採用現場ニュース2016(2016年の記事)

【2016年1月】既卒者採用は拡大する

 16卒の採用においては、既卒者を採用するという企業の動きが目に付いた。大手就職情報会社の調査では4割の企業が既卒者の採用を予定しているという。しかも過去3年間の推移をみると、24.7%⇒29.1%⇒40.4%と年々増えている。しかし、既卒採用の実態は、採用計画があっても採用人数は少なく、応募条件が厳しいという問題点もある。17採用のスタートにあたり既卒採用の拡大も課題としてはどうだろうか。

▼なぜ最近になって既卒採用が増えてきたのだろうか。その理由は、次の3つだろう。

1.人材本位で新卒にこだわらなくなった
 かつては、社会経験のない新人を採用してゼロから育てていくという発想が主流だった。だが、ここ10年、企業において実力主義、成果主義が普及、年功序列型の人事制度が見直されるようになると27歳以下なら新卒、既卒を問わずに新卒という枠組みで採用、競争の中で人材を育成していくというように変化した。これは、実力主義といわれる流通、小売り、サービス、ITの業界で顕著な傾向となっている。

2.多様な人材を必要とするようになった
 新卒採用において多様な人材を採用するという採用方針も既卒者採用拡大の背景にある。多様な人材とは、独創性や基礎学力そして経験や実績を重視する採用である。その対象は、留学経験者や外国人そして資格試験をめざしていた人材や社会活動をしていた人材である。企業は、大学の中だけで活躍してきた人材でなく広く社会の中で目標に挑戦してきた若者を採用しようと変わってきたからだ。

3.新卒が採用できないため
 新卒者が採用できないからという消極的な理由もある。これは、採用活動の失敗だけでなく、求人ブームで不人気企業や中小企業では、新卒者の応募が激減、そのため既卒者なら採用できるだろうという安易な発想で既卒者に門戸を開いている。だが、中小企業や人気のない企業では、水準以上の学生は容易に採用できないので採用計画はありながら採用数を充足できていないのが実情だ。

▼既卒採用では、求人企業の買い手市場のように思えるが、採用にあたっては3つの課題がある。

1.「正社員としての経験が無いこと」にこだわらない
 経団連の「新卒採用調査」によれば、応募受付の条件として最も多いのは、「卒業後3年以内」が55.4%、「正社員としての経験が無いこと」42.3%、「そのほか」8.6%で「特に条件なし」は、25.7%だった。もちろん26歳以下という年齢制限は共通してある。そこで問題なのは、「正社員としての経験が無いこと」に企業がこだわる点だ。なぜ、こだわるのか、企業の言い分を聞くと、数年の社会人経験は評価に値しない、ビジネスに対する取り組みを最初から学んでほしい、挫折した人間はいらない、忍耐力の欠如等未成熟な人間が多い、などという。これらの理由は、偏見といってよい。数年の社会人経験、キャリアがあるのだから人物を理解するためにもじっくり聞いて評価するべきだろう。

2.既卒者をどこから採用するか
 既卒者で就職を希望する26歳以下の若者はどれくらいいるのか。これは推定だが、毎年の新卒未就業者数や早期の大卒離職者数を勘案すると数万人はいるはずだ。企業としては、26歳を上限とする転職サイトを利用するのが第一だが、新卒採用の自社ホームページに既卒者コーナーを設置することも有効だ。そこでの応募者は、志望度も高く、新卒の採用活動と並行して行えるというメリットがある。これがもっとも大きな採用のチャネルである。加えて既卒者向けの採用イベント、新聞広告、ハローワークでのアプローチもある。なお、ハローワークの活用は、登録人材や手続きを考えると強くは薦められない。新卒紹介という人材紹介会社を利用する方法もあるが、その相場は、1名あたり80万円前後というが、これは、最後の手段といったところだ。

3.既卒者の採用基準を明確にする
 既卒者で「職歴なし」を応募条件とすれば、企業は、卒業後の空白だった1年あるいは2年間、何をしていたのかを聞くことになる。ここでは、若者に辛かった数年間の社会人経験をどうとらえたかを聞き、そのうえで、新卒同様に「素材」や「ポテンシャル」で選考するべきだろう。「正社員としての経験がある」場合は、どうか。職歴を含めて既卒者がやってきた数年間の経験で何を学び、発見したかを聞くべきだ。その上で、働くことに対する考え方が明確か、今度はしっかり仕事に取り組むという挑戦意欲が旺盛か、などを評価することになるだろう。

