トップ > 特集・コラム一覧 > 最近の学生気質 > 第12回 エントリーシートに見る今どきの学生事情

第12回 エントリーシートに見る今どきの学生事情

 2月に入り、2013年卒生の就職相談が増えてきました。この時期は、ちょうどエントリーシートの提出が始まるタイミング。添削希望の相談が多いのです。何を書けばいいのか分からず、書きすすまない自己PR。企業理念まる写しの志望動機。スタート早々から、学生は高い壁にぶつかっています。

 しかし、エントリーシートに目を通すと、添削という高度?なレベルの相談にならないケースが間々あります。日本語としておかしくないか、意味がちゃんと通じる文章になっているか…。まずは、そこからチェックしなければならない学生が少なからず存在するのです。

 最近のエントリーシートから、「気になる日本語」をまとめてみました。

●あるべきことろに読点「、」がない
例:『部活をやったりアルバイトをやったりして充実した学生生活を送りました。』

●話し言葉が多用されている
例:『~なんで(~なので)』『~とかをがんばりました(~などをがんばりました)』
  『~をさせていただきました』

●主語と述語の関係が変、
例:『私は、~努力できることです(私のPRポイントは、~努力できることです)』

●「てにをは」などの助詞がおかしい
例:『貴社に志望する理由は~(貴社を志望する理由は~)』

●部首を間違える
例:『高校の項(~の頃)』『復数(複数)』『成積(成績)』『記億(記憶)』

●覚え間違いをしている
→『源動力(原動力)』『責極的(積極的)』『専行(専攻)』『成作(制作)』

 携帯メールの文章は、話すように言葉をつなげていきます。それに慣れすぎてしまったことが、おかしな日本語を書く要因の1つでしょう。また、本や新聞など、正しい日本語を読む機会が減っていること、直筆で文字を書く機会が減っていることなども、要因として考えられます。

このページの先頭に戻る

 日本語の体裁が整っても、苦慮する点はまだまだあります。例えば、言葉の解釈のズレです。

 『私の強みは素直さです。言われたことは、どんなことでも素直に従います。辛いことでも、イヤなことでも、素直に行動できるので、貴社に貢献できる自信があります(原文まま)』。実際にあった学生の自己PRです。

 志望する企業の採用ホームページに、求める資質として「素直さ」と書かれてあったそうです。そのため、この学生は、上記のような自己PRを考えたのです。しかし、企業が求める「素直さ」と、学生がPRしている「素直さ」には、明らかにズレがあります。

 企業のいう「素直さ」は、例えば、自分のやり方に固執せずに、周囲のアドバイスを受け入れることができる「素直さ」であったり、分からないことは、恥をかいても「分かりません」と言える「素直さ」でしょう。しかし学生は、ひたすらハイハイと従う「素直さ」をPRしています。

 同様のズレは、他にもたくさんあります。

●協調性
何も主張せず、人に合わせて行動していた

●粘り強い
状況を変えようとせず、ひたすら我慢して、耐えていた

●継続力
続けることに困難もなく、ただ惰性で続けていた

●主体的
人から言われた課題を、工夫して自ら取り組んだ

 どれも自己PR文では、よく目にする言葉です。しかし、言葉が内包するイメージの解釈には、企業と学生で明らかにズレがあります。このズレが解消されない限り、なぜ自分のエントリーシートが評価されないのか、理解することはできません。自己特性のどんな点が評価されやすいのか、強みを見つけることができないのです。

 このズレの根っこは、何なのでしょう。1つには「能動」と「受動」の違いにあるような気がしています。

このページの先頭に戻る

 多くの学生は、既存のルールのなかで生活しています。ルール自体に疑問を感じても、あまりルールを変えようとはしません。それよりは、与えられたルール下で、できるだけ快適に過ごす方策を探します。彼らは、受動的な対応には長けていますが、ルールを変化させるような能動的な対応には慣れていないのです。それが、ズレの発生源なのではないでしょうか。

 高校までとは違い、自由度の高い大学生活では、受動的立場から能動的立場に移行する良いトレーニング機会が得られるはずです。しかし、昨今は面倒見の良い大学が増えています。大学だけでなく、社会全体が自ら手を挙げずとも困らない環境が整っています。学生が能動的に行動するトレーニング機会は、減る一方です。

 社会のさまざまな出来事に対して、受け身でいられる学生から、当事者である社会人へ移行する。この立場の違いを理解できれば、エントリーシートに関するアドバイスはほぼ終了。いつまでも、手取り足取り指導していたら、永遠に受け身気質から抜け出せなくなってしまいます。

 彼らの就職活動が、学生から社会人に脱皮する良い成長の機会になることを願ってやみません。


【掲載:2012年2月8日】

このページの先頭に戻る

バックナンバー

最近の学生気質

最近の学生気質
新入社員の姿を見ると、「近頃の若い人は~」という台詞の使用頻度も高くなっているのではないでしょうか。いつの時代も世代間による価値観の違いはあるものです。先輩、上司として相互理解を図るためにも、最近の学生気質を探っておきませんか。
『最近の学生気質』は隔月(偶数月)に掲載します。

キャリアコンサルタント 平野恵子

国立大学の教育学部卒業後、会社勤務を経て、現在キャリアコンサルタント(CCE,Inc.認定GCDF-Japan)。大学生や社会人などの若年層を中心としたキャリア支援を専門に活動している。また、人材会社の研究員として、就職活動に関する動向や意識調査をもとに、雑誌や専門誌への執筆も行う。

このページの先頭に戻る