採用現場ニュース2002(2002年の記事)

【2002年5月】 早期内定企業は、この2ヶ月が勝負

連休明けとともに第二波の採用戦線が開幕した。

1.  短期化する採用

既に大手企業(銀行、保険、証券、総合商社など)は、採用活動を終え、内定式も済ませているところがほとんどだ。これから活発に採用活動をしようとしているのが大手メーカーとIT関連の中堅と金融サービス(ノンバンク、ファイナンシャルサービス)。景気が悪いといっても若い人材を常に必要としているだけに活動は活発だ。もちろん早くから活動はスタートしていたのだが、応募者がさっぱり現れなかった。そこで今週からは、エントリーシートで企業セミナーを申し込ませ、セミナー当日に面接というハイピッチ。こうなると面接は連日になり学生は3日間の連日、出勤となる。

2. 新戦略!内定学生をねらえ

またNYテロによる景気後退のため採用計画が白紙となり手を出せなかった企業もようやく見通しがついたことから採用再開をした企業もある。これは、食品、商業、流通、サービス業に多い。依然として求人意欲が後退したままなのが半導体メーカー。こうした採用意欲がまだら状況という環境の下では、早々と内定者を確保している企業も安心はできない。新興ベンチャーをはじめ採用復活途上の大手メーカ(電機、機械、化学)と通年採用型のマスコミが動きだしているからだ。彼らの作戦は、未内定者より大手企業(銀行、保険、証券、総合商社など)に内定している学生だ。学生が内定している企業のウイークポイントは、的確に知り抜いているから攻撃はしやすい。それに、内定企業ですでにスクリーニングが済んでいるから内定までの面接は2回程度でOKとなり、誓約書をものともせずにスピード内定となる。

3. 内定者フォローを充実させよう

こうした後発企業の横取りがあるものの早期内定した企業にとって、防衛は6月末までが普通だ。これは、学生の気持ちからも限度だろう。学生は、相当に魅力的でない限り、さほど違いがなければ、いまさら違う会社に鞍替えする気になれないからだ。だからといって横取りへの有効な排除策はあるのだろうか。従来のような月1回の内定者ビールパーテイとか社内報の送付では安心できない。バブル期のような海外旅行という手もあるが、社内事情が許さないだろう。こうなれば、逆手にとって徹底した資格取得やTOEICなどのスキルアップをはかるのも良いかもしれない。将来への投資を支援するということで拘束するのだ。ほかにネットを活用してコミュニテイをつくる動きもある。あらたな環境下での知恵の出し合いといえよう。とにかく、早期内定した企業は、その因果でか、あと半年は内定者から目を離せないことになりそうだ。

(2002.5.24)

【2002年6月】 就職戦線02を総括する

Web採用がピークに達し、弊害も顕在化、あらたな採用方針が問われる。

大不況の中で開始された就職戦線02は、5月末日をもって大手企業については、採用活動を終了した。当初は、まるで予想がつかなかった企業と学生の動きだったが、終わってみれば例年同様のペースだったといえよう。ここで企業の動きを中心に総括をしてみよう。

1. 採用計画の遅れ

景気回復が遅れていたところにNYのテロ事件が勃発、企業は業績の下方修正が相次いだ。そのため例年のように企業のホームページが開設される11月には、ほとんどの企業は、採用するかどうかも未定のままにスタートした。これが就職戦線02の最も大きな特色だった。結局、採用計画が出揃ったのは、4月の上旬。採用活動のさなかだった。

2. 早期化がさらに進む

ホームページの開設、エントリーシートの受付、企業セミナー、面接開始、内定という採用活動のプロセスをみると、今年は、エントリーシートの受付のピークが2月中旬、内定は4月の中旬というのがそれぞれのピークだった。これは、5月連休明けに一斉内定で終了か、という事前の予想を見事に裏切りまともに説明会の開催を4月下旬や5月上旬に予定していた企業の期待を打ち砕くことになった。不況で採用人数が不明でも早期化が一段と進んだという奇妙な結果になった。これが今年の第二の特色だった。

