「てへぺろ」という言葉をご存じですか?
もしご存じであれば、ジェネレーションギャップをあまり感じずに、いまどきの学生とおしゃべりできるかもしれません。もし、普段から使っているのなら、学生と「リア充」なコミュニケーションが可能でしょう。
先月、人材サービス会社のインテリジェンスが、ある調査データを発表しました。15歳~25歳までの若者2,447人を対象にした「若年層白書2012年版」です。そのなかに、ちょっと面白いランキングがありました。彼らの周りで使われている流行語ランキングです。
<流行ランキング・ことば(流行語)>
1位 てへぺろ/テヘペロ (87人)
2位 どうするぅ?/どうする~? (41人)
3位 だぜぇ/~だぜぇ (26人)
4位 ワイルドだろぉ/ワイルドだぜぇ (24人)
5位 OK/おっけー/オッケー (19人)
最近の若者はテレビを見なくなったと言われます。しかし、まだまだ大きな影響力を持っているようです。上位には、テレビ番組やタレントが使う言葉が並びました。しかし、若者以上にテレビを見なくなった筆者には、頭上に「?(クエスチョンマーク)」がいっぱいです。せっかくなので、ベスト30位以内で、気になった言葉をいくつか調べてみました。
【てへぺろ】
うっかりした時や失敗した時に、てへと笑ってぺろっと舌を出す仕草の擬態語
女子中高生を中心に広がった
【つらたん】
「辛い」を表す若者を中心としたネットスラング
残念だ、ドンマイなどの意味として使うこともある
【きゃわたん】
「かわいい」を意味する言葉で、女子中高生を中心に広がった
【リア充】
現実の生活(リアル生活)が充実していることを示すネットスラング
どのぐらいご存じでしたか?
仕事柄、学生とはよく話をします。耳にした前後の文脈から、ある程度のニュアンスは分かっていたのですが、詳しくは知りませんでした。
- 掲載日:2012/08/08
第15回 若者言葉にみる共感コミュニケーション
若者の流行語は、特定のコミュニティーで通じるものが多いようです。一定メンバーで親密度が高まると、必ずと言っていいほど、そこだけで通じる「言葉」が出てきます。その「言葉」を使うことが仲間であることの証であり、暗号のような役目を果たすのです。マズローの欲求5段階説ではありませんが、親和の欲求(集団帰属)を満たす行為なのかもしれません。
また、流行語ランキングには、彼らのコミュニケーションスタイルを反映しているものもあります。
16位 まじか/マジかぁ/まぢか
18位 マジで/まじで!?/まぢで
流行語と言うより、学生言葉(若者言葉)という表現が近いでしょう。筆者がよく耳にし、彼らのコミュニケーションスタイルが色濃く現れていると感じる学生言葉をまとめてみました。
<半疑問語>
→自分の意見や立場をやわらげ、相手の様子をみる
「~てきな?」
「~とか?」
「~みたいな?」
<強調>
→相づちとして使うことで、賛成反対をあいまいにしたまま強い共感を表す
「まじか」「まじで」
「やばい(スゴイという意味)」
彼らのコミュニケーションは、とても共感を大切にしています。それは、グループディスカッションでも見ることができます。自分の意見を主張し続け、一歩もゆずらない。そんな学生はあまりいません。自分の主張をいったん保留し、相手の意見を受け止めようとする姿勢。それは彼らの強みです。であると同時に、弱みでもあります。
グループディスカッションの例で言えば、共感性が強すぎて、あっという間に意見が1つにまとまってしまう。そんなケースがここ数年増えてきました。また、他者への共感ばかりで、自分の考えを明確に言うことが困難な学生も見受けられます。
学生のコミュニケーション能力を問題視する社会人は多くいます。確かに、社会人として足りない部分はとてもたくさんあります。しかし、強みと弱みはコインの裏表です。否定ばかりでは、今ある彼らの強みすらスポイルしてしまう。そんな危惧の念を抱いています。
彼らのおだやかで親和性の高いアプローチには、総じて好ましさを感じています。コミュニケーション能力という言葉が内包している要素はさまざまです。どんな点は評価できて、どんな点が足りないのか。周囲の大人は、あいまいにせず、明確に伝えていく必要があるのではないでしょうか。
バックナンバー
- 第82回 「企業の思惑」に適応した「就活生の変化」
- 第81回 学生を社会人へと育成する専門職の必要性
- 第80回 “ガクチカ”と“ブラックインターン”の関係
- 第79回 就職活動が学生を成長させる理由
- 第78回 育成プロセスの見直しが必要だと考える理由
- 第77回 学生が求める“心地よい働き方”とは
- 第76回 指示的に「主体性」を育成するジレンマ
- 第75回 就職活動の受験化について考える
- 第74回 マスクを外すタイミングを考える
- 第73回 新入社員の大切な仕事
- 第72回 学生が望むキャリアの多様性
- 第71回 今どきの就活アドバイスが学生に与える影響
- 第70回 “人それぞれ”な就職活動
- 第69回 オンライン授業の出席率が高い理由
- 第68回「ガクチカ(学生時代に力を入れたこと)」に学業「ガクチカ」も加えませんか
- 第67回 新卒採用の今昔~変わらないものを考える~
- 第66回 「わきまえた行動」を求めてしまう私たち
- 第65回 大学生活のオンライン化について思うこと
- 第64回 就活支援サービスの功罪
- 第63回 新しいコミュニケーションに適応していく若者
- 第62回 対面で映える学生、WEBで光る学生
- 第61回 新入社員の矛盾した2つの想い
- 第60回 面接で「第1志望です」と答える理由
- 第59回 「退職代行サービス」を利用する心理
- 第58回 SNSに晒されるというコミュニケーションリスク
- 第57回 「がんばる」ことが分からない
- 第56回 レイバーでない「働く」体験をインターンシップで!
