのは、インターンシップの活用だった。とくに昨年から急増したのが採用直結型である。企業は、インターンシップにおいて学生にグループワークをさせたり就業させたりして、人物を観察、その評価を採用のポイントにするという動きだ。そのために企業は、インターンシップ説明会を早期に開催、希望者には、エントリーシートを書かせ、面接をして、綿密に選考していた。採用選考と同じフローだ。

 このほか、インターンシップ参加者にはアドバンテージを与え、選考ステップを優先する企業も目に付いた。大学からヒンシュクを買ったのは、1Dayインターンシップ。インターンシップという名目で情報解禁日前に全国各地で数百人の学生を集めて1Dayの会社説明会を開催したからだ。このようにインターンシップは目的、期間、内容など、本来の姿から大きく変化、変質したのである。

6.古くて新しい社員面談会という選考
 昨年末から急増したのが社員面談会。この社員面談会は、学生側から先輩社員に事業内容や仕事のやりがいを聞くもの。だから「指針」と関係はない個人の活動というのが建前。

 だが、これが企業側から企画され、早期から特定大学の3年生を対象にさまざまの名称で開催されるようになったとなると憶測も生じる。その名称も「若手社員のキャリアを聞く」、「まるごと質問会」、「企業カフェ」等々。そのため情報解禁後の選考手法であるリクルーター面接(リク面)、グループデイスカッション、集団面接、人事面接など情報解禁後の採用活動と重複することとなった。今年は、こうした面談会の評価が、そのまま選考において重要な役割を果たし、早期の採用選考を可能にしたともいわれている。本当だろうか。


7.予想通り中堅・中小企業の採用は大苦戦
 企業業績回復、新サービス産業の急成長、グローバル経済の拡大による新卒採用ブームの到来に加えて「指針」の実施で今年の中堅・中小企業の新卒採用は、一段と採用が困難になった。
 これは、当初の予想通りだった。とくに選考開始が8月以降になったことによる影響は大きく、従来、5月から7月を採用活動のピークとしていた中堅・中小企業が、大手企業の様子を見ながらの長期間の採用活動となった。そのため多くの学生が、中堅・中小企業の内定を持ちながら夏の大手企業の選考に備えていた。だから大手企業が内定を出し始めた6月頃から中堅・中小企業では、学生の内定辞退が増え始め、そのため中堅・中小企業の多くは、繰り上げ採用、二次募集に追い込まれた。
 その上、今年は、大手企業が内定を出し終えた8月中旬から学生の就活は、低調となり、大学も夏休みに入ったため採用のイベントにも学生が集まらなかった。しかも二次募集をしても9月以降では、学生の姿は、どこにも見当たらなかった。このように今年の中堅・中小企業の採用活動は、就職情報解禁後、先の動きが見えないままに突入、結局、採用計画数を確保できないままに終了してしまった企業が多かった。

8.「指針」とは一体、何だったのか
 安倍総理の肝煎りで実施された「指針」は、初年度の実施後、早くも見直すかどうかで混迷している。
 「指針」の趣旨は、正当であり、誰も異論のないところだった。
 だが、実際に「指針」がどれだけ遵守されるかは、当初から疑問視されていた。とくに企業との接触が3月に開始してから選考開始まで5か月間もあったことからエントリー受付の長期化、就職人気の高い企業の選考が8月からとされたことなどによって企業や学生に混乱と困惑を招いたのは予想通りだった。

 そして16採用は、終わってみれば企業も学生も予想以上の長期間の活動となったことからひどく疲弊し大きな不満が残った。そのため採用活動がヤマを越えた8月中旬あたりから「指針」の批判や見直しの声が各方面からあがった。
 中小企業を会員に持つ日本商工会議所は、「多くの企業が解禁日前から採用活動をしていたのではないか」と指摘、「まじめにやったところが損する。しわ寄せが中小企業にくるというのは看過できない」と述べた。
 これは、大手の金融や商社、製造業を傘下に持つ経団連も同様で、榊原会長は、8月以前に抜け駆け選考をした企業が相次いだことから「選考解禁日を繰り上げることを検討する」と10月下旬に述べた。
 これに対して国公立私大の大学就職団体である就職問題懇談会は、10月末に「指針」の継続を政府に提言した。「見直し」対「継続」である。

 今後、調整されるだろうが、17卒の採用活動はすでにスタートしている。
 2年越しで実施された「指針」のどこに問題があったのか、何が変わったのか。議論はこれからだろうが、「指針」とは一体、何だったのか。何をめざしたのか、あらためて考えなくてはならないだろう。

【掲載日:2015/11/10】 

このページの先頭に戻る

「採用現場ニュース」バックナンバー

景気によって急激かつ大きく変化するようになった企業の「採用」について、過去の記事に隠されたヒントがあるかもしれません。

キャリアコンサルタント 夏目孝吉

早稲田大学法学部卒業、会社勤務を経て現在キャリアコンサルタント。東京経営短期大学講師、日本経営協会総合研究所講師。著書に「採用実務」(日本実業出版)、「日本のFP」(TAC出版)、「キャリアマネジメント」(DFP)ほか。

このページの先頭に戻る