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第36回 「好き」というエネルギー活用

 本来の言葉を省略して、「活」をつける略語が流布しています。その代表格が“就活”なのですが、いまでは、朝活、婚活、妊活、保活、離活、終活…と、その活用形はビックリするほど広がっています。ですから、この種の言葉はもうお腹いっぱい!という方も多いでしょう。そんな空気を全く読まずに(笑)、今回は“配活(ハイカツ)”の説明からスタートしたいと思います。

 ご存知の方もいると思いますが、配活というのは「配属活動」の略です。就活生が内定を得たあと、希望の部署に就けるように、人事や先輩社員に働きかける活動のことを指します。

 例えば、希望部署の社員にOBOG訪問したり、活かせそうな資格をとってアピールしたり、プレゼン資料を作って人事に直談判したり…。まぁ、ここまで熱心に配活する学生は、それほど多くありませんが、入社前のこの時期、配属が気になっている内定者は多いでしょうし、できれば希望する部署に配属してほしい!という思いは強いはずです。

 もし、あなたの企業の内定者が配活をしてきたら、どうしますか。

 希望部署の事情もあるし、内定者それぞれの適性もあるので、一概には言えないでしょう。ただ、配活するぐらいやりたいことがハッキリしているのなら、希望を叶えるのも1つの手だと考えます。彼らの「好き」というエネルギーは、思いがけないポテンシャルを内包していて、育成に生かす有用性を強く感じるからです。

 以前は、全く逆の考えでした。好きという想いが強い人ほど、希望を叶えることにリスクを感じていました。組織で仕事をする以上、本人の希望が必ずしも反映されるわけではありません。意に沿わない配属や仕事でも、そこから楽しさや面白みを見いだす姿勢、つまりプランドハプンスタンス(計画された偶発性)への対処を身につけることが大切です。好きなことにしかやる気が出ない…では、マイナスの影響が強すぎます。

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 しかし、ファーストキャリアにおいては、「好き」というエネルギーを活用したほうが効果的だと考えるようになりました。それは、ある女子学生との会話がきっかけです。

 彼女は、普段からとても小さな声で話す、人見知りの学生でした。グループワークでも自分から意見を言うのは稀で、誰かが質問することでやっと対話が成立するぐらい受け身な姿勢でした。あるとき、何かのきっかけで、彼女の趣味の話になり、そこから突然(声は小さいままですが)自分のことを多く話しはじめたのです。

 その変化だけでも驚きなのですが、さらに、趣味でつながっているTwitter友達を誘い、リアルイベントに一緒に行ったという話を聞くにいたっては、にわかには信じられませんでした。ネットでしか知らない人に、自分から“つぶやき”かけて、一緒に出かけるなんて、正直、私にはムリです(苦笑)。それを、グループワークで意見を言うことすら躊躇する彼女が難なくこなしているのです。

 その行動力と積極性が、どこから来るのか不思議でならなかったのですが、本人曰く、好きなことだし、初対面でも趣味の話ができるので、話すことに抵抗はないとのこと。これほどアグレッシブな一面に気付かなかったこともショックでしたが、それ以上に、苦手なシチュエーションのなかにいる彼女だけを見て、コミュニケーション全般を低く見積もっていた自分にショックを受けました。伸びしろを見いだすどころか、ポテンシャルすら過小評価していたのです。

 配活をするぐらい「好き」という気持ちがあるなら、それを活用しない手はないし、「好き」というエネルギーは、個々が持つポテンシャルを最大限に引き出してくれる。そう考えるようになりました。さらに「好き」は、学生から社会人へ移行する“しんどさ”を乗り越えるモチベーションにもなるでしょう。

 社会人へのステージ移行に伴って、環境や役割は大きく変わります。別OSをインストールするぐらいの変化ですから、当然、大きなストレスがかかります。でも、「好き」がそのストレスを乗り越えるモチベーションになるでしょう。また、実力以上の業務を担当させて、引っ張り上げるように階段を登らせる成長体験も、好きなことならトライしやすいはずです。自分から知識やスキルの習得をして、自己啓発の習慣も身に付くかもしれません。

 そこまで取り組んでも成果が出なければ、そのときは、組織が判断したジョブローテーションに本人も応じやすいでしょう。もし納得できないのなら、プランドハプンスタンスへの対処を身につける最良の機会にもなります。

 内定者から配活を受けることがあれば、話だけでも聞いてみませんか。もしかしたら、今まで見えていなかった本人のポテンシャルを発見できるかもしれません。

【掲載日:2016/02/12】

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キャリアコンサルタント 平野恵子

国立大学の教育学部卒業後、会社勤務を経て、現在キャリアコンサルタント(CCE,Inc.認定GCDF-Japan)。大学生や社会人などの若年層を中心としたキャリア支援を専門に活動している。また、人材会社の研究員として、就職活動に関する動向や意識調査をもとに、雑誌や専門誌への執筆も行う。

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