2019年1月 ことしの採用、4つの課題

■20卒の採用が始まる。新卒の求人ブームは相変わらずで来年も企業の採用意欲はますます旺盛だ。昨年末に発表された「ワークス採用見通し調査」(リクルートワークス研究所)(※1)によれば、大卒採用が前年より増えると回答した企業は13.8%と高水準が続いている。こうした採用環境の中で、2019年、企業の新卒採用にはどのような課題があるのか探ってみた。

課題1.採用スケジュールの確認

企業、学生ともに毎年、最も気になるのが採用活動の展開フロー。昨年秋、指針を廃止すると経団連が発表したが、それは2021年卒の話。今年は昨年同様、3月1日説明会解禁、6月1日選考開始が基本ルール。多くの企業は、今年も指針に沿って採用活動をするとみられているが、すでに指針はなくなったとばかりに公然と早期内定を出す企業が出なくもない。だが、その動きはごく一部にとどまるだろう。採用担当者としては、就職人気が高く採用人数が多い企業(金融や食品、航空など)の動きを注視しながら採用活動を柔軟あるいは臨機応変に展開していくことが課題だ。

課題2. SNSを活用した採用活動への対応

スマホ全盛時代。機器の機能向上だけでなくアプリも豊富で学生の就活にとっては必需品となった。会社説明会の案内・申込み・企業情報入手・地図表示・エントリー・Web面接など学生の就活にとってスマホは、企業との接点として重要性を増してきている。こうしたスマホ活用では、学生相互のSNSの活用が企業の課題だ。関心を持った学生だけでなく、その友人を誘わせるというアプローチだ。友人も一緒に企業セミナーや懇談会に参加させようという誘惑である。優秀な学生の仲間はやはり優秀だからだ。そして応募にあたっては、学生相互で企業分析が行われる。その媒介がLINEなどで、本音ベースで緊密に結びついている。これからの懇談会シーズンにあたって、関心を持った学生が友人を誘って応募するSNS活用の採用に取り組む、これが第二の課題である。

課題3.離職させない採用

いわゆるミスマッチなき採用ということだが、ここ数年、企業における若年者の離職率が高まっている。苦労して採用した優秀な学生ほど早期離職しているという。その原因は、職場の風土、人間関係、会社の将来に対する不安などが理由というが、本心は、違うだろう。「辛い思いをして働いた割に、給与があまり良くない」「思っていたより厳しい仕事だ」「先輩社員がていねいに指導してくれない」といった理由だ。
それというのも求人難を反映してインターンシップや会社説明会では、会社は花形部門や優秀な人材のいる部門を見せて、学生をチヤホヤする。そのお客さん気分のままで入社すると地味な部門や厳しい上司のもとに配属されたり、思っている以上にきつい仕事に就くことになって愕然となる新入社員も少なくない。頑張っても簡単には成果は出ない。そこでストレスを抱えることになる。そして手元のスマホには、大手企業や有名企業からの求人メールが毎日のように届く。多くの多彩な企業が勧誘している。若年者の転職が容易なのである。採用担当者の課題は、様々な角度からの面接でミスマッチをなくそうとしているが、時には、仕事の目標、社員の役割、求められる責任と能力、ライバル社員との競争などを学生に見せる採用活動も必要なのではないか。1月下旬から始まる若手社員と学生との懇談会や質問会では、そんな試みをしてはどうだろうか。

課題4.通年型採用への対応

新卒一括採用からの脱皮、ということで話題を集めている通年採用。終期のない採用である。先の経団連の指針撤廃の根拠にもなっているが、その狙いは悪くない。建前は、採用窓口をいつでもオープンにして優秀な人材がいれば、随時、採用しようというのである。前掲の「ワークス採用見通し調査」でも19卒の採用活動では、10.7%の企業が通年採用を予定しているという。しかし、通年採用をする理由は、「多様な人材を確保するという企業は18.8%に過ぎず、「採用目標人数を確保するため」という企業が73.5%を占めている。経団連の期待とは異なり、求人ブームで新卒が予定通り採用できない、やむ得ず通年化しているというのが実態だ。この通年採用は、企業にとってはかなり負担だ。採用担当者は採用活動を終わらすことができず、通年で働き、選考体制も維持し続けなくてはならない。しかし、採用目標数を達成できていない企業は、夏以降でも窓口を閉めるわけにはいかない。そんな体制づくりも課題だが、多様な人材を随時採用するためには、従来とは違った採用広報や選考方法の抜本改革にも取り組む必要がある。経団連のねらいもそこにある。一括採用からグローバル採用である。議論はこれからだが、大きな課題である。

*このほか20採用に向けては春インターンシップの運営、データサイエンティスト時代を意識した新たな採用基準、AI採用の試みなどが課題としてあげられるが別の機会に取り上げよう。