第68回「ガクチカ(学生時代に力を入れたこと)」に学業「ガクチカ」も加えませんか

 あと1か月もすれば、大学は夏季休暇に入り、23年卒生の夏インターンシップが本格的に動き出します(まだ2021年なんですが…苦笑)。16年卒採用から広報開始が3月にずれ込み、それを機にインターンシップの拡大が始まったわけですが、19年卒あたりから広く一般化し、いまでは就職活動のスタートラインとして定着しています。今後、皆さんもオンラインや対面で、23年卒生との接触が増えていくでしょう。

 私自身、23年卒生の支援にかかわる機会が増えています。その中で強く感じるのが、「ガクチカ(学生時代に力を入れたこと)」ネタが見つからないことを不安がる学生の多さです。新型コロナの影響を受けずに、学生生活を過ごせたのは1年間のみ。2年生という最も自由に活動できる期間をほぼオンラインで過ごし、強い制約の中で大学生活を送ってきました。就活で使えそうな「ガクチカ」がない…と不安に感じるのも当然でしょう。

 23年卒生は、2年生になる春季休暇中に感染拡大が進み、そのままオンライン中心の大学生活に入りました。サークル活動や課外活動のメンバーと連絡を取り合うタイミングを逃したまま、活動休止になっているケースも少なくありません。慣れないオンライン授業に対応しつつ、一気に増えた課題に追われる学生も目立ちます。大学生に向けられる世間の目もあり、必要以上にストレスを抱え込み、心身のバランスを崩し気味な学生もいます。対人関係の広がりの中でアイデンティティを確立していく青年期には、かなり厳しい環境と言えます。「充実した学生生活を送っていました!」と胸を張って活動内容を言える学生は、例年に比べて極めて少ないと考えます。

 対面の交流が制限されていたので、学生生活に変化は少なく、価値観やコンピテンシー(行動特性、思考特性)を確認できそうな活動機会も多くありません。面接で「学生時代に力を入れたこと」を尋ねても、小さな出来事をそれっぽく仕立てた“痛いエピソード”になりかねません。無い袖を無理やり振るより、有る袖を振った方が有用でしょう。私がお勧めしたいのは、学生時代を学業に置き換えた「(コロナ禍において)学業で力を入れたこと」という学業の「ガクチカ」です。

 選考時、学業に関する質問を活用する動きは、数年前からありましたが、あまり広がることはありませんでした。大きなトレンドになりにくい背景には、学業をメインに深掘りするときの「質問ストック」が少ない…という事情があるように思います。大学が発行する成績証明書は、成績と単位数しか記載されていない形式が一般的です。授業内容における詳しい記述がなく、圧倒的に情報が少ないと言えます。面接側が「どんな質問をすれば、知りたい情報が得られるのか分からない…」と感じる気持ちは理解できます。

 大学の成績証明の記載内容がより充実したものになれば、選考に使いやすくなるのではないでしょうか。各科目の種類(必修、選択など)、成績評価方法(レポート、試験など)、授業形式(座学、グループワーク、実習など)、単位取得率…といった情報が分かれば、面接時の質問も考えやすくなります。大学では科目ナンバリング(科目を番号で分類し、種類や入門~上級などのレベルなどを体系化した仕組み)も進んでいるので、その情報を公開するだけでも参考になるでしょう。

 詳しい授業情報がなくても、学業「ガクチカ」に使えそうな「質問例」をいくつか考えてみました。
・オンライン授業をより良いものにするため、自ら工夫したことは?
・もっとも単位取得が困難だった科目、その理由、対応方法は?
・もっとも興味関心を持った科目、その理由、自学自習の有無は? …など

 オンライン授業を行いながら感じるのですが、現在の環境は、手を抜こうと思えば抜けるし、学ぼう!と思えばより能動的に学ぶことができます。自主的な学びの裁量が増えているからこそ、学業の「ガクチカ」で人となりが見えてくるように思います。

 学業をテーマにした「ガクチカ」が定番質問に加われば、コロナ禍で制約された学生生活を送っている他学年への安心材料にもなるでしょう。変化に対応しつつ学び続ける人材の価値が高まっているので、企業側のニーズにも合っているように感じます。23年卒採用から、学業の「ガクチカ」を新卒採用のスタンダードな質問として加えてみてはいかがでしょうか。

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キャリアコンサルタント 平野恵子
キャリアコンサルタント 平野恵子

国立大学の教育学部卒業後、会社勤務を経て、現在キャリアコンサルタント(CCE,Inc.認定GCDF-Japan)。大学生や社会人などの若年層を中心としたキャリア支援を専門に活動している。また、人材会社の研究員として、就職活動に関する動向や意識調査をもとに、雑誌や専門誌への執筆も行う。