▼既卒者の採用は、徐々に始まったが、まだ本格的とは言えない。

 新卒採用を補完するような位置づけである企業がほとんどだからだ。そのため既卒者は、新卒採用と違って数値目標はない。だから応募する学生にとっては、採用されるかどうかわからない。その上、多くの企業は、既卒者の応募に条件を付けて、新卒と違う扱いをする企業も少なくない。だが、そうした考え方で既卒採用に取り組んでいては、優秀な人材は応募しない。

 もっと、前向きに人材として尊重しなくては、若者は応募する気にはなれない。この点に気付いた企業は、新しい既卒採用の方針を打ち出している。例えば、中堅保険会社の場合は、応募資格は「30歳未満」とし、学生はもちろん、既卒者やフリーター、就業経験があっても応募できる「定期育成採用」という新しい採用活動を始めた。「学問を妨げず、もっとも適したタイミングを選択のうえ、応募してほしい」というのが採用方針。

 次は、大手IT企業のケース。30歳未満の意欲ある人には広く門戸を開き、自由な時期に自己の意思で活動を行えるようにしている。だから募集対象は新卒・既卒は問わず、一度就職をした人でも再挑戦することができる。これら2つのケースは、一括採用の枠を超えた通年採用でもある。これこそ今後の既卒採用の新方向といえよう。
 
 なお、見落とせないのが公務員の採用。例えば、平成27年度の国家公務員総合職(大卒程度)試験の場合、応募資格は、以下の通りだ。

(1) 昭和60年4月2日~平成6年4月1日生まれの者
(2) 平成6年4月2日以降生まれの者で次に掲げる者
  ア 大学を卒業した者及び平成28年3月までに大学を卒業する見込みの者
  イ 人事院がアに掲げる者と同等の資格があると認める者
 
 新卒も既卒もない。職歴も不問。年齢制限があるだけだ。これも既卒採用のモデルである。

【掲載日:2016/01/27】

【2016年3月】採用活動の短期集中で内定辞退が増えそうだ

3月1日、就職情報が解禁された。就職サイトのオープンと同時に学内では企業説明会、学外ではイベント会場やホテルなどで合同説明会が一斉に開催されている。

今年は「指針」の決定が遅かったが、企業や大学は、情報解禁は従来通り3月、選考開始日は6月に繰り上がると読んでいたためか、大きな混乱はなかった。むしろ学生たちが、ノンビリ構えていて準備が不十分とみられていた。

しかし、3月上旬の学生の動きは、従来になく活発で、どこの会場も超満員だった。そのため現在懸念されることは、企業の採用活動のテンポが速くなり、学生たちが自己分析や志望企業の研究が不十分なままに短期間に内定先を決めることだ。そうなるとミスマッチや内定辞退、オワハラが、昨年以上に増加することが懸念されている。

採用活動のスタートにあたって今一度、ミスマッチなき採用の留意点を5つほどあげておこう。

1.求める人材像を明確化する

面接、選考に当たっては、自社の求める人材像を明確に言語化することだ。
どの企業でも優秀な人材、面白い人材を求めているが、それがどんな人材なのか曖昧だ。

「自らを革新し、挑戦し続け、高度な専門性を身につけ、グローバルな視点を持ち、チームワークを大切にして自らを律することのできる人材」などとスーパーマンのような人材を要求しては、学生はその企業に関心を持つことはないだろう。

採用予定のコースや職種によって若干違うのは当然だが、根底に共通して求める人材像はある。それを学生にアピールすることだ。
例えば、「イノベーションを起こせる人材」とか「会社をつくり上げていく気持ちのある人」「情熱・熱意・執念」などシンプルで学生も納得するキーワードだ。

学生にとって内定をもらった後の不安は、自分が本当に評価されているのか、自分とこの会社は合っているのか、入社後、どんな人間になればよいのか、といったことだ。内定した学生に負担なく元気が出るようなキーワードを示せる企業こそ内定者を安心させ、事態を防ぐことができるものだ。

