採用現場ニュース2018年09月

19採用を総括する

■9月下旬から20卒の採用活動がスタートする。来年の採用環境は、どう変わるのか、学生の職業観や企業の採用手法、インターンシップの変化、採用ルールである指針の存廃など、来年の採用活動のために今回は19採用の総括をしておこう。

1.予想以上の採用増だった 
企業の新卒採用は2010年以来毎年増加、今年はさらに増加となった。リクルートワークス研究所の調査によれば、求人数81.4万人に対して就職希望学生数43.2万人で求人倍率は、1.88倍だった。この求人倍率は、昨年の1.78倍を上回り、7年連続の増加となった。これは、日経新聞や就職情報会社の採用計画調査でも同様で、すべて前年対比増加となった。つまり、求人ブームが一段と進行、学生にとっては、圧倒的な売り手市場となったのである。

2.採用計画未達企業が増加
企業の採用意欲が旺盛になったことで、当初の採用計画を達成できない企業が続出した。先の調査でも明らかなように産業界全体では、新卒者の約38万人が不足となる。長期にわたる求人ブームの影響で学生に知名度がない企業、地味な中堅製造業、人気のない大量採用企業などは、毎年採用計画数が充足できていない状態だ。そのため流通、外食、介護、陸運など労働集約型の企業のなかには、事業縮小、出店計画の見直し、新卒から中途採用への転換、勤務形態の変更など経営難に追い込まれる事態となった。

3.インターンシップが早期、多様化
指針の改定によって1dayインターンシップが容認された。このことによって本来の就業体験型だけでなく会社説明会型、採用選考型などのインターンシップが早期から開始され、学生の就活が前倒しとなった。とくに今年は、早期のインターンシップが多様化し、就業体験だけでなく面談、就職アドバイス、若手社員との交流などプログラムが多様化し、現行指針の下では、早期に学生と接触できる有力な採用手段として急増した。

4.選考スケジュールは遵守された
早期からの企業と学生の接触は活発だった。だが、3月1日以前の内定は少なく、採用情報の公開日も意外なほど遵守された。多くの大学や企業が、説明会を同日からスタートしたからだ。しかし、それからは面談会、懇親会、グループワークなどが大盛況だった。その流れは、4月下旬から5月中旬には、社員との面接会となって内々定の示唆をするところまで進んだ。だが、多くの企業は内定を出すことなく、6月1日の人事面接への出席を求めた。そして人事による採用面接は、6月1日から開始された。その結果、今年の内定ピークは形式的には6月以降がほとんどとなった。形式的だが、指針は遵守されたのである。

5.内定辞退増加でミスマッチ急増
求人ブーム、採用活動の早期化、短期集中という就職環境では、重複内定が増加するのは当然だった。学生は、志望先を十分に絞り込まないうちにエントリーし、面接に臨み、誰もが「御社が第一志望です」と断言する。そして各社から一斉に内定が出され、最終決断が迫られる。もともとが、なんとなく興味があった、就活スケジュールにあっていた、滑り止め、といったような理由だったのだから、本命の企業から内定が出れば辞退となる。人気企業や大手企業より内定を出す時期が遅いため、滑り止めにされた企業の被害は甚大である。そんな内定辞退が今年も昨年以上に増えた。

6.採用時期が複線化 
新卒は、春に採用するという企業がほとんどだが、ここ数年は、年1回だけでなく、6月、夏、秋、通年と採用時期が複線化してきた。その背景には、ワンチャンスではよい人材が採用できないという理由のほかに留学生、秋卒業生、理工系学生、外国人、既卒者など採用対象者の多様化に対応しているからだ。こうした新卒 採用の多様化は、時期だけでなく、採用対象者をグローバル人材、理数系専門人材、IT人材などに人材を高度化する動きも増えた。このほか、最近、金融機関で増えてきた地域限定型も注目された。しかし、今年は、この地域限定型採用は、金融機関が採用を手控えたので後退したが、長期的には、製造業やサービス業で増えていくだろう。

7.AI採用本格化へ 
昨年からAIを活用した面接やエントリーシート審査が一部の企業で登場した。採用の効率化、評価の客観化、経費削減に有効ということで企業の関心は高く注目を集めた。大学や学生の側からは、多数の応募者に偏見なく評価がされる、遠隔地の学生にもチャンスが与えられる、就活がスピードアップできる、と歓迎の声もある。一方で、人に丁寧でないとか、人間味がない、学歴フィルターを隠ぺいする道具だ、などと警戒する声も少なくない。今後は、技術的な改良だけでなく、採用選考のどのプロセスでAIを使用し、選考基準は何かを公開することで徐々に普及するとみられている。

8.指針崩壊
今年は、夏まで指針が話題にならなかった。だからといって指針が遵守されているとは思えないが、議論がむなしくなったのだろう。大手就職情報会社の調査では、当面は現行ルールでよいとする意見が企業の大多数を占める。守れないルールでも、あるだけで抑止力になるからだ。ところが、今年の9月経団連の中西会長は、「21年春から指針を撤廃する」と爆弾発言。だが、この指針は政府が閣議決定したものであり、大学側もようやく賛同したものだ。これから企業や大学からの議論が活発になり、指針が廃止されるかどうか、見通しは不明だ。

キャリアコンサルタント 夏目孝吉
キャリアコンサルタント 夏目孝吉

早稲田大学法学部卒業、会社勤務を経て現在キャリアコンサルタント。東京経営短期大学講師、日本経営協会総合研究所講師。著書に「採用実務」(日本実業出版)、「日本のFP」(TAC出版)、「キャリアマネジメント」(DFP)ほか。