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採用現場ニュース2018年03月

採用担当者の質問力を確認する

3月1日、就職情報が解禁された。全国各地の大学やホテルでは会社説明会が連日、開催されている。どの会場も多くの学生が押しかけ企業に様々な質問をして企業研究を深めている。そして6月には選考活動も解禁され、企業と学生の人事面接が解禁される。最近は、WEBによる会社説明会やエントリーシート審査、能力・性格テストが増加しているが、最終的な人物審査となれば依然としてリアルな面接の役割が大きく決定的だ。そうした面接シーズンを迎えて採用スタッフの基本的な面接ノウハウや心構えは十分だろうか。4月以降の採用活動のためにもう一度、最終確認をしておこう。

▼面接が人物判定において最重要であることは説明するまでもない。面接者は相手にさまざまな質問をすることで相手を理解し、その人物の魅力を知る。これはエントリーシートや能力・性格テストでは見抜けないものだ。だが、その大事な面接を担当する企業の面接者は、専門家というわけではない。多くは、採用シーズンに動員された助っ人だ。そのため面接者は、あらかじめ用意された質問項目に沿って質問し、その回答ぶりを評価するだけ。その評価も標準化には苦労している。そして標準化を進めるほど、人材が画一化して面白い人材や異能の人材が採用できない。そのため最近の面接選考では、個々の観察項目を評価するのでなく就職の基本軸がしっかりしているか、伸びしろのある人材か、一緒に働きたいか、自分が育ててみたいか、という感触を大事にするようになった。曖昧な言葉だが、「波長が合うかどうか」あるいは「相性がよいかどうか」である。それだけに面接者は、相手の話を聞く力だけでなく、その背景や可能性を見抜く質問力を備えておかなくてはならなくなった。

▼面接は、相手の話を上手に聞くということが基本だ。どのように聞くか、黙って相手の主張や言葉にうなずいているだけではだめだ。面接準備としては、その人のプロフィールやエピソードを知ったうえで話を聞くのは当然だが、話の中では、相手が言いたいこと、迷っていること、触れて欲しくないことなどを感じ取りながら聞くことだ。この感じ取りながら聞くことによって相手の主張や考え方、性格、要望がよく理解できる。そのためには、相手が語っていることに対しては、時折、同意や確認それに適切な質問をすることだ。これによって、自分自身の理解が深まり、相手も話しやすくなる。相手に「この人は、自分を理解してくれている」という安心感を持たれれば、相手は、もっと話そうという気になる。話をじっくり聞く要領としては次のようなものがある。確認してみよう。
1.相手ときちんと向き合う
2.話を素直に受け止め、軽くうなずく
3.話をうながす短い質問をする
4.相手の自慢、経験、特技などをよく聞く
5.質問は、明確に分かりやすく、答えやすく
6.うなずきながらメモを取る
7.時計を見ない

▼面接のやりかたとしてはこれが心構えだが、「波長が合うか」とか「相性がよいか」を感じるためには、さらに踏み込んだ質問力がなくてはならない。質問力は、手際よく質問したり、相手の嘘やあいまいな点を明らかにしたりすることではない。質問することで相手とのコミュニケーションを深め、その魅力を引き出すことである。そのために面接者は、面接で相手を落とそうとするのでなく、採用することを前提にして質問をすることが基本だ。入社後、活躍してもらうためにはこの分野への関心はどうか、どのように取り組むのか、過去の経験はどうか、などと具体的に聞くことだ。そして相手のセールスポイントに着目して話を促す。そうなれば相手は、自慢話や頑張ったこと、貴重な体験、楽しいエピソードなどを次々と話すだろう。「それからどうなったのか」とか「で、その時のあなたの気持ちは、どうだった」などと面接者が興味を示すことで、話は思いがけない方向に発展する。相性や波長はそんな話の中から見えてくる。つまり、相手の土俵で面接をすることがポイントだ。相手が語りたくない話や失敗談は、こちらから質問することはやめた方が良い。

▼ある教育学者は、良い質問について座標軸を使って説明している。縦軸に「自分が聞きたい」かどうか、横軸は「相手が話したい」かどうかを設定、これらのプラスマイナスによって4つのゾーン(領域)に区分、その中で「自分が聞きたい質問」と「相手も聞いてもらいたいと思っている質問」の組み合わせこそ良い質問、ストライクゾーンだと示した。

齋藤孝「質問力」筑摩書房をもとに筆者が作成

▼これからの3か月間、面接担当者は、連日のように学生と会って面談し、採用面接をすることになる。上記の要領だけでなく、学生の目を見て、笑顔を忘れずに、会った後にお互いにさわやかな印象の残る面接をしたいものだ。

【掲載日:2018/03/09】

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景気によって大きく変動する「採用」の実態を、企業と学校、それぞれの視点でとらえ、一歩先のトレンドをお伝えします。
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キャリアコンサルタント 夏目孝吉

早稲田大学法学部卒業、会社勤務を経て現在キャリアコンサルタント。東京経営短期大学講師、日本経営協会総合研究所講師。著書に「採用実務」(日本実業出版)、「日本のFP」(TAC出版)、「キャリアマネジメント」(DFP)ほか。

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