2.選考のプロセスと内定のタイミングを柔軟に

内定辞退が激増した昨年の場合、その多くは、選考途中での辞退が多かった。
その原因は会社の魅力不足やフォローの弱さだけでなく、選考スケジュールの重複がほとんど。

短期集中の採用活動は、志望度を確認するのには有効だが、これは、大手、人気企業だけのこと。大手と同じペースで上から目線の採用活動をしていては、優秀な人材を早い段階から失うことになる。

これを防ぐには、ライバル企業の選考フローを把握するだけでなく、リクルーターの役割が大きい。
選考途中での学生との個人面談を密にすることで、本人の志望度、併願企業、悩みなどをヒアリングしてほしい。その上で、リクルーターは学生にきめ細かな就活や時間調整のアドバイスすることが必要だ。また、企業も平日の夕方の面接を実施したり、内定を一斉に出したりするのでなく「さみだれ型」にすることも考慮してよい。これによって不本意ながらの面接欠席、内定辞退を少しでも減らすことになる。

3.面談会をきめ細かく運営する

内定辞退をした学生のアンケートによれば、辞退理由のなかで最も多いのは、「仕事が自分に合わないのではないか」という不安だ。

合うか合わないかは、実際に就業して数年後にわかるのだが、内定者は、こんなところにも不安を抱く。ここは、面接者やリクルーターからのフォローが大事になる。本来、その不安を取り除くためにインターンシップがあるのだが、採用説明会に変質している現在ではそんな余裕はないだろう。

そのためにも最近は、質問会や面談会が活発になっている。ここでは、若手社員と学生とで、仕事内容や楽しさ、厳しさ、相性などのすり合わせをおこなうことになる。

ここ数年、面談会は早期選考の手段として使われているが、選考活動が始まった現段階では、学生が入社後にやっていけるかどうかを具体的に伝える活動としてきめ細かく運営するとよいだろう。
4.学生の気になる情報は公開する

内定辞退の理由で案外多いのが賃金や離職率、入社後のキャリア形成。これも若手社員による面談会で具体的に伝えてほしい情報だが、学生はなかなか質問をしてこない。

その一方で、学生は2チャンネルやブログの記事、雑誌のタイトルなどで膨大に垂れ流される企業の評判や噂などに惑わされる。説明会や質問会などでは、こうした歪曲された情報を是正するだけでなく、あえて賃金額だけでなく給与などの実績を示したり、どのようにして給料が決まったりするのか、評価方法や昇進の事例も企業側から突っ込んで伝えることが必要だろう。
5.親の横やりを防ぐ

内定して1か月後であっても、突然内定辞退という申し出がしばしばある。

学生が妙な噂や友人たちの情報あるいは親の反対で辞退することがある。とくに親からの反対が増えている。最近は、親が就職先について関心をもつことが多く、内定先の企業についてアレコレ詮索し、辞退を学生に迫っている。

その理由の多くは、知名度がない、会社の将来が不安、事業内容が不明といったこと。親の企業研究が不十分なことだけでなく、保守的な企業・仕事観であることも大きい。

そこで対策としては、内定者の親に会社関係資料の送付、内定者の親と経営トップとの懇親会、企業見学会の開催などがある。急成長企業、同業他社にブラック企業がある企業、同族企業などでは、そんな対策が必要だ。

【掲載日:2016/03/16】

【2016年5月】本格化する17年卒の採用活動

17年卒の就職活動が本格化している。今年は、円高や中国経済の停滞でわが国の企業の景況も先行き不透明だが、採用意欲は旺盛で学生の就活にも明るさが見える。すでに3月に就職情報が解禁され、6月の選考開始に向けて企業と学生の接触も活発化している。これまでの採用活動を振り返ってこれからの展開をみてみよう。

▼経済環境は、停滞しているものの新卒採用の意欲は旺盛だ。3月に発表された日経新聞社の調査によれば、新卒採用計画は、リーマンショックで大幅に落ち込んだものの2010年から回復、2012年卒からは、対前年比フタ桁増加という好調ぶりが今年も続いている。しかし、その伸び率は、14.6%→10.7%と昨年を下回っている。内訳を見ると文科系が8.6%→8.8%と微増、理工系が18.2%→13.3%と後退、理工系採用の伸びが止まったことが注目される。採用計画が前年比で減少したのは鉄鋼、電機、造船、百貨店・スーパー、保険などだ。こうした中で元気なのは、食品、化学、不動産・住宅、銀行で採用増となって積極的に採用活動に取り組んでいる。