3. 多すぎるエントリーに新たな選考方法が台頭

人気の旅行会社、マスコミ、銀行などは、エントリーシートが5万通に達するところもあった。こうしたエントリーシートの洪水に企業は、どう対応したのだろうか、外注はよいとして、大学名で選別、奇数番号だけ通過とかが噂される事態となっている。ある有名マスコミは、採用担当者に一人1日1,000枚のエントリーシートを読み、採点させたというが、1週間のノルマというから肉体の限界だったと担当者は、嘆く。そのためインターネットで応募者に能力テストを実施するというネットセレクションを採用する企業が登場した。その一方で、ネットでは、応募者が多すぎてほしい人材を選考するまで時間がかかりすぎるということで銀行、商社は、特定大学にリクルーター復活でピンポイント採用を再開した。20年前の採用活動復活である。一説では、有名保険会社が、この動きをしたため予想より半月前倒しになったのだと指摘する採用担当者もいるくらいだ。インターネットが発達しすぎた反動とも言える現象だ。

4. インターンシップ採用が定着

もうひとつが、採用直結インターンシップの広がりである、一昨年の某大手電機メーカーの試みは、採用担当者の注目を集めていたが、新しい採用方式として成果をあげた。さらに大学側や世間の批判もこれといってなかったので、今年は、有名企業は、採用直結型、採用関連型、採用準備型とさまざまなバリエーションで開催した。ミスマッチをなくし、人物をじっくり観察できるというメリットも評価され、さまざまな工夫でインターンシップを実施した。味をしめてか、今年の夏には、大手企業、特にメーカーがいっせいに募集することが予想される。新たな採用方法として確実に定着してきたといってよい。あとは、インターンシップの企画、内容に関するノウハウなどが新たな課題になったといえよう。

以上の4点が目に付いた特徴だが、学生の就職意識や行動は別の機会に報告しよう。

(2002.6.25)

【2002年7月】 どうするインターンシップ

昨年の採用活動で注目されたのは、インターンシップとコンピテンシー採用の2つ。

1. 注目されるインターンシップ

インターンシップとコンピテンシー採用の2つうち、インターンシップは、夏休みに実施するのがほとんどなので、次年度の採用活動を計画している採用担当者にとっていまの時期に、早急にインターンシップ制度を実施するのかどうか、その目的は、内容は、ということを決めなくてはならない。元来インターンシップは、「学生が在学中に、企業において自らの専攻や将来のキャリヤに関連した就業体験を行う」と定義されているが、実際には、採用直結型が注目されている。

これは、対象を大学3年生に限定、時期も3年の夏休みか冬休みに、1~2週間程度の職場体験をさせ、評価Aランクの学生には、採用シーズンになって、エントリーに応募すれば、内定を出すというもの。これを日本でも有数の電器メーカーが実施、「手応えがあった」と公言している。大学の就職部長も「就職のルールや学校教育を歪めるものになりかねない」と嘆くものの、これといった批判はほとんど無かった。それだけに様子をみていた企業も今年は、思い切って採用直結型に取り組んでみようと真剣に検討を始めた。

2. インターンシップの概要

しかし、この流れは、「企業として学生に企業とその仕事がどのようなものかを知ってもらう」というミスマッチ解消策の原則型でなく、いわば青田買いの手段としてインターンシップを利用しただけといってよい。こうした採用直結型と原則型の違いがそれぞれ、ありながら、多くの企業が、採用活動の一類型としてインターンシップ募集を7月下旬から開始するだろう。その概要は次のようなものになる。

時期 8月下旬
期間 1週間
日当 1日1千円~5千円
内容 各職場へのスタッフとして配属、職種別の場合はアシスタント業務
募集方法 大学就職部への掲示板、自社ホームページ、広告
選考方法 書類審査

