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第14回 「3年で3割」という離職率をどう考える

3月に新人が入社して、すでに2ヶ月以上が過ぎました。
新しい環境にも慣れ、四苦八苦しながらも一生懸命に仕事を覚えている頃でしょう。その一方で、漠然とした違和感を感じたり、「この仕事に向いていないのでは…」と不安を感じはじめたりする頃でもあります。

よく知られた「七五三現象」という若年者の早期離職現象があります。
中卒では7割が、高卒で5割、大卒では3割が3年以内に辞めるというものです。大学生の就活について語られる際、この「3年で3割」というフレーズはよく使われます。

当然ですが、この「3年で3割」は、ネガティブな意味合いに使われます。
3年以内という早期離職の主な要因が、学生側の未熟さ(例えば、企業理解・仕事理解の不足、働くことへの覚悟のなさ、ストレス耐性の低さなど)にあると認識されているからでしょう。

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しかし、本当にそうなのでしょうか。
確かに、学生相談で彼らの話を聞くと、幼さや甘さを実感することは多々あります。しかし、程度の差こそあれ、いつの時代も学生は未熟なものです。むかしと比べて、未熟レベルは深刻化しているのでしょうか。

1987年以降の大卒3年以内の離職率と、求人倍率をグラフ化してみました。
確かに90年代後半以降、離職率は35%前後が続いています。90年代前半と比べて、高止まりしていると言えるでしょう。


(グラフ)
資料出所
・離職率:厚生労働省職業安定局集計
・求人倍率:ワークス研究所

4人に1人が大学生だった90年代前半。それと比べて、2人に1人が大学生の今は、人物像の多様化が進んでいます。保有能力の種類やレベル、求める職業観など、あらゆるものの振れ幅が大きいのです。
大学生全体が未熟になったというより、大学生と呼ばれる若者の中に、未熟な若者も数多く存在するようになったと考えるべきでしょう。

また、学生とは関係のない相関性も見てとれます。求人倍率との関係です。
1991年を境に求人倍率が低下し、それにともない離職率が徐々に高まっています。求人倍率が低調気味の2000年代は、35%前後に高止まり。「2007年問題」と呼ばれた団塊世代の大量退職によって、2.14倍という高い求人倍率になった2008年-2009年は、離職率が低下しています。その後、リーマンショックで1.62倍まで落ち込むと、(1年目のみの限定的なデータではありますが)離職率は再び上昇傾向となっています。

離職率の変化を見ると、学生の多様化も要因の1つではありますが、就活年度の求人倍率に大きく左右されていることが分かります。求人倍率が高いと早期離職率は低く抑えられ、求人倍率が低いと早期離職は高くなる、というわけです。

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離職理由では、企業と学生の「ミスマッチ」を指摘する声が多くあります。求人倍率が高ければ、学生は多くの選択肢の中から企業を選ぶことができます。そのため、結果的に「ミスマッチ」が解消され、離職率が低くなるのでしょう。

この「ミスマッチ」解消のために、大学でもさまざまな取り組みが行われています。しかし、どんなにマッチング精度を高めても、3割程度の早期離職はなくならないのではないか。そう考えています。

新卒採用は、仕事経験のない求職者(学生)を仕事能力で評価するという矛盾した採用です。彼らが語る言葉や態度からさまざまなサイン読み取り、仕事能力の有無をイメージし、判断しなくてはなりません。
それは、学生側にも言えることです。どれだけ入念に企業を調べたとしても、入社後のリアリティショックを完璧に回避することは難しいでしょう。

入社後、互いの価値観や能力を確認し合う一定期間に、一定数の離職者が発生する。それは、新卒採用の構造的宿命のように思います。それに加えて、求人倍率の影響も受けるのです。「ミスマッチ」解消は重要なことですが、ある程度は不可避であることを容認し、それを織り込み済みで採用や育成を考える。そんな姿勢も必要かもしれません。

避けられる離職は避けたいものです。ちょっとした仕事のつまずきで退職を考えたり、仕事を覚える前に「向いていない」などと言い出したりする新人には、ちゃんと叱り、引き留める必要もあるでしょう。
しかし、避けられない離職もあるのです。

20代はさまざまなことに悩みながら、社会(企業)の中に自分の居場所を作っていく時期です。全ての早期離職を否定的に受け止めるのではなく、20代のキャリア探索を見守るような社会であっても良いのかもしれません。

【掲載日:2012年6月8日】

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キャリアコンサルタント 平野恵子

国立大学の教育学部卒業後、会社勤務を経て、現在キャリアコンサルタント(CCE,Inc.認定GCDF-Japan)。大学生や社会人などの若年層を中心としたキャリア支援を専門に活動している。また、人材会社の研究員として、就職活動に関する動向や意識調査をもとに、雑誌や専門誌への執筆も行う。

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