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第22回 高大接続から考える学生気質

 今回は、高校と大学の接続(高大接続)から見えてくる学生気質について考えてみたいと思います。なぜ突然、高大接続…?と疑問に思う方がいるかもしれません。じつはここ数年、仕事の関係で、大学1年生と触れ合う機会が増えています。1年生とはいえ「大学生」です。それなりに意志ある個人として接するのですが、何かもの足りない…という印象を抱くことが少なくありません。

 それは、「幼さ」といった類いの言葉で表現できるものなのですが、主たる要因がなんなのか、いまひとつ解釈しあぐねていました。しかし、ある高校の先生とのお話によって、その解釈に1つの輪郭が見えてきました。そんなお話です。

 いつものように、私の体験と皮膚感覚を中心とした内容です。そんな意見もあるね…といった程度に受けとめていただければ幸いです。

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 その先生の高校は進学校で、超難関大学にも毎年コンスタントに合格者を出している、県内でも有数の公立高校です。郷里に近いため、私もよく知っている高校で、文武両道を旨とし、生徒の主体性を重んじた自由な校風が特徴と理解していました。なので、高大接続問題をテーマとしたシンポジウムでお会いしたこと自体に、少し意外な感じがしたのです。

 高大接続問題というと、全入時代を背景として、大学教育について行けない学生について論ずることが多いように思います。高校までの基礎学力や、学習習慣が身に付いていない学生をどう支援していくか。スムーズに大学教育へと移行させるにはどうしたらよいか。私自身、そんな視点で高大接続問題を認識していました。

 そのため、一定レベル以上の学力が担保されている進学校では、さほど問題があるとは思えなかったのです。「先生の高校なら、大きな問題はないのでしょうね」と気軽に話を振ったところ、なんとも歯切れの悪い返事が返ってきました。そして、今の高校教育の一端をお話ししてくださいました。

 その話を要約すれば、次のようになります。
 確かに、大学入試の多様化によって受験へのストレスが低下し、学力の担保に苦慮する面はある。しかし、それ以上に、今の指示的な高校教育(受験教育)を危惧している。学力に問題はなくとも、受身な教育に慣れすぎて、大学の学修スタイルについていけない生徒が増えるのではないか。それを憂慮している。そんな内容のお話でした。

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 前述のように、生徒の主体性を重んじた自由な校風の高校です。とくに宿題を出さずとも、授業について行けるだけの勉強は自分の判断で行う。やらなければ、相応の結果が返ってくる。その現実の中で、勉強や部活、遊びといったことに、どれだけ時間を割り当てていくか。自分の意志で判断していく。そんなイメージがありました。実際一昔前までは、それが当然だったそうです。

 しかし、それはすでに過去のものとなりつつあります。大量の宿題を課し、言われた通りに勉強することを良しとする。成績に応じて必要な補習も強いていく。そして、確実に大学に合格させる。生徒は、何も考えずに安心して言われた通りの勉強をクリアーしていけば、大きな失敗をすることなく大学生になれるのです。自分なりの勉強方法をトライ&エラーで見つけていくよりも、よっぽど効率的かつ効果的です。彼らは、大学受験を通じて、受身の合理性を体感していきます。

 この話は、大学1年生が大学生活をスタートさせたときに感じる不安と妙に符合します。

●クラス担任がいないので、連絡事項を自分で確認しなければならないのが面倒
●指示してくれる人がいないので、自分の選択が合っているのか分からない
●複数のレポートの優先順位と〆切を管理しきれない
●自分で決めなければ物事が進まないのがシンドイ
●どの授業が自分にとって必要なのかが分からない

全て、彼らの会話のなかで出てきた言葉です。高校生活とのギャップ、大学の自由度の高さへの戸惑い。そんなコメントが多く聞かれます。

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 ちょっと驚いた学生コメントとして、自分で参考書を選んだことがないというものがありました。予備校で提供されるテキストを使っていたので、自分で買う必要がなかったとのこと。そういえば、就活講座で「どのSPI対策本を買ったらよいか」と聞かれたので、自分が分かりやすいと感じる本を買えば大丈夫だよと答えたら、それが分からないので具体的な書籍名を教えてほしい、と言われたことがあります。自分にとって分かりやすい参考書なのかを判断できない…。今では、とても納得できる出来事です。

 決してこれが、高校教育の全てだとは思っていません。実際、主体性を活かした特色ある高校教育で成果を出している事例もあります。しかし、手取り足取り、あれをやれこれをやれと周囲が面倒をみて、言われた勉強をしっかりこなした学生が受験を確実にクリアーしていく。これもまた1つの事実ではあります。

 確かに、学力を向上させることは重要です。しかし、最小の勉強で最大の結果を出せる効率的なやり方ばかりを指示され、従順に従うことで得た学力では、何かが欠けているのかもしれません。その欠けている何かを大学で得ることなく4年間を過ごしてしまえば、今度は「大学と実社会の接続」というステップで、ふたたび問題が顕著化することになるのでしょう。

【掲載日:2013/10/10】

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キャリアコンサルタント 平野恵子

国立大学の教育学部卒業後、会社勤務を経て、現在キャリアコンサルタント(CCE,Inc.認定GCDF-Japan)。大学生や社会人などの若年層を中心としたキャリア支援を専門に活動している。また、人材会社の研究員として、就職活動に関する動向や意識調査をもとに、雑誌や専門誌への執筆も行う。

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