3. インターンシップ導入の悩み

このうち採用担当者の関心事は、募集方法と選考方法だ。大手の企業でも募集人員は10人から30人程度だ。

ここに応募者は、3,000人ぐらいくる。こうなると、どのようにして選別するのか、多くは論文を提出させて判断するようだが、コンピテンシーの観点から選別したり、特定大学に限定したり、事業所別に募集、受け入れるところとさまざまだ。そして採用直結型となると限定募集は、許されない。本番と同様に広範囲から集めなくてはならない。

結局、この方式では、早期からスタートするだけに費用も手間もかけることになる。かくて、来年2月からの採用活動の前哨戦が今年の夏に展開されるのである。今年の採用で失敗した企業は、いま、本来型にするか、採用直結型にするか、インターンシップの導入にあたって、悩みは尽きない。

(2002.7.27)

【2002年8月】 職種別採用

採用活動も一段落し、今年の採用を総括するセミナーが毎週のように開催されている。

1. 採用戦略の策定にあたって

9月に入れば、予算を決定し、採用PR計画を決定しなくてはならないから、今の時期は来年の採用戦略を練る時期といえる。いま、多くの企業が採用戦略の課題としているのが次の3つだ。

  1. 採用計画人数
  2. 採用形態
  3. 採用活動計画

このうち採用計画は、新卒と中途採用の比率を考えながら採用予定数を決めていくことになる。なぜ、新卒を採用するのか、その期待するものは何か、しっかりと原点を考えておかなくてはならない。業績見通しが悪いから新卒採用は手控えようか、といった安易な姿勢は許されない。人材へのフィロソフィーを持たなくては成らない。採用人数は、採用予算や活動計画と密接な関係があるのだから、とにかく概数を決めていかなくてはならない。昨年のように10月から急速に世界経済が冷え込み、年末に採用計画の大幅な縮小があった例もあるが、とにかく決めておく。

2. 職種別採用の課題

次の課題は、採用形態である。通常の4月採用正社員だけでなく、契約型、派遣型、秋採用などの形態があるし、採用の仕方において職種別、カンパニー別とさまざまだ。最近は、職種別採用が増加していることも押さえておきたいポイントだ。学生のキャリア志向に対応する形で具体的詳細に職種をアピールして採用活動を展開するのだが、問題は、職種の名称が学生にはおよそ見当のつかないものが多すぎることである。この情報ギャップを埋めるものが求められている。

3. 採用活動計画に欠かせない情報収集

3番目の採用活動計画は、採用市場の分析と予測が必要だ。学生の就職意識が高まるのは秋の就職ガイダンスからで、年末に一斉にオープンする就職サイトで母集団を確保、年明けには個別企業セミナーがはじまり、学生を囲い込むというシナリオに異変はないか、もう一度分析しなくてはならない。そのためには、各社のインターンシップの動きや学校の行事それに就職情報会社の企画にも目を配っておく必要がある。例えば、大手の就職情報会社のように秋からの企業セミナーを毎週、開催し、参加企業のための囲い込みをしようというところもある。これにどう対抗するか、これまでにないユニークな就職イベント、採用PR企画など検討することは多い。

採用担当者にとって、夏休みを終えた8月下旬とは、こうした時期になりそうだ。

(2002.8.26)

【2002年9月】 大卒無業者の増加

今年3月の大卒者は、約56万人。

今年3月の大卒者は、約56万人。そのうち進学も就職もしなかった「無業者」は、11.9万人、率にして21.7%というから大卒者の5人に1人が無業者ということになった。これをマスコミは「働かない若者 急増」と警告している。

なぜ、このように無業者が増えつづけるのか、日経新聞は、これを求人数の減少、働く意欲の減退、パラサイト化(親への寄生)が広がったからだと分析している。しかし、ここは、日々、学生をみている採用担当者からの意見も付け加えておきたい。

採用担当者によると無業者になりがちなタイプは次の3つだという。

1. 学生生活が貧弱

学生生活において友人もなくサークルにも参加しなかった。ゼミに出ても出席するだけというタイプだ。語るべき学生生活がなく、就職活動に参加することも気後れしてしまった。そのため就職はしたかったが、タイミングがずれて就職のチャンスを失い、卒業してしまった。

