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第44回 無反応でも話しつづけられる学生

 新卒採用関連のイベントで、学生を前に話をするとき、彼らのリアクションの薄さに、不安になったことはありませんか。私は、あります。

 彼らの緊張を解こうと面白ネタで自己紹介しても無反応…。お約束のリアクションが期待できるジョークにも無反応…。もしかして説明が分かりにくいのかな…と思い、「不明点はありませんか?」と問いかけても無反応…。いや~な汗が出てきます(笑)。

 にもかかわらず、アンケートには「くだけたお話で親しみを感じました」「分かりやすい説明でよく理解できました」と書いてあったりするのです。「だったら、もう少しリアクションして…」と言いたくなります。

 学生を近くで見ていて感じるのが、公共圏(不特定多数の人と場を共有するエリア)で人間関係を円滑にする“身体反応(笑顔、あいさつ、相槌など)”が弱くなっているということです。

 言葉を駆使しなくても欲しいものが手に入るようになったことで、バーバル(言語)コミュニケーションへの意欲が低下している、という点はよく指摘されます。それがさらに進んで“身体反応”というノンバーバル(非言語)コミュニケーションも低下しているように思うのです。

 確かに、それでも日常生活で困ることは少ないでしょう。ネット環境があれば、知りたい情報のほとんどは入手できますし、欲しいものだって通販でこと足ります。そういえば、お店の人に話しかけられるのがイヤで、「洋服は通販でしか買わない」という学生がいました。

 こうした傾向は、学生に限った話ではないのですが、子どもから大人への移行期だからこそ、コミュニケーションスタイルの違和感が目立ってしまいます。

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 対人関係を円滑にする“身体反応”を理解してもらうため、ある体験ワークをよく実施します。一切反応しない人を相手に、ひたすら話し続けるというペアーワークです。実際やってみると分かりますが、相手が無反応だと、そう長くは話し続けられません。1~2分で話す意欲を失う人がほとんどです。

 ワーク体感後は、無反応のツラさが身に沁みるので、うなずく、笑顔でアイコンタクトする、メモをとる、といったリアクションを意識するようになります。

 しかし最近、無反応ワークが通用しない学生が増えているように思うのです。以前なら、「本気で心が折れそうになった」「怖くて頭が真っ白になった」と、強い拒否反応が多かったのですが、だんだんと「厳しい」「つらい」程度に変わっていき、数年前からは「特に問題なく話すことができます」という学生が出現するようになりました。

 俗にいうオタクな学生に見られる傾向だったので、ニッチな嗜好性を持つタイプに起こる事象かな~と流していました。本人も「自分の話に興味を示す人が少ないことは分かっているから、反応がなくてもあまり苦痛じゃない」と話していて、違和感はあるものの、反応も多様化しているな~という程度の認識でした。

 しかし、ごく一般的な学生から「それほど苦痛じゃない」と聞いたときは、私の方が頭が真っ白になりそうでした。理由をたずねると、「話しやすいわけではないけど、スマホをやっている友だちと会話することも多いので、苦痛を感じるほどではない」という答え…。

 お互いに“身体反応”なしで会話が成り立っているのなら、必要性に気付くはずがありません。マナー講座で「表情の基本は笑顔!」とレクチャーすると、「面白くもないのに笑顔といわれても違和感がある」「頬の筋肉がピクピクして維持できない」という彼らの意見にも、合点がいきます。

 運動神経や能力の問題ではなく、日常生活における必要性と、圧倒的なトレーニング量の少なさに要因があるのでしょう。使われない身体の反応は鈍く、鈍感になります。相手に対しても同様でしょう。

 採用に関わる社会人のアンケート結果(※)で、「空気を読む力(表情やしぐさなどから、相手の思惑を読み取る力)」が、評価ポイントの上位にあがっていました。しかし、一部の学生にとっては、高いハードルとなりそうです。

 目下の不安は、無反応ワークがいつまで教材として成立するか、ということです(笑)。無反応に苦痛を感じる学生が少なくなったら、公共圏における“身体反応”の必要性をどうやって伝えればよいのでしょうか。でも、それが現実となったとき、必要性自体がない社会になっているのかもしれません。

※採用業務に携わっているビジネスパーソン2,000名に聞いた「新卒採用に関する調査2017」(ネットエイジア株式会社)

【掲載日:2017/06/13】

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キャリアコンサルタント 平野恵子

国立大学の教育学部卒業後、会社勤務を経て、現在キャリアコンサルタント(CCE,Inc.認定GCDF-Japan)。大学生や社会人などの若年層を中心としたキャリア支援を専門に活動している。また、人材会社の研究員として、就職活動に関する動向や意識調査をもとに、雑誌や専門誌への執筆も行う。

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