採用現場ニュース2008(2008年の記事)

【2008年2月】 採用活動09の現状と対策

求人ブームの中でスタートした採用戦線09(09年2月大卒予定者)であったが、これからの採用活動本番を迎えて、これまでの企業の採用活動や学生の就活の現状を報告しておこう。

1. 学生の動きが二極化

大学における就職ガイダンス、業界セミナー、就職対策講座は、例年どおり昨年秋から年末までにかけて開催された。それぞれ盛況とはいうものの、個別企業のセミナーでは、学生の参加者数が少なくなるという傾向を見せた。

人気業界(金融、マスコミ)や人気企業(全日空、資生堂、オリエンタルランドなど)のセミナーには集中するものの、メーカーや流通、サービス業関係への参加者は、昨年に比べてかなり減少した。ただ、人気業界のセミナーに参加した学生がどれくらい本気かというと、多くが“のぞいてみた”といったレベルなのである。学生は、企業研究には年々熱心になってきているが、人気企業といえども実際の応募先としているわけではない。慎重というか、一歩前に踏み出そうとしないのである。

そのため、企業へのプレ・エントリーは増えているものの、本提出は減少している。さらに、合同説明会の光景も奇妙だ。特定の人気企業に学生は集中するものの、隣の企業を覗いてみるという行動はしない。興味のあるところだけに群がるといった傾向を見せている。こうした学生の極端な選別に、準大手企業や知名度の低い企業は焦りを見せている。

2. メーカー人気さらに後退

今年の初めに、各就職情報会社からいわゆる人気企業ランキングが一斉に発表された。これをみると航空、旅行、レジャー、マスコミといった一見華やかな企業に人気が集中し、男女ともに上位を占める結果となった。その一方で、昨年は人気上々だった銀行、損保、証券などの金融、メーカーの人気は後退した。ここでも人気企業と不人気企業の格差が拡大している。

なかでもメーカーの後退が目に付く。社会的な存在が希薄なことや仕事内容に魅力が感じられないこと、技術者偏重、勤務地が広範囲で給料が安いということが敬遠される理由という。企業規模や経営内容、仕事のやりがいなどで評価の高い松下電器、旭化成、日立なども大幅にランキングを下げている。この動きは、準大手メーカー、製造系の中堅、中小企業の採用にも悪い影響を与えている。学生の目がメーカーに向かず、これらの企業の採用は、今年は、一段と困難になってきた。

3. 手詰まりとなった採用活動

09採用は、昨年6月のインターンシップ説明会から始まったといわれるくらいに早期スタートだった。その後は、1 dayインターンシップが秋口に多数開催され企業をアピール、そして年末のグループワーク、企業体感セミナーで応募者を固め、1月に入ってからは、若手社員との懇談会ということで学生との密着度を強めてきた。この採用活動によって学生が特定企業に囲い込まれ、他社への応募が少なくなったといわれているが、こうした早期囲い込みをした企業は、当然のことながらエントリーシートを2月上旬に締め切り、いよいよ2月中旬から面接開始、数回の面接を経て内定の示唆へと続く。いつでも内定を出せる体制にもっていくのである。

しかし、大手企業の場合は、3月に内定とはいかない。倫理憲章を考慮して、4月1日以前には内定を出せないからだ。そこで、この2月末から3月末までの1ヶ月間をどのようにつないでいくかが大手企業の新しい課題となった。何回もさまざまなレベルで面接を繰り返すことで、学生をつなぎとめられるかどうかである。ただ、昨年は銀行が最終面接を5回以上行って、学生の評判を落としている。

一方で、学生は春休みで自由に動けるため、少しでも関心がある企業から声がかかれば、他社にも顔を出すことになる。友人の誘いもあるだろう。早期スタートした企業にとって、この1ヶ月間は不安な日々だ。そこでいくつかの企業では、春休みのインターンシップ、工場見学、支店見学を、地方で実施するだけでなく、海外でも実施するという案が検討されている。

はたして今年は、そのような採用活動(内定候補者囲い込み)が展開されるのだろうか。出遅れた企業にとっては、その内定候補者は、魅力的な人材である可能性が高い。これから短期間で、いかにして内定候補者を切り崩すかが課題であろう。

(2008.02.05)