2. 自己理解にこだわっている

自分が何をしたいかが不明確であるにかかわらず、自己理解にこだわる。多くの心理テスト、適性テストを受検するが、不安と不信が続く。人の意見は聞くが行動できない。こうして自信をもてないままに愚図愚図と悩みながら日々を過ごして就職シーズンを終わってしまう。

3. 親の意見が強すぎる

就職に親がアドバイスするのは良いが、親が高望みをするのと業界や企業への偏見が強く、子供の意欲をそぐ。本人なりに一生懸命に考え、活動をしているのだが、徐々に自信を失い、就職の機会を失っていく。最後は、親が紹介してくれる会社に応募しても簡単にはいかずに、親も1年くらいは面倒を見ようということになる。

4. フリーターの採用こそ企業の社会的責任

こうしたパターンが無業者にみられ、これが先の新聞記事のまとめとなるのだ。
もちろん、意図的にフリーターを求める学生も多い。会社に勤めたくない、自分で何かをしていきたい、資格試験や公務員、マスコミ、留学をめさすというものだ。この層が確実に増えているのも事実だが、これは、健全な現象で何ら問題にすることはないだろう。

ここで採用担当者に考えてほしいのは、フリーターの採用だ。無業者は、フリーターに姿を変え、就職戦線では、再び第二新卒、通年採用として再登場してくる。通年採用をしている企業では経験済みだが、新卒と比べてなんら遜色がないという。望みたいのは、フリーターに面接で意地悪な質問をすることなく、その前向きな姿勢を評価してほしい。これからの企業は、フリーターというインターンシップを経験した学生の受け入れに積極的に取り組むことが企業の社会的な役割になるのではないか。

(2002.9.25)

【2002年10月】 今年は、さらにネット採用が広がる

現在の大学生にとって日常のコミュニケーションは、携帯電話、そして就職活動は、インターネットでというスタイルがすっかり定着した。

1. ネット採用のプロセス

新卒採用において、ネット採用というのは、基本的な採用活動となっている。つまり、採用のプロセスのすべてで活用されているのだ。そのプロセスは、次の3つに分けられるが、すべてが効果的で経費節減になっているかといえば、逆のケースも出てきている。今回は、採用活動のスタートにあたり、こうしたネット採用の実情まず、採用の3つのプロセスから紹介しよう。

  1. 情報提供
  2. 応募受付
  3. 選考

2. 情報提供の工夫

現在、企業情報をネットで提供するというのは、大手企業は、100%近く、中堅でも過半数が就職サイトや自社のホームページで実施している。そこで、問題は、いかにして学生から検索されるかである。従来のガイドブックならパラパラとページをめくっていて偶然に目にとまることもあるが、ネットでは、そうした偶然はない。知名度のない会社、社名の難しい会社、社名のややこしい会社は、検索どころかクリックもされない。有名大企業が圧倒的に有利なのがネット採用なのである。これに中堅・中小企業はどう対抗するか、採用対象の大学を絞り込んで、eメールのダイレクトメールを打つことしかない。それもホームページを見てほしいという内容では、駄目だ。自社の魅力をキャッチフレーズとして訴えたり、動画を使う、企業セミナーの案内をするなどの工夫と仕掛けが不可欠だ。当然、これは費用がかかる。

3. 応募受付の工夫

次が応募者受付すなわちエントリーの受け付け方だ。人気企業で5万人、一般企業でも数千人が応募してくる。このためエントリーを受け付け機能だけでなく、選考機能を持たせることが進んでいる。自社についての理解度をeラーニングの手法でセレクションすることから、志望動機の確かさを基準に選別する方法、性格検査やコンピテンシーで選別する。大手企業は、大学名で選別するのではないかという不安に、この方式で誤解を避ける工夫もしている。この選別機能を徹底して面接で質問する項目を次々と繰り出す企業もある。なかには、会社説明会のCD-ROMを配布して質問に答えさせる企業もある。これは、ブロードバンド時代への選考準備という話だ。

