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第47回 学業で自己PRする難しさと質問内容

 学生と話をしていると、「資格」という存在を意識させられることが多々あります。ここ数年は売り手市場で、強い不安を抱いている学生は少なくなりました。それでも就職を意識する時期になれば、「資格がなくても大丈夫ですか?」という質問を必ず受けます。

 ここで言う学生は、主に文系学生を指します。理系と異なり、文系の学問分野は、授業と仕事スキルを関連付けるのが難しいといえます。仕事イメージ自体が曖昧で、授業の“学び”とつながりをイメージしにくい…。ゆえに、それ自体が仕事スキルを保証している(と学生が考える)「資格」という存在に頼るのでしょう。気持ちは理解できます。

 ちなみに、文系(主に人文社会系)の大学教育で、ビジネス社会で役立つ仕事スキルは獲得できます。東京大学・本田由紀氏の論文(※1)によれば、次のような授業が仕事スキルと相関があるそうです(一部抜粋)。
・議論やグループワークなど学生が参加する機会がある授業
・授業内容に関するコメントや意見を書く授業
・学んでいる内容と将来の関わりについて考えられる授業

 参加型の授業によって仕事スキルの獲得が可能なら、資格に頼らず、学業ネタで自己PRすればよさそうなものですが、それはそれで簡単ではないのです。「面接でスゴイこと自慢は必要ない。日常的な出来事で大丈夫!」と言ってくれる採用担当者は多いのですが、1つ1つの変化が小さい日常のエピソードを説得力を持って伝えるには、高い言語能力が必要になります。イベント的な出来事の方が、よっぽど伝えやすいのです。

 半期15回の授業で獲得できるのは、仕事スキルの種となる小さな気付きです。それを大学生活のなかでゆっくりと育み、やがて芽が出て、日々の人間関係の中でじょじょに枝葉を伸ばしていきます。1つずつの成長ステップはごく僅かなので、本人も成長の要因に気づいていないことがよくあります。「大学生活で成長した実感はあるけど、これといって話せるエピソードがない」。結局、自己PRのエピソード作りのため、イベント的な活動をはじめたりするのです。

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 意外といっては何ですが、選考における学業の話題は、他の話題よりも高いことが分かっています(※2)。この調査結果によれば、「面接現場における話題の状況」として、学習(研究)3.1割、サークル体育会2.2割、アルバイト1.7割、趣味1.5割、その他1.5割と、学習(研究)が最も高くなっています。とはいえ、学習(研究)に関する質問は深掘りしにくいため、共通話題になりやすいサークルやアルバイトといったエピソードに頼ってしまう可能性も指摘されています。

 大学の授業は、この10年でずいぶん変化しました。グループワークや双方向性のアクティブラーニングは、ほぼ全ての大学で実施されているので、ワークへの参加態度など、新しいアプローチで学業への質問をしてみてはいかがでしょうか。これなら深掘り質問もしやすいはずです。

 想定質問をいくつか挙げてみます。
・グループワークや双方向性の授業をどれぐらい履修したか、その理由
・グループワーク時の自分なりのコツや心掛け
・グループワークで担うことが多い役割(立場)と、メンバーからの評価
・気の合わないメンバーとの関わり合い方
・反論意見があるときの対応
・自分の意見にメンバーから反論があったときの対応
・グループワークの好きな点、嫌いな点

 授業時のグループワークを見ていると、チームで仕事をするのに支障がありそうな態度の学生もいます。一方で、小さな配慮の積み重ねで全メンバーから頼りにされている学生もいます。選考時のグループディスカッションは、すでに就活モードに入っているので、日常的な様子とはいえません。参加型授業における態度や行動を知ることができれば、普段着の彼らを垣間見ることができるでしょう。それは、職場に入ってからの日々の様子と重なるはずです。


※1、『人文社会系大学教育の分野別教育内容・方法と仕事スキル形成』

※2、濱中 淳子・大学入試センター 独立行政法人経済産業研究所
『「大学教育無効説」をめぐる一考察』

【掲載日:2017/12/13】

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最近の学生気質

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キャリアコンサルタント 平野恵子

国立大学の教育学部卒業後、会社勤務を経て、現在キャリアコンサルタント(CCE,Inc.認定GCDF-Japan)。大学生や社会人などの若年層を中心としたキャリア支援を専門に活動している。また、人材会社の研究員として、就職活動に関する動向や意識調査をもとに、雑誌や専門誌への執筆も行う。

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