第60回 面接で「第1志望です」と答える理由

 もうすぐ3月です。新卒採用の“就活ルール(※1)”に従えば、広報開始となるわけですが、現状を見るかぎり、選考が本格的にスタートするタイミングと言えそうです。

 ここ数年、選考の早期化が進んでいます。今年は東京オリンピックがあるため、昨年より少し早い内定出しが予想されています。同時に、長期化への備えも必要になるかもしれません。6月には学生ボランティアの研修がスタートするため、状況しだいでは、一旦就活をお休みにして9月から再開・・・という動きもあり得るからです。例年とは異なる動向が生じるため、これまで以上に先読みしにくい、不透明な採用活動になりそうです。

 確実に採用人数を確保するため、同評価の学生なら志望度の高い、内定承諾が見込める学生を優先したい。今年はそんな気持ちが強まるかもしれません。とは言え、面接で学生の志望度を確認するのは極めて困難です。「当社の志望度は?」と聞かれたら、「第1志望です」と答えるのがパターン化しています。リクナビ問題のように“内定辞退率の予想”がビジネスになるぐらいです。志望度の見極めは難しく、それゆえ企業ニーズが高いのでしょう。

 学生が異口同音に「第1志望」と答える風潮に、苦言を呈する方も少なくありません。正直に答える学生の方が好感を持てる、互いに無駄をなくすためにも正直に答えた方が有益だ、第1志望でなくても納得できる説明があれば問題ない・・・etc。確かにそのとおりです。しかし、評価が下がる可能性が全くないとも言い切れません。

 ある学生は、うそはつきたくないと考え、正直に「志望度はまだ分からない」「他社の選考も受けたい」と伝えたところ、面接官の反応が明らかに悪くなった、と言っていました。実際のところは分かりませんが、学生がそう感じてしまう反応だったことは事実です。その学生は前回の経験を生かして、別の選考では「第1志望“群”です」と答えたそうです。そして「第1志望ではないわけですね」と突っ込まれ、以後すべての選考で「第1志望です」と答えるようにしたと言っていました。

 コミュニケーションにおける国際比較をまとめた書籍(※2)によれば、日本人は世界でもっとも「直接的なネガティブフィードバック」を嫌うそうです。もともと日本のコミュニケーションは、文脈を深読みするハイコンテクスト文化なので、ネガティブな発言は極力間接的な表現にしがちです。ビジネスでも「できない」よりも、「困難です」「できかねます」といった表現を好みます。この文化に慣れている私たちが、「志望度は低いです」「少なくとも第1志望ではありません」と直接的に言う学生に、マイナス印象を持たずにフェアな評価ができるでしょうか。私には自信がありません(笑)。

 面接官の価値観はさまざまです。どんな評価をされるか分からない以上、もっともリスクの少ない対応をするのは当然でしょう。マイナス評価をされる可能性があるのに、正直に答えろというのはムリな話です。「他社の選考状況は?」という質問も同様ですが、他社との比較につながる質問に、学生が率直に返答することは少ないでしょう。それは評価する側にも要因の一端があるのです。多くの学生は、意に反して「第1志望です」と答えることに、胸の痛みを覚えています。

 もし、本気で学生の志望度を知りたいのなら、安心やメリットを提供する必要があります。例えば、最終面接の通過連絡をしつつ、内定取り消しがないことを約束したうえで志望度を確認すれば、リアルな気持ちを聞くことができるかもしれません。「当社が第1志望になるために、できることがあるかを考えたい」とアプローチすれば、本音を言うメリットになるでしょう。やり方はさまざまですが、安心やメリットがなければ、学生が本心を言うことはないでしょう。

 「子どもは親を映す鏡」と言ったりしますが、同様に「就活生は社会人を映す鏡」なのでしょう。相手の反応を見ながら、手探りで最適解を見つけつつ、就職活動を進めていきます。学生の対応に疑問を感じることがあれば、自社の採用課題を見つけるきっかけになるのかもしれません。

バックナンバー

バックナンバーを全て表示

キャリアコンサルタント 平野恵子
キャリアコンサルタント 平野恵子

国立大学の教育学部卒業後、会社勤務を経て、現在キャリアコンサルタント(CCE,Inc.認定GCDF-Japan)。大学生や社会人などの若年層を中心としたキャリア支援を専門に活動している。また、人材会社の研究員として、就職活動に関する動向や意識調査をもとに、雑誌や専門誌への執筆も行う。