【2008年3月】 09採用の前半を振り返る

いよいよ新入社員を迎える時期になったが、来年度(09年3月卒)の新卒採用はいまがピーク。内定はこれからである。そのため、採用担当者は新入社員の研修をしながら、人事面接の毎日が4月末まで続く。

09採用はかつてない求人ブームということで早期化が予想されたが、過度な早期化は抑制された結果となった。早期内定も、例年どおり外資系コンサル、外資系金融、医薬品、民放、サービス、住宅販売といった一部の業界、企業にとどまった。各種調査では、各社とも「状況の変化に柔軟に対応する」ということで早期化を匂わせていたものの、早期内定は3月上旬で2割程度と、例年並みの結果だった。

昨年秋から現在までを採用活動の前半戦として09採用を振り返ってみると、次の5点が指摘されよう。

1. インターンシップの形骸化

昨年夏より各社ガイダンスが活発に開催されたが、その内容は会社説明会そのもので、早期からの採用活動と見られるものも少なくなかった。参加にあたっては、学生にエントリーシートを要求するものもあった。さらに、秋から今年の2月までに大流行したのが「1dayインターンシップ」である。これも「就業体験」とは程遠く、会社説明会そのものであった。かくて、本来のインターンシップは、倫理憲章の「きつい制約」のために形骸化したのである。

2. 工場・事業所見学会の急増

企業の魅力や実態、社員の活躍ぶりを体感してもらおうという目的で、各社とも工場・事業所見学会、会社のイベントを積極的に学生へ案内していたことが目に付いた。これは、学生にとっては歓迎するところだった。ネット全盛時代における“リアル採用”の動きである。

3. 逆リクルーターの大量配置

先輩訪問、逆リクルーターなどという表現で、学生の側から先輩社員に連絡を取って話を聞くという動きが急増した。これまでは大学側が先輩名簿を閲覧させていたが、個人情報保護の観点から制約されたため、企業が導入した手法だ。学生が企業にエントリーすると、マイページに先輩名簿が通知される。学生にとっては、アクションを起こしやすいという事で普及した。

4. 採用活動の通年化

採用活動が4月だけでなく5月、6月、7月、9月と長期化、内定も4月分、6月分と分散化し学生の応募を平準化する動きが出てきた。これは、採用力が強い企業の場合は他社の優秀人材を横取りするためであり、採用力が弱い企業の場合は補充採用、追加採用のためである。採用ブームならではの現象でもある。

5. SNSと携帯電話が就活の基本に

企業情報や選考情報の収集は、同じ就活をしている学生から入手するのがベストということで、学生相互の情報交換が異常に発達した。就職情報会社の公式情報とは別に、口コミや体験情報がSNSで大量に発信されている。これは、大学別のほか専攻別(機電系、農業、薬学系学生)のものなどがあり、就職活動だけでなく、内定期間から早期転職までの幅広い情報交換が活発化、徐々に若者たちに対する影響力を増している。 就活における携帯電話の活用も進み、就職情報会社も携帯コンテンツの革新を進めている。

この5点のほか、採用対象者の拡大(留学生、地方大学、第二新卒)、職種別セミナーの激増、フィードバック型採用の拡大、パーソナリティ検査の重視、質問会の普及といった傾向も顕著となったが、これは別の機会に報告しよう。

(2008.03.28)

【2008年5月】 採用担当者として知っておきたい関連法規

2009年の採用活動は峠を越え、来年度の準備に入ったところだが、5月ともなれば、新年度となって新たに採用担当者となった読者もいるだろう。

そこで今回は、新卒採用にあたって知っておきたい労働関係の各種法律について概要を紹介しよう。

1. 職業安定法が基本

かつて職業紹介は、悪質な雇用主から労働者を保護しようという考え方のもと、政府が独占していた。その求人と求職者を結び付けていたのが、全国各地のハローワーク(かつては職業安定所といった)であった。新卒の採用においても、学校が学生に無料の職業紹介をするということが認められてはいるが、学校は当然、行政(厚生労働省)の管理下にあった。