- 第55回 子どもの気遣い・大人の気遣い
- 第54回 大学入学からはじめる家庭内キャリア教育
- 第53回 「知人」という弱い紐帯の重要性
- 第52回 将来の見通しの立て方
- 第51回 主体的に「自己表現しない」という選択
- 第50回 学生から社会人への移行が難しくなった理由
- 第49回 受け身の合理性
- 第48回 売り手市場における就活生の不安や悩み
- 第47回 学業で自己PRする難しさと質問内容
- 第46回 自分らしい社会人でいるために必要なこと
- 第45回 「自己分析」が好きになれない理由
- 第44回 無反応でも話しつづけられる学生
- 第43回 “コミュ力”と“トーク力”ばかりが重視される理由
- 第42回 「承認」することの効果
- 第41回 学生と一緒に「分かる」を「できる」に
- 第40回 努力は報われると考える理由
- 第39回 まだ見せていないポテンシャル
- 第38回 彼がマスクをする理由
- 第37回 クセと個性の違い
- 第36回 「好き」というエネルギー活用
- 第35回 今どき学生の出会い事情
- 第34回 様変わりしている就職活動/1990年 vs 2015年
- 第33回 売り手市場が学生に与えるマイナスの影響
- 第32回 日本の学生、アメリカの学生
- 第31回 「ジャンケン」と「多数決」の話し合い
- 第30回 学生の誤字に関するあれこれ
- 第29回 学生の「自己責任」論にみる実社会イメージ
- 第28回 成熟した”素直さ”
- 第27回 「分かり合えない」のが普通
- 第26回 就活における負のスパイラル
- 第25回 悩めない学生
- 第24回 困難を選択する困難さ
- 第23回 単語化するコミュニケーション
- 第22回 高大接続から考える学生気質
- 第21回 歴史が繰りかえす「大学生」という若者論争
- 第20回 結果とプロセス、どちらを重視?
- 第19回 「教えすぎる」「待てなさすぎる」という弊害
- 第18回 直木賞作品『何者』に見る学生コミュニケーション
- 第17回 リクルートスーツが「黒」で統一されている理由
- 第16回 “資格”にまつわる誤解
- 第15回 若者言葉にみる共感コミュニケーション
- 第14回 「3年で3割」という離職率をどう考える
- 第13回 学生から社会人への乗り越えかた
- 第12回 エントリーシートに見る今どきの学生事情
- 第11回 コミュニケーション能力を評価する難しさ
- 第10回 内定者の期待値調整
- 第9回 「大学生」という言葉のズレ
- 第8回 新米就活生の不安
- 第7回 学生から社会人への育て方
- 第6回 今どき学生の企業選び
- 第5回 採用時期の繰り下げ問題と学生の意識
- 第4回 インターンシップのひずみ
- 第3回 不確実さを避ける学生
- 第2回 面接で泣く男子学生をどう思いますか?
- 第1回 「当たり前」のギャップ~大学生の消費者意識~
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キャリアコンサルタント 平野恵子
大学低学年から新入社員までの若年層キャリアを専門とする。
大学生のキャリア・就職支援に直接関わりつつ、就職活動・採用活動のデータ分析を
基に、雑誌や専門誌への執筆などを行う。
国家資格 キャリアコンサルタント