▼今年4月までの採用準備?活動を振り返ってみよう。数年前から大手企業の早期の採用活動として普及した面談会は、もはや定着してほとんどの企業が実施している。学生と企業人とのパネルデスカッションや質問会、先輩懇談会と名称は多様だが、開催時期が2月から3月だからねらいは明白。その対象者も露骨で特定大学に限定するものが多い。特定とは有名国立、私立15大学のことである。大学特定ではないが、インターンシップ参加者限定というのも多い。学生への呼びかけは、インターンシップのフォローで昨年夏あるいは年末のインターンシップ参加者限定の懇親会だ。このように今年の企業は、従来のように多くの学生を集めて、一人一人じっくり選考していくという動きでなく、対象者の限定とセレクションの短期化を目指している。だから大手有名企業ほど大規模な会社説明会の参加には消極的になり、特定大学限定のミニ説明会、懇親会を頻繁に開催するようになった。選考において、小さな変化では、説明会会場における質問やアンケートがスマホ活用になったことや説明会後の面接において「逆面接」が増加したことがあげられる。

▼ここまでの採用活動の進捗状況はどうか。意外なほど6月選考に向けての動きが整然としている。昨年、改訂された「3月情報解禁、6月選考開始」という指針が遵守されているのだ。早期からのアウトロー企業は、相変わらず外資系企業と国内のITベンチャーだったが、大勢に影響はなかった。それだけに3月1日からの学内説明会は、活況で、どこの大学でも昨年以上の企業を集めて連日、多くの学生が参加した。そして学内説明会と同時に開催された合同説明会にも学生は多く集まった。ただし、これは大手有名企業だけ。就職環境の好転で学生の大手企業志向が高まったためといわれている。そのため今年は、中堅・中小企業は、まるで学生が集まらないという現象も見られ、昨年以上の採用難は必至と見られている。

▼そこで、今後の採用活動の流れだが、すでに大手有名企業の多くは、エントリーシートを締め切り面接に入っているので、内定出しは5月下旬から開始されそうだ。そうなれば6月上旬内定ピーク、6月末には結着という流れが予想される。だが、今年は、従来以上に理工系採用やグローバル採用について通年型の採用活動をする企業が増えていることと、採用増の準大手、中堅企業が多いので、大手企業の採用活動は7月頃まで続きそうだ。なお、中堅・中小企業の採用は、昨年以上に厳しく、今年も採用活動は秋まで続くことになりそうだ。

【掲載日:2016/05/12】

【2016年7月】終わりなき採用活動

▼今年の採用活動は、予想外に企業が指針を遵守したことで、選考が解禁された6月上旬に内定が集中、その後も早いペースで内定が出され、6月末には決着してしまった。しかし、6月上旬からの大手企業の内定ラッシュで中堅企業や大量採用企業では、内定辞退が続出、予想されたこととはいえ、採用担当者は頭を抱えている。しかし、嘆いていても残されたチャンスは少ない。学生が夏休みに入る前までに何とか採用計画を充足したいと走り回っているのが実情だ。

こうしたなかで中堅企業が警戒しているのが、大手金融機関の準総合職や特定職採用の長期化だ。今年は、昨年より大幅増という採用計画があるので大手金融といえども採用活動は、まだ継続中だ。そのため中堅企業が、とばっちりを受け、例年なら骨休めできるはずの夏休みも学校訪問や合同説明会に顔を出すことになった。

▼大手就職情報会社の内定調査によると選考開始前の5月上旬には、すでに30%の学生が内定を保有、6月上旬には、51%の学生が内定を持っていたという。今年は、大手企業は、6月以前の内定は少なかったので、早期内定のほとんどは中堅・中小企業とみられる。学生にとっては、大手企業が内定を出すときまでの滑り止めである。だから6月上旬においての「今後の就活予定」を聞いた内定者調査では、「就活をやめる」と回答した学生は32.2%、「就活を続ける」学生は36.5%もあった。これに「わからない」31.3%もいる。