近年、求人広告の飛躍的な発達や民間の職業紹介会社の発展、派遣労働法の成立などにより、求人活動の制約緩和や手続きの簡素化が進んだ。とはいえ、最近でも一部の企業の新卒採用で見られる委託募集(労働者を雇用しようとする者が、その被用者以外の者をして報酬を与え、労働者の募集に従事させようとすること)が制限されていることは注意しておきたい。これは、会社説明会の外注、面接代行などいわゆるアウトソーシングをするときに問題になる。会社説明会や採用面接は常に会社側が主催し、採否決定は必ず会社の責任者が行うことが求められる。

2. 雇用均等法は、必須知識

新卒採用においては、男女雇用機会均等法関係が重要だ。

20数年前に施行され発展してきただけに、法律だけでなく省令や事例も豊富で採用担当者には必須である。内容は、ほとんどが性差別に関することである。男女を問わず、募集広告表現、募集職種、面接選考の3分野で配慮しなくてはならないことが規定されている。昨年も、一定の職種(総合職、一般職等)について、募集や採用の対象を男性のみ、女性のみとすることへの禁止について省令が出されている。

採用、有期契約採用、就業規則の変更、解雇については、今年から施行された労働契約法が重要だ。これまで労働契約についての法律はあいまいで、個別の判例などで運用されてきた。そういった労働契約に関するルールを立法化したものである。ぜひ、概要を理解しておきたい。

3. 内定取り消しの判例は常識

採用担当者の必須知識が、“内定取り消し”の法理。重要判例としては、昭和54年の大手印刷会社の事件が有名だ。この事例で、最高裁は内定者について「解約権留保付であるとはいえ、卒業後の就労を期して、他企業への就職の機会と可能性を放棄するのが通例であるから、採用内定者の地位は、一定の試用期間を付して雇用関係に入った者の試用期間中の地位と基本的に異なるところはない」と判示した。これによって今日では、採用内定者を“労働者に準ずる者”として保護するため、採用内定者と使用者との間には解約権留保付労働契約が成立しているとしている。

こういった、内定者の法的地位を明らかにしたのが労働契約法である。解約権留保付労働契約は、書面による採用内定通知の交付と承諾書の提出があいまって成立するとの考え方が主流だが、標準的手順に合致しない中途採用も含めて、採用手続手順をきちんと見直す必要が出てきた。

この点、最近の新卒採用で見られるような口頭による内定通知、内定者の拘束、内定確認書の早期提出、研修参加は、学生による承諾という意思表示と見られるため労働契約が成立しているといってよく、内定者は、労働者に準ずる者となる。そうなると、内定取り消しについては解雇と同様の要件が必要となる。つまり、社会通念上特別の事由(卒業できない、不祥事を起こした、経営環境の激変)がない限り内定を取り消すことはできない。例えば、内定期間における研修成績不良などを理由として、内定を取り消すことはできないということだ。なお、5月頃に提出される内定確認書と、10月1日に提出される内定誓約書は、提出時期に関わらず効果は同じである。

このほか2007年より雇用対策法が改正されたことも注意したい。従来、募集及び採用にかかる年齢制限は「努力義務」とされていたが、年齢制限を設けることが原則禁止となった。ただし、これも合理的な理由があれば例外的に年齢制限が認められる場合もある。なお、「来年3月卒業予定の方を募集」のように、新規学卒者のみを募集する場合は、年齢制限には該当しないという。

さらに、法律ではないが「倫理憲章」もそのルールのひとつであることを忘れないでおきたい。これらは、すべて採用担当者の基礎知識である。

(2008.05.26)

【2008年7月】 人事部と採用業務

1. 人事部門の主な業務

人事異動の季節も終わり、新たに人事部門に配属された人も多いだろう。そこで、改めて人事部の役割と仕事のやりがいを考えてみたい。

一般的に人事部門の業務とされるのは、下記のようなものである。

  1. 人事企画=人事戦略、人材ポートフォリオ設計、人事制度の策定
  2. 人事管理=人事考課、昇進・昇格、出向・転籍、退職
  3. 人材開発=教育、研修、自己申告制度、留学、キャリア教育
  4. 採用=新卒、中途、採用計画、派遣社員管理、アウトソーシング
  5. 労務=労働時間管理、安全衛生管理、休日・休暇、解雇、育児制度
  6. 福利厚生=社会保険、社宅管理、健康管理、メンタルヘルス
  7. 賃金=給与振込み、社会保険手続き、退職金、企業年金

