第26回 就活における負のスパイラル

 2015卒生の採用活動が中盤戦に入ってきました。4月~5月にかけて大手企業が一段落。ここからは中堅・中小企業の採用が本格化していきます。今年は求人倍率1.61倍と、前年の1.28倍から大きく改善しているので、企業にとっては厳しい採用環境と言えそうです。

 では、学生たちは余裕なのか…というと、そうとも言えません。「採用難なのに就職難」という矛盾が成り立ってしまうのが、今の新卒採用です。就職活動に苦戦している学生は、ちょうどこの時期から、就活における負のスパイラルに入り始めていきます。

 学生が就職難におちいる理由は様々ありますが、2つの要因が大きく影響しているように思います。1つは有名企業が先行せざるを得ない就職活動、もう1つが社会人に対するネガティブな誤解です。

 就職活動がはじまると、学生はまず大手企業やBtoC企業など、誰もが知っている有名企業にエントリーします。人は既知のものからしか選択できないので、スタート時に知名度の高い企業にエントリーが集中するのは仕方がないと言えるでしょう。

 結果として、一部の企業に人気が集中して、激しい競争率の選考を余儀なくされます。スタート早々の面接が、短時間で大勢の学生を選抜する(=多くの学生が落とされる)ハードな面接を経験するのです。

 このタイプの面接は、(ちょっと単純化したイメージですが)第一印象が良くて、インパクトあるエピソードがあり、受け答えの反射神経に優れた学生が有利になります。サークルやアルバイトなど、ありふれた日常エピソードしかない(ほとんどの)学生や気の利いたことが言えない朴訥とした学生などは、あっという間に玉砕します。

 少し話はズレますが、面接は日常エピソードでOK!という言葉をよく耳にします。たしかにその通りなのですが、日常の出来事で自己PRをするというのは逆に難しいのです。インパクトある体験なら「○○をしました」と言うだけで、面接官は興味を持ってくれます。質問もしやすいでしょう。しかし、ありふれた出来事では、分かりやすく状況説明をして、PRポイントを明確にしなければ質問すら出てきません。ありふれた体験だからこそ、“話す力”が必要になるのです。

閑話休題

 張り切って就職活動をはじめたのに、最初のハードルが高すぎて、なかなか成功体験を得られない。その結果、学生はどんどん元気がなくなり、萎縮していく。短時間&インパクト勝負の面接に適していなかっただけなのに、「自分には社会人としての能力に欠けているのでは…」と自信を失い、就職活動から離れはじめてしまうのです。
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 社会人に対するネガティブな誤解も就職難を誘発します。昨夏、就活スタート前の15卒生に「社会人」へのイメージを訊ねたところ、こんなコメントが並びました。

 なかには「忙しいがやりがいがありそう」「自立した大人でカッコイイ」などのコメントもありますが、7~8割程度はネガティブなイメージです。

 ニュースとして彼らの耳に入るのは、事件や事故となったネガティブなものばかりです。最近ではブラック企業やドラマの影響もあるのでしょう。一度でも仕事に失敗したらクビになる、飛ばされる…ぐらいの勢いで、現実以上に厳しいイメージを持っています。

 だからこそ、面接が怖いのです。自分では気づかないチョットした態度や発言で、あっさり×(バツ)がついてしまうかもしれない。「入室時のノックの回数を間違えたから…」「イスに座るタイミングが早すぎたから…」「ネクタイの色が良くなかったから…」。あらゆることがトリガーとなり、疑心暗鬼になって、前に進めなくなってしまいます。

 人気企業のプレゼン競争で自信を失い、厳しすぎる社会人イメージが学生をどんどん臆病にしていく。そんな状況では、とうぜん良い結果は出にくいでしょう。そしてさらに自信を失っていく…。これが、就活における負のスパイラルです。

 数ヶ月前まで、キャンパスで屈託なく笑っていた彼らが、別人のように元気を失っていきます。最近の研究では、『新卒における面接評価と入社後2~3年の人事評価には相関性が見られない』というデータがあります。良くも悪くも変化の早い学生だからこそ、面接で評価できるのは、その人のごく一部でしかないのでしょう。

 もし良ければ、面接らしくない面接をしてみてはいかがでしょうか。会議室のいかついテーブルを挟んで、「自己PRをどうぞ」などと質問するような面接ではなく、お茶やお菓子を出しつつ、面接官が笑顔で話しかけ、学生が安心しておしゃべりをするような面接です。

 時間があれば社内を案内しつつ、社員同士の他愛のない会話など、職場のワンシーンを見てもらうのも良いかもしれません。周り全てがライバル…といった過酷な環境ではなく、普通に穏やかで笑顔もあり、それぞれが一生懸命に仕事をしている。そんな日常が分かれば、学生はずいぶんと違う顔を見せてくれるような気がします。

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キャリアコンサルタント 平野恵子
キャリアコンサルタント 平野恵子

国立大学の教育学部卒業後、会社勤務を経て、現在キャリアコンサルタント(CCE,Inc.認定GCDF-Japan)。大学生や社会人などの若年層を中心としたキャリア支援を専門に活動している。また、人材会社の研究員として、就職活動に関する動向や意識調査をもとに、雑誌や専門誌への執筆も行う。