この「わからない」という回答の本音は、関心のある企業が採用活動をしていたら応募するかも、ということであり、内定先に満足していないことでもある。そうであるなら内定学生の7割は、まだ本気で内定先企業に就職する気持ちになっていないということになる。採用担当者にとっては恐ろしい数字といってよい。同調査では、学生のコメントとして就活を継続している理由は、「とりあえず内定を取っておきたかった」「第一志望といえる会社でないから」「内定したが、実態を知って辞退予定」「自分が満足できるまで就活をしたい」という声である。今年は、加えて、「企業の実情がわからない」「内定した専門職の将来がよくわからない」「自分の能力でやっていけるのか」などと企業研究不足、自信喪失、キャリアへの不安が「わからない」という回答を生んでいる。自己理解や企業研究の余裕もなく就活し、短期集中で内定したためかもしれない。

それに追い討ちをかけるのが掲示板情報だ。例えば「●●銀行の□□職は、一生、個人業務オンリーだね」「アパレル企業▲▲は、販売店で成績を上げないとずっと地方回りだってね」と、したり顔で冷たくコメントする情報があふれている。この書き込み情報は無視できない。学生は、内定先企業については、熱心にリアルな情報として読んでいるからだ。 

▼そこで採用担当者の今後の内定者対策だが、半数が就活継続中と考えた場合、対策に妙手はない。次の3つの基本対策を懇切丁寧に実施するしかない。

①ほどほどのコミニケーション=月に2回くらいのメール、電話で会社の話題や自分の近況を伝える。返信を期待してはいけない。
②軽い食事会=イベントの案内、先輩紹介などによるスキンシップだ。これで話の波長があえば悪くない
③会社の期待、入社後の待遇、キャリアプランの明示=内定者には、入社後のキャリアパスについて明確に伝えることが必要だが、専門職や地域職の内定者には、プロとしての期待を語るのがよい。案外、福利厚生や給与・賞与なども明示しておくのもよい。最近の学生たちは、欲はないが、金銭には関心が高いからだ。

最後に、常に自社の掲示板を閲覧し、外部からの(最近は、社員からの告発、暴露もある)誤解や中傷に対する説明、反論を自ら書き込むこともしなくてはならない。たった一言の書き込みで内定者が、辞退することがよくあるからだ。

【掲載日:2016/07/15】

【2016年9月】通年採用の拡大、普及で新卒採用が変わる

17卒の採用活動も終了し、来年の採用活動の準備をする時期となった。今年は、イギリスのEU離脱、中国経済の失速、熊本地震など事件や事故が相次いだが、新卒採用には大きな影響をもたらすことはなかった。そのため、企業の採用計画は昨年以上に採用増となり、求人ブームは3年連続となった。一方企業の採用活動は、指針2年目ということで相応の対応をすることで、ほぼ予想通りの前のめりスケジュールで進み、6月に一斉内定、7月には流通や外食、中小企業を除いてほぼ採用活動を終えた。では、来年そして数年先の新卒採用はどうなるのか、今年の採用総括から指針の将来、インターンシップの動き、労働行政の方向など、今後の採用戦略を考えてみよう。

▼まず指針である。これは3月の広報解禁は遵守されたが、6月の選考解禁は惨憺たるものだった。それは既に本欄でもレポートしたので略すが、来年はどうかである。だが、18卒については、すでに経団連から現行ルールの継続が発表されているので、企業の不安はない。むしろ来年の採用活動のポイントは、広報解禁日までにどれだけ学生と接触できるかということである。インターンシップ、若手社員との面談会、OB/OG訪問のさらなる工夫である。

しかし、この早期活動は指針の趣旨からは抵触することは誰もが認めるところだ。そのため企業側は、2年先には指針を改訂してほしいと要望している。その理由として、採用広報をするには選考の3ヶ月前では短すぎる、という不満がある。大学側や学生も同意見で、期間が短いので十分な企業研究ができない、企業セミナーに参加できない、数多くエントリーできないといった声だ。そこで、2年後には、「広報解禁の時期は12月、選考は4月選考解禁」にしてほしいというのが企業・大学共通の意見だ。