4. 選考の工夫

ネット採用の極致が選考・面接である。

エントリーの受け付け方からシームレスな関係になったのがネットを使った選考だ。ネット選考を掲げる企業は、10社近くある。これは、能力・適性・一般教養をネット上で実施し、合格者は、面接に進めるというから、中間段階の選考となる。いずれも志望者の多い企業だ。企業からの疑問は、出題される問題の在庫量の豊富さと本人認証の問題だが、専門業者に依頼すれば、技術的には克服されているのでなんら問題はない。ことしは、こうしたネット選考の試みがエントリーシートの段階から導入されると見られている。その理由は、採用活動のピークが読みにくいことから、多くの志望者を迅速に選別し、早期からの選考・内定への準備をしておきたいということとエントリーシートだけで選別することへの批判を避けたいからだ。一般教養試験で落とすことのほうがずっと合理的だからだ。

こうなると、出題問題については、TOEICと同様にアダプテイブ型(受験者のレベルに応じて問題を出す。つまり問題が個人別)になることが求められる。いま大手企業の共通課題は、「ネット選考に革新的な工夫をして他社に差をつけたい」ことといわれ、積極的にコア人材を早期発見し、そのための新しい取り組みをしようと秘策を練っている最中だ。

(2002.10.26)

【2002年11月】 プレ採用戦線は、例年になく早かった

景気回復が見込めないままに企業は、新卒の採用シーズンを迎えた。

多くの企業は、採用計画未定のままで突入することになりそうだ。今回は、プレ採用戦線として9月から11月までの動きを探ってみよう。

1. 就職ガイダンス

まず、学生の動きだが、就職部は、夏休み明けの9月下旬から10月にかけて最後の就職ガイダンスを一斉に実施し、学生の自己理解の徹底をめざした。就職活動の出発点といえるこのプログラムは、各種ツールが開発されているので、年々、多くの大学で実施されるようになった。その内容は、日記風に書くものから、友人同士と交換して記入するもの、性格検査方式、インターネット上での診断形式などさまざま。就職指導に熱心な大学は、学校が自己理解のプログラムソフトを購入して就職希望者だけでなく1、2年生にも実施していた。

2. 採用戦線への備え

これが終わると、いよいよ業界研究。この時期になると業界の現状や将来性ばかりか、職種、採用方針、採用プロセスが報告される。そのため講師には、シンクタンクの研究員やジャーナリストが目に付く。これが、大手の私大の就職セミナーの典型。さらに11月になると個別の企業が主役となる就職セミナーとなる。講師は、人事担当者やOB社員となる。仕事内容、選考プロセスが中心だ。参加する企業のねらいは、母集団形成ということで、採用の基盤作りにとどまるが、いつ動くかわからない採用戦線への準備でもある。この時期になると国立大学の学生も動き出す。学校が何もしないので学生たちが、就職委員会を結成して企画するわけだ。たとえば、一橋大学は、10月16日、東大は11月5日に開催された。参加企業も20社に及んだ。こうしたセミナーへの参加する企業の数が増えたのがことしの特徴。

3. 来年は早期化する傾向に

そうして、12月を迎えて、いよいよエントリーシートの受付が始まった。こうしてみると、あきらかに昨年とは違って学生の動きは活発で、OB訪問も急増しているという。企業も早めの事前活動を強化しているといえよう。就職サイトのオープンは10月下旬と例年通りだったが、大手就職情報会社が、9月から有力企業を集めて業界研究セミナーを大々的に開催して早期化を煽ったこともあり、今年は、早期化必至になりそうだ。

(2002.11.23)

【2002年12月】 採用戦線来年の予測

採用最前線を伝える本メールマガジンは、新年を迎える来月から本格展開をする予定だが、年末までの前哨戦を振り返って来月(来年)からの新卒採用戦線がどう動くのかを予測してみよう。