しかし、これは機能面から整理したもので、企業の人材戦略としての重要度は、人事企画、採用、人材開発、人事管理という順番になる。

2. 採用は人材マネジメントの出発点

かつて労使関係が対立している時代においては、労務管理が重要であった。その後、経営環境の変化とともに人事考課が重視される時代もあったが、現在では、新卒・中途を問わず、人材の採用が重要視されるようになった。そのため、経営トップ自らが採用戦略を決定し、人事部門だけでなく全社を挙げて採用活動に取り組む光景が見られるようになっている。

経営者へのアンケートにおいても、優秀人材の採用は、大企業、中小企業ともに共通した課題となっている。いまや人材採用は、戦略的な人材マネジメントの重要なテーマとなっている。つまり採用業務は、全社的な人材マネジメントの出発点なのである。そのため人事部門の採用担当者は、要求する人材要件を明確化し、人材をどこから招くか(新卒、中途、スカウト、社内募集など)、目標人数、採用するための活動計画を立案する。

3. 採用担当者のやりがいとは

では、人材を採用する採用担当者のやりがいは、どんなところにあるのだろうか。

まず挙げられるのは、「経営戦略の一端を担う」ということである。技術者の採用や経営幹部の採用となると、企業としてどの部分を戦略的に強化しようとしているのか、企業の強みと弱み、これからどこに進もうとしているのかなど、経営トップと連携しながらの活動となる。ゆえに、経営戦略が手にとるように分かるのである。

次に挙げられるのは「次世代を担う若手社員を選考できる」ということだ。これは主に新卒者採用の場合である。現場で人手が足りないから採用するというケースもあるが、次世代の経営幹部候補として採用する場合もある。若者の真摯な姿勢や熱意は、担当者自身をも元気にしてくれるはずだ。新卒の学生は就活の中で成長するといわれているが、採用担当者も、やはり成長するのである。

3番目は、「企業と経営トップを演出できる」ということである。新卒採用においては、学生は経営者や社風、そして若手社員の表情を見て入社を決意するといわれている。社長、役員にも入社案内やホームページ、会社説明会に出てもらわなくてはならない。採用担当者はその演出者であり、時には経営者をアピールすることもある。この作業を通じて、社内の各部門を知り、人間関係も深くなる。全社員で若者に情報発信をするのだから、気持ちは一致している。こうした社内人脈のネットワークは、採用活動を離れても有効なものとなるだろう。

4. 採用選考は自己成長にもつながる

採用選考では、人材を見抜く力を身につけることができる。自分にとっても大きな刺激であり、自己成長にもなる。採用担当者を経験すると若返るというが、それは若者を相手にしていることだけでなく、熱意と意欲に満ちた若者を見出し、共に自己成長するからでもある。

このように、人事部の基本的な機能は人材の採用であり、社内各部門への人材配置である。それも、目先の業務に対して間に合わせの配置でなく、組織を活性化するような戦略的な人材配置を実現してゆくことが重要になる。これが実現されてこそ、企業は発展する。採用担当者は、採用のプロをめざすだけでなく、企業における人材ポートフォリオをにらんで採用と配置をしていく「経営的な視点」を、常に求められていることを忘れてはならない。

(2008.07.31)

【2008年10月】 大学生の学力格差は、拡大する

若者の人数が減少しているが、大学生の人数は減っていない。大学への進学率が年々上昇しているからだ。

昨年の進学率は50%を超え、高学歴化は一段と進行したが、大学生の学力低下は拡大している。新卒採用では、こうした学力低下にどう対応したらよいのだろうか。

1. 学力低下 2つの側面

学力低下には、2つの面がある。1つは「学力水準の低下」である。専門科目を語れない、卒論が要約できない、というのはまだ良い方で、漢字が書けない、作文が書けない、語彙がない、簡単な計算問題ができないなど、基礎学力がないのである。これは、人事担当者であればいくらでも指摘できる事実だ。もう1つは、「学ぶ意欲の低下」である。今、この「学ぶ意欲の低下」が問題となっている。大学教員方の嘆きを聞けば、その実態がよくわかる。「教科書を買わない」「ノートをとろうとしない」「授業を聞いていない」といったことである。当然、学力が身につくことはないし、専門科目を語ることもできない。