さらに5年後でも指針は存続するのか、という疑問がある。この点に対しては、大手企業の採用担当者は、「数年後に、指針はなくなる」と明言する。その理由は、通年採用の拡大普及である。これによって各社が、コース別採用を拡大し、独自のスケジュールで採用活動を実施していくので、指針はもはや不要で自然消滅するという。そうかもしれない。

▼今後もさらに普及すると見られるのが通年採用である。ここ数年、通年採用は、大手メーカーや金融機関では、年々増加し、選考時期だけでなく、入社時期、採用対象者の拡大(既卒、外国人、女性など)も伴って拡大している。

今年の採用でも大手電機メーカーなどは、事務系総合職については、6月、7月、8月とエントリーを受付け選考、技術系は、学校推薦、自由応募ともに随時選考とし、大手金融機関は、総合職は、6月以前、地域職は、6月、一般職は7月に選考を行う、など多彩で多様な選考をしていた。

このように各社が、コース別採用をしたり、グループ採用をしたりすることで独自のスケジュールで、採用活動をするケースが増え、採用時期の流動化が進んでいる。これは、大きな視点から言えば一括採用の崩壊につながる現象だが、当面は、指針の決めた採用スケジュールの緩やかな消滅や廃止につながる動きだ。採用担当者としては、採用活動の大きなトレンドである通年化の拡大をしっかり読み込み、柔軟な採用スケジュールを準備することが必要だろう。

▼通年採用の普及とともに採用環境と労働行政の変化が予想される。特にグローバル化に伴う国内外の留学生の採用増に向けた採用ルールの設定、女性活躍を支援する女子採用数の数値化、ブラック企業対策としての新卒の定着率の公表義務化、既卒者採用の強化など新卒採用の仕組みが変わることには要注意だ。数年先には、新卒採用の割合が後退し、新卒という概念が変わってくるだろう。

▼このほか、SNSなどを利用したネット採用の急速な普及も採用や選考を大きく変える要因になる。
例えば、FacebookやTwitter、LINEなどの爆発的な普及は、学生の就活を大きく変えた。情報の収集やエントリーがモバイルで行われるようになったからだ。そのため企業では、情報提供が簡素化し、会社訪問を随時受け付けるようにし、面接など直接対面しなくてもWEBで面接が行えるようになった。

今後、学生はますますスマホによる就活が主流となり、優秀な大学生を対象とする採用は、学生による逆求人型の採用が基本になっていくとみられる。ネットを活用した採用手法は猛烈なスピードで発達している。採用担当者は課題としてネット採用のノウハウをいまから研究しておくことが必要だろう。

▼来年そして将来の見通しということでは、インターンシップが注目される。かつてインターンシップとは、大学、企業ともに1ヶ月の就業体験と厳密に定義してきたが、5年前からは、経団連によって5日間のインターンシップが認められたが、数年前に大手企業による1日インターンシップ(実際は、会社説明会)が黙認されたことで、今年は、多くの企業が、1日インターンシップを導入し成果を上げた。広報解禁日間までの学生との接触イベントとして、今年はさらに増える見込みだ。

さらに8月下旬、経団連は従来の「5日間の就業体験」としていたインターンシップを3日間でも良いとの意向を示した。企業の負担を軽減させ、多くの学生に参加させたい、というのが理由だが、これをインターンシップというのか、そして将来もこれをインターンシップとして企業は取り組んでいくのか、5年後どころか、数年でインターンシップは大きく変質、崩壊することになりかねない。
このように来年の採用活動と今後の採用戦略を考えたとき、従来の手法の強化とともに新しい試みの余地はまだまだありそうだ。

【掲載日:2016/09/21】

【2016年11月】1dayインターンシップにトライ

▼夏のインターンシップが終わり、’18卒採用が本格的にスタートした。就職情報の解禁は、来年の3月だが、それに先行する企業と学生との接触は、すでに始まっている。そのトップバッターが大学による「働き方セミナー」や「卒業生による業界研究会」だ。これは、卒業生に仕事内容や魅力を聞くという企画で、多くの大学では、キャリア教育の一環として早期から行っている。もちろん、これは、大学が企画、開催するものなので企業派遣の講師は、学生の個人情報をとったり企業の採用情報を提供したりすることはできない。このように制限のあるものだが、大学によっては、先輩たちによる業界研究セミナーとして取り組んでいるところもある。これは、従来、就職支援に後手をとっていた国立大学に多い。例えばT大では、11月1日から「卒業生による業界研究会」を開催した。内容は、参加企業からのスピーチ、 各参加企業OB・OGへの質問会といったものでいわゆる合同説明会と変わらない。参加企業は、石油、製薬、政府系銀行、証券、食品のトップ企業など100社が参加する大規模なイベントだ。