1. 抑制気味の採用計画

まず、採用計画。もちろん、対象となるのは、2004年4月入社者ということだが、例年なら12月ともなれば、おおよその採用人数は決まるものだが、今年は、まるで決まらない。景気の低迷により採用人数未定あるいは、採用中止という企業が目につく。NTT東日本が4年ぶりに採用を再開したものの大手の情報通信系が新卒については、抑制気味だ。人気業界だけに学生の失望感は大きい。これは、総合電機においても同様で新卒を抑制し、経営環境が改善されれば、中途採用でカバーしようという企業が増加している。やや明るいのは、業界の勝ち組企業、たとえばソニー、ホンダ、トヨタ、資生堂、P&Gなどは、同様に採用数は増えないものの優秀人材への採用意欲を見せ、採用PRも活発だ。これに比べてさえないのが金融とくに銀行だ。かつては、大量採用と早期採用で採用戦線のペースメーカだったが、事前のリクルーターの活躍も見られない。メガバンクとなり採用数も前年と単純比較はできないが、抑制した数字になるのは確実。

2. 熾烈な優秀人材の採用戦線

こうした大手企業の混迷と対照的なのが、新産業というべき住宅サービス、飲食チェーン、パチンコ・レジャー、消費者金融なかでも教育・医療・経営サービスの業界は、大量採用を打ち出し、きわめて意欲的だ。しかし、こうした業界は、経営の実態がつかみにくいことと離職率が高いのが大学就職部の不安。こうした現状から大手企業の採用数は、昨年比1割減ぐらいとなりそうだが、上位10%の優秀人材に対する採用活動は、一段と熾烈となり、その他大勢の学生と多くの中堅企業は採用活動が長期化すると見られる。

3. 安定性志向の学生

一方、学生の就職動向だが、「安定性志向」がますます高まり、人気企業もブランド志向となりつつある。そのため勝組みとなった経営の安定している有名メーカーが人気を集め、一段と革新的な企業やグローバル企業の人気は後退しそうだ。その典型が金融とくに銀行、証券、コンサルテイング会社の企業セミナーにみられる。これらの業界は、先行き不透明感と合併、提携と経営環境の混乱と採用体制の遅れ、それにこうした「きびしい選考基準」ということで敬遠されたようだ。

4. 早すぎた前哨戦

前哨戦をみるにあたって大事な企業の事前活動はどうだったろうか、ことしは、大手の就職情報会社が有名企業を取り揃えて9月から毎週、連続して業界セミナーを開催したのが論議をよんだ。このセミナーは、大学関係者からは、「商売とはいえやりすぎだ」と猛反発をうけたものだ。このため学生は9月からリクルートスーツに身を固めることになった。しかし、実際には、このあと採用戦線は停滞、早期化すると予想したが不発に終わった。いくら人材の早期確保といっても企業にとっても学生にも早すぎたからだろう。

5. 例年並みの内定時期

また、今年は、前哨戦として注目する動きがあった。それは、エントリーシート(ES)の取り扱いだ。多くの企業では、10月からは、ESの受付、採点、連絡に忙殺されいたが、ことしは、ESを2段階にする企業が増えた。単に登録するだけのものと課題提出した学生にのみエントリーさせるESだ。その課題とは、小論文や能力テスト、会社知識確認テストとさまざまだが関門を課したのである。かつては、母集団確保ということで数を集めることに重点があったことからの転換である。これによってじっくりと面接や選考の案内ができるということになった。

このように前哨戦は、採用計画未定という環境もあって予想より早期化にはならず、やはり1月中旬の企業セミナー、トップ企業の3月上旬内定、中堅企業の5月中旬内定という当初の見通しになることを示したように思える。

(2002.12.26)

キャリアコンサルタント 夏目孝吉
キャリアコンサルタント 夏目孝吉

早稲田大学法学部卒業、会社勤務を経て現在キャリアコンサルタント。東京経営短期大学講師、日本経営協会総合研究所講師。著書に「採用実務」(日本実業出版)、「日本のFP」(TAC出版)、「キャリアマネジメント」(DFP)ほか。