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採用現場ニュース2018年05月

人気企業ランキングの読み方

大学生の就職人気企業ランキングが発表された。今年は、三井物産、ソニー、日本生命などが大学生たちの人気を集めた。この調査は、大手就職情報会社が2019年3月卒業予定の大学生を対象に行ったもので、来年の採用活動にも影響を与えるものとして企業や学生にとって気になる調査といわれている。しかも、これらの調査は、主要経済誌などで特集記事として大々的に掲載される。それだけに学生や採用担当者だけでなく経営トップや社会的にも注目されている。
主要な調査結果を発表順にみておこう。

まず、週刊ダイヤモンド4月7日号。
「就職人気企業ランキング 激しさ増す学生獲得競争」として特集、文系男子の上位10社をみると①三井物産②三菱商事③伊藤忠商事④東京海上日動⑤住友商事⑥三井住友海上⑦日本生命⑧大和証券グループ⑨豊田通商⑩森ビルとある。総合商社が上位を独占した。
同誌の解説によれば、世界を舞台に活躍できる商社マンに対する学生のあこがれが強いことと採用活動のきめ細かさが人気の背景にあると説明している。従来、上位を占めていたメガバンクは、マイナス金利政策による経営環境の厳しさやシステムの統合化による人材削減、採用減などが影響してか、ベスト10から姿を消したという。森ビルがベスト10に入っているのは2020年の東京五輪を控えていることや最近の大規模な都市再生プロジェクトが学生の人気を集めたからという。

これに対して、4月下旬に発表された日経新聞4月24日号の調査はバランスが良い。「文系は航空・旅行、理系は食品が人気」として、文系男子の上位10社は①ソニー②東京海上日動③伊藤忠商事④JR東日本⑤アサヒビール⑥全日本空輸⑦JTBグループ⑧損保ジャパン日本興亜⑨トヨタ自動車⑩バンダイナムコ。東京五輪を背景にインバウンド需要やコト(出来事、体験)消費を担う航空、旅行、レジャーの人気が高かった。ソニーのトップについては、業績の急回復だけでなく採用PRの工夫、採用方法の柔軟化、待遇改善などで人気が集中したと解説している。

これらの調査とはやや違う結果が東洋経済オンライン(4月20日号)。「ANAが2年連続首位、金融離れはまだ見られず」というのがタイトル。男子の上位10社をみると①日本生命②みずほFG③全日本空輸④バンダイナムコ⑤野村證券⑥SMBC日興証券⑦大和証券グループ⑧りそなグループ⑨三菱UFJ銀行⑩伊藤忠商事。トップとなった日本生命については、採用広報やグローバルビジネスへの積極姿勢が学生に評価されたと解説、上位企業10社のうち7社が銀行、保険、証券が占めていることから、従来から学生に根強い金融人気は依然として後退していないと指摘している。

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▼今年の結果は以上のとおりだったが、採用担当者としての受けとめ方は、次の3つだろう。
最も多いのが、そこそこ気にしてランクアップを目指すという受けとめ方。上位にあるなら喜ぶが下位でも冷静。どの程度、学生に企業名が知られているかを知ったうえで少しでも上位に上がろうとして採用PRや採用活動を見直す。人気企業ランキングは一般学生の就職観や就職行動を知る手掛かりとして活用する姿勢だ。50位から100位ぐらいの採用人数が多い有名企業に多い反応だ。

次に多いのがランキングの順位を重視して一喜一憂する。これはランキング上位50位以内の企業に多い。学生からの人気が高いのは当然と受けとめているが同業他社やライバル企業には負けたくないと思っている。こうした企業は、採用担当者より経営トップの関心が高く、採用責任者も真剣だ。とにかく上位であることを重視する。そうなれば調査対象者や調査方法への関心はない。案外、こうした企業が少なくない。

これらと違って、ランキングを無視する企業もある。その一つは、上場しているものの、一般には知られていない地味な巨大メーカーである。これらの企業は、新卒採用を積極的に行っているが、BtoBあるいは素材メーカーで業界内では知られているのだが、世間一般、とりわけ学生には知られていない。だからランキング150位にも入らない。しかし、こうした企業は、採用PRや選考方法を工夫すれば100位前後には浮上するのだがそれをしない。そこまで学生に媚びる必要はないというプライドがあるからだ。そのため採用活動では毎年苦労している。

もう一つの無視派は、外資系の金融、コンサルティング、IT企業だ。これらの企業は、採用人数が少なく、採用対象も東大、京大、早慶のトップクラスの学生が中心だ。そのため全国各地の大学生を対象としている上記の人気ランキング調査には関心がない。多くが100位にも入らないが、人気がないわけではない。東大や京大の学生を対象とした人気企業ランキングでは、常にトップに入っている。P&G、ボストンコンサルティング、マッキンゼー、ゴールドマンサックスなどの企業だ。これらの企業は、実際には、意識の高い優秀層をしっかり採用している。上記の調査でも大学別に分析するとこの実態が見えてくる。

▼このように就職人気企業ランキングに対する企業の反応は様々だが、この調査そのものに対する批判も根強い。企業を知らない学生の人気投票だといって批判する意見だけでなく、調査方法や統計処理に対する批判もある。
例えば、これらの調査が就職情報会社の就職サイトの会員学生を対象にしていることや、特定企業の就職イベント時のアンケート結果などが指摘されている。

なかには記載企業を8社にまで水増しして投票させる調査もあるが、最も不信を招いているのは詳細データを発表しない調査があることだろう。どの企業にどのような学生が投票し、その選択動機がどのようなものだったかを明らかにしない。ランキングの順位だけの発表で分析はゼロというわけである。企業にとって何ら活用できない調査である。これでは、企業を知らない学生の人気投票にすぎないと批判されても仕方ない。

このように就職人気企業ランキングは、一部に調査対象や調査方法にあいまいな点があるものの今日、一般学生が抱いている企業への関心や人気企業のプラスイメージがどのようなものかを知ることができる。
また、人気順位変動は、昨年度の採用活動の評判をも反映する指標ともなっている。説明会や面接などの印象がストレートに学生に反映されているからだ。また人気企業だということで学生の応募が増えるということも無視できない。注目の企業、話題の企業ということで挑戦しようという学生が少なくないからだ。

人気ランキングに顔を出すことは悪いことではない。採用活動にはプラスだからだ。だからといって一喜一憂することはない。上手に活用したいものだ。

【掲載日:2018/05/09】

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景気によって大きく変動する「採用」の実態を、企業と学校、それぞれの視点でとらえ、一歩先のトレンドをお伝えします。
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キャリアコンサルタント 夏目孝吉

早稲田大学法学部卒業、会社勤務を経て現在キャリアコンサルタント。東京経営短期大学講師、日本経営協会総合研究所講師。著書に「採用実務」(日本実業出版)、「日本のFP」(TAC出版)、「キャリアマネジメント」(DFP)ほか。

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