これに対して大手私大は、指針を尊重し、ほとんどの大学が3月1日の情報解禁日までは企業と学生が、直接、接触するイベントは開催されない。せいぜい各界で活躍するOB・OGを招いて、現在の仕事・学生時代の様子などの話を聴くセミナーがある程度だ。そこでは、「どのように生きるのか」「働くとはどういうことか」「職業をどのように 選ぶのか」などキャリア形成の支援を行うだけ。将来の進路選択、職業選択を考えるきっかけとして真面目に取り組んでいるのは評価できるが、学生には物足らないだろう。

▼一方、企業の動きはどうか。今年は、夏休み明けの9月下旬から秋、冬インターンシップの案内が急増している。銀行、保険、証券といった人気企業から鉄鋼や化学メーカーなど巨大企業も積極的だ。秋冬のインターンシップは、夏のインターンシップとは内容がかなり違う。募集人員が多く、地域や時期が分散しているのだ。某メガバンクは、10月末に3日間のインターンシップを全国20会場で行っていたし、大手保険会社は、全国25会場でのべ2,000人規模のインターンシップを開催した。
また大手総合商社も大規模なインターンシップに取り組んでいる。同社のインターンシップは、「1dayビジネスワークショップ」というもので商社ビジネスの説明、仕事を体感するワークショップと社員との交流会というもの。注目したいのは、その応募者の選抜方法。8月にエントリーシート提出、書類選考後の9月にグループディスカッション、これに合格した学生だけが11月と12月のインターンシップに参加できる。その選考プロセスは、採用選考と同じといって良いが、それだけ手間をかけながら1日だけとは不可解だ。

そして11月現在。企業による学生へのアプローチは一段と熱くなっている。そのほとんどは、冬のインターンシップの案内である。しかし、そのなかでも年末の1dayインターンシップが多く、開催する企業も流通、サービス、情報、中堅企業と採用に苦労している企業が多い。とにかく会社を知ってもらおうという内容だから、まるで会社説明会のようだ。これに比べて1月から2月中旬にかけて開催されるインターンシップは、5日間という経団連モデルのインターンシップが多い。しかもその多くが銀行、商社、保険と大手メーカーや人気企業。2月中旬の開催で就業体験をさせてじっくり人物観察をすれば、優秀学生を囲い込みながら人事面談へとなだれ込むこともできそうだ。

▼このように指針3年目の採用活動は、インターンシップを軸に始まった。昨年の採用総括でもインターンシップが最も有効という声が多かったせいか、今年は、大手企業、人気企業の多くが、インターンシップに取り組んでいる。それも年末1dayインターンシップや2月のインターンシップの増え方が著しい。インターンシップは夏、という時代は去った。そして冬のインターンシップが採用活動と密接な関係があるという時代が到来したようだ。だからといって、知名度のない企業が5日間のインターンシップを企画しても学生は参加しない。有名大学の学内説明会に呼ばれることも少ない。チャンスは、こちら側からつくるしかない。そのため地味で知名度のない企業が来年3月まで行うことは、大学訪問(中堅私大)と1dayインターンシップの開催、小規模な合同説明会への参加、DMの発信、そして縁のできた学生に継続的にメールマガジンを送信し続けることしかない。 なお、1dayインターンシップは、経団連でも多くの学生が企業を知るチャンスを与えるものとして認知、奨励の方向だから3月末までにトライすると良いだろう。

【掲載日:2016/11/15】

キャリアコンサルタント 夏目孝吉
キャリアコンサルタント 夏目孝吉

早稲田大学法学部卒業、会社勤務を経て現在キャリアコンサルタント。東京経営短期大学講師、日本経営協会総合研究所講師。著書に「採用実務」(日本実業出版)、「日本のFP」(TAC出版)、「キャリアマネジメント」(DFP)ほか。