第74回 マスクを外すタイミングを考える

 新型コロナが蔓延する前から、学生のマスク問題は気になっていました(第38回「彼がマスクをする理由」参照)。衛生上の理由以外でマスクを着ける行為を、当時は「伊達マスク」と呼び、依存性を感じさせる学生も少なからずいました。花粉症によってマスク生活が長引き、マスクの副次的なメリット(顔を隠すことで得られる安心感など)で外せなくなった……というケースが多かったように思います。そして、新型コロナによって、この副次的メリットを多くの人が実感するようになりました。今ではマスクを「顔パンツ」と呼び、人前で外すものではないという認識まで広がっています。

 先月23日、政府から『マスク着用の考え方及び就学前児の取扱いについて(※1)』が発表され、1ヶ月弱が経ちました。しかし、マスク無しでOKな環境下でも、マスクを外している人は稀です。同調圧力で外しにくいと感じている人もいますが、より積極的にマスク着用を継続している人も多いのではないでしょうか。

 日本インフォメーションが2月に実施した『マスク生活が長期化した今を読み解くマスク着用の意識・行動調査(※2)』では、10~60歳代の男女約1,000人による調査結果を見ることができます。それによれば、コロナ収束後も「必ず使用」「できるだけ使用」を合わせたマスク継続派が54.5%と過半数を占めました。前回調査(2021年9月)では38.6%だったので、マスク継続派は大幅に増えていることが分かります。

 では、10代後半から20代前半に該当する大学生は、マスクに対してどんな認識を持っているのでしょうか。私自身が関わっているセミナーや講座で、簡易アンケートを実施してみました。

■大学生活においてマスク無しでもOKになった場合、あなたはどうしますか?
・マスク無しで過ごす(マスクなしの方がいい) 44.5%
・マスクありで過ごす(できるだけマスクをしていたい) 52.3%
・その他 3.2%
(大学1~2年生、n=220)

対象が限定的な簡易アンケートなので精緻な検証はできませんが、前述の調査(※2)同様、概ね50%強の学生がマスク継続派と言えそうです。学生コメントを見ると、マスク本来のメリットである“感染予防”を理由に挙げる意見もありますが、多くの学生が顔を覆うことによる副次的メリットを指摘しています。


    <マスク継続派の意見>

  • ○ひげを剃らなくていい/フルメイクしなくても良い

  • ○マスク無しで過ごすことに違和感あり、恥ずかしさすら感じる。

  • ○何年もマスクを着けて過ごしてきたので、外して素顔をさらすことに抵抗感が生じてしまった。

  • ○マスクを着けていれば、顔の半分が隠れるので安心する。人に顔を見られるのが苦手だし、マスクを着けていた方が、目を見てコミュニケーションをとれる。

  • ○顔を出すことにもともと自信がなかったので、正直今のマスク生活には満足している。

  • ○自分の顔にコンプレックスがあったので、マスク無しの生活では常に容姿を気にしていた。マスクを着用するようになってからは、気楽に生活できるようになり、相手の目をまっすぐ見ることにも抵抗がなくなった。人とのコミュニケーションがより円滑になったと感じている。


“コミュニケーションを円滑にするためのマスク着用”という意見は、社交不安が強い若者なりの工夫と言えるのかもしれません。一方、マスク無し派のコメントからは、揺れ動く気持ちを述べているものが目立ちます。



    <マスク無し派>

  • ○感染の可能性がなくなるわけではないので、外すことへの怖さはある。ただ、リスクに怯えてマスクを着け続けていたら永遠に外せないので、マスクを外せるチャンスが来たら外したい。

  • ○コロナ前は、一年中マスクをしている人の気持ちが分からなかった。でも今は、マスクをしていると落ち着くし、マスクをとった顔はプライベートなもので、見せることに恥ずかしさを感じる。マスクを着けていたい気持ちは確かにあるが、マスクで相手の顔を覚えるのが困難だったり、息苦しかったりする。メイクもお洒落も楽しみたいので、がんばって外したい。

  • ○3年前までマスク無しが普通だったのに、今ではマスク無しで外を歩くのが恥ずかしい、友達の前で外すのが恥ずかしいと思うようになっている。マスクは人の思考までを狂わせてしまったようだ。以前のようなマスクのない生活に戻ってほしいと切実に思う。

  • ○会話において表情は大事だと感じる。笑顔にも満面の笑みや苦笑いなど、多くの情報が含まれる。表情から分かることは多いが、マスクはそれを遮ってしまう。外見で判断するのはよくないのかもしれないが、人となりを理解する一つの材料として必要だと思う。



 顔を出すことへの葛藤と同時に、顔を隠すことへの違和感など、複雑な心境が伝わってきます。こんなコメントもありました。「『マスク詐欺』という言葉ができてから自分に自信が持てなくなった」。マスク詐欺という言葉は、昨年11月に男性3人組YouTuberがマスクを外した女性の顔を見て、「マスク偽証罪」などと言い、おもちゃの手錠をかける動画が炎上したことがきっかけで、一部の若者に広がった言葉のようです。マスク無しで生活することへのハードルは、なかなか下がりそうにありません。

 マスクをしていると見えない部分はイメージで補うため、実際よりも魅力的に感じるというのは部分的には実証されています(※3)。多くの大学生が、マスクを外したくないと感じるのは当然かもしれません。でも、人は誰もが老い、いずれ見た目の魅力は低下していきます。行き過ぎたルッキズム(外見至上主義)は誰も幸せにしません。学生コメントにあるように「外せるチャンスが来たら外す」べきなのでしょう。学生が安心してマスクを外せるよう、ガイドラインに従いつつ、まずは自分のマスクを外すことからスタートしたいと思います。


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キャリアコンサルタント 平野恵子
キャリアコンサルタント 平野恵子

大学低学年から新入社員までの若年層キャリアを専門とする。
大学生のキャリア・就職支援に直接関わりつつ、就職活動・採用活動のデータ分析を
基に、雑誌や専門誌への執筆などを行う。
国家資格 キャリアコンサルタント