こうした現象が、全国の大学の半数以上で起こっている。社団法人私立大学情報教育協会の調査によると、「授業で直面している問題点」を大学に聞いた結果、圧倒的に「基礎学力の不足」、「学習意欲の低下」が指摘されていた(「平成19年度 私立大学教員の授業改善白書」)。そのためか、多くの大学では中学・高校の国語、数学、英語の基礎教育に取り組むようになった(リメディアル教育)。

学力低下の原因は、ゆとり教育と大学の乱立、進学率の上昇に求められる。ゆとり教育の問題は措くとして、進学率上昇の理由としては、本人が希望しないのに大学に入学するケースや、大学の乱立により無試験入学制度(AO、推薦制度)が急拡大したことなどが挙げられる。筆記試験では測れない高い資質を持った学生を入学させたいとする制度が、安易な学力不問や学生募集の青田買いの方法として使われている。大学によっては、推薦やAOで毎年数百人を入学させる大学もある。こうした無試験入学が常態化している大学は、「Fランク大学」といわれている。応募者が少ない、不合格者が少ないということで偏差値が出せないボーダーフリーということだが、誰でも入学できるフリーパス大学と解釈してもよい。なにしろ全国の大学の47%が定員割れという現状では、応募者数を落とせば、大学側も経営的に厳しくなるからである。

2. 就職力の高いF大学

しかし、こうしたFランク大学のなかでも、就職では大いに頑張っている大学もある。それぞれの教育方針で学生を鍛え、入学時の偏差値以上に学生が成長したということで経済雑誌や週刊誌で話題になる大学がそれである。大学の学長以下教職員が、教育や就職指導に熱心なのである。求人難の現在、採用担当者からすれば“隠れた人材”がいるのではないかと期待をかけたいところだ。学校秀才ではない、尖った人材や異色の人材がいるかもしれないと期待される。

実際、着実に大手企業への就職者を増やしている大学もある。これは、企業の期待にこたえて大学の就職担当者が学内の優秀人材を選りすぐり、戦略的に就職指導をしているからだ。これに対して、一般的なFランク大学は、教職員のまとまりに欠けており就職先にも特色がない。地元流通業(コンビニ、自動車販売、メガネチェーン)、地元サービス、地元中堅メーカーがほとんどだ。意外なのは、求人数の比較的多い証券、商品取引、外食産業、情報業界への就職が少ないことである。

3. 人物重視がF大学の強み

こうしたFランク大学の特徴は、前述のように大学のキャリア支援が強力で、学生に対して早期から徹底的に就職試験対策を行っていることである。

だからといって学力があるのかといえば、そうではない。受験テクニックや場数を踏ませることに狙いがある。だから、応用問題や作文を出題するとボロが出る。ただ、採用する側も学力重視でなければ支障はない。むしろ採用基準は、個性であり、人物なのである。ここがFランク大学の勝負どころである。採用担当者にとっても、個性的な人材を育てる大学は魅力的なのである。このあたりを勘違いして、基礎学力のみを付けさせようとする大学が多いのは残念だ。

一般的なFランク大学のもう1つの特徴は、就職担当者が安定性や知名度のある企業にこだわることである。しかしこれは、採用方針や企業の実情をじっくり、継続的に話し合えば納得してもらえる。かつて学生の質の割合は、上から2.6.2といわれていたが、いまでは、中堅クラスの大学も質が低下し、2.3.5になっている。中間層がなくなり、多くがFランクに沈降しているのである。

採用担当者としては、どんなに遠隔地で無名なFランク大学でもこまめに訪問するべきだ。この残り5割のなかから、どのように魅力的な人材を発見するか。Fランク大学にも人材がいると信じて採用活動をしていくしかない。

(2008.10.15)

キャリアコンサルタント 夏目孝吉
キャリアコンサルタント 夏目孝吉

早稲田大学法学部卒業、会社勤務を経て現在キャリアコンサルタント。東京経営短期大学講師、日本経営協会総合研究所講師。著書に「採用実務」(日本実業出版)、「日本のFP」(TAC出版)、「キャリアマネジメント」(DFP)ほか。