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第8回 新米就活生の不安

 今年はずいぶん早い梅雨入りとなりました。ジメジメした天候が続くのは、気分が滅入るものです。しかし、梅雨が明けたら、節電対策に頭を悩ませる盛夏。今年は、何かと大変な夏になりそうです。

 大学3年生の夏も同様に大変です。夏のインターンシップをきっかけに、自分の就職先を意識し始める時期だからです。
 インターンシップが、就職活動の早期化を扇動しないよう、今年の3月、日本経団連が倫理憲章を発表し、一定の基準を明示しました(※1)。そんな背景もあり、昨年のように、4割以上の学生が「1Dayインターンシップ」と呼ばれる企業イベントに参加(※2)といった状況にはならないでしょう。昨年は、インターンシップに参加しなかっただけで、就活に出遅れたと焦る学生が多くいました。それでも、各就職情報サイトがプレオープンする6月以降は、徐々に実社会との触れ合いを意識し始めます。同時に、就活に対する不安も色濃くなっていくのです。

 そんな時期、学生からよく聞かれるのが、「どんな資格が就活に有利ですか?」「何をすれば就活で評価されますか?」「まず何から始めればいいですか?」といった質問です。「ハッキリした答えはない」と、いくら説明しても、学生はどこか腑に落ちない顔をします。

 彼らの住む「学生」という世界は、年々不明確さが排除されています。自分の学力で無理なく入れる大学情報が提供され、AO(アドミッションズ・オフィス)入試の面接にまで対策が用意されています(中には、オープンキャンパスで自校のAO入試対策を実施する大学まであります)。大学のシラバスでは、全15回の授業内容が事細かに明示され、成績評価基準まで記載されています(レポート60%、出席30%、授業態度10%など)。転びやすいところには、常に注意書きがあり、転ばぬ先の杖が、周りを取り囲んでいる。それが彼らの日常です。そんな彼らにとって、答えのない就職活動というのは、俄かには信じられないのでしょう。そして、それが不安を煽ります。

 「即戦力」という言葉も、不安を後押します。バブル崩壊以後の経済環境により、新卒採用市場は大きく縮小しました。就職氷河期と言う言葉が生まれ、自己責任という考え方が社会に蔓延しました。そして、新卒採用にも「即戦力」という視点が広がっていったのです。どんなに優秀な学生でも、就業経験もなく「即戦力」になれるはずがありません。ほとんどの企業は、「可能な限り早く即戦力になる学生」「少ない研修で現場に入れる学生」といった意味で、「即戦力」という言葉を使っていたと思います。それが、いつの間にか、言葉だけが独り歩きしてしまったようです。

 「どのぐらいのPCスキルがあれば、即戦力レベルですか?」「このインターンシップ経験は、即戦力としてPRできますか?」「即戦力としたら、どっちのエピソードが魅力的ですか?」。そう質問してくる学生に、企業は「即戦力」を求めているのではない、ポテンシャル(潜在的な力)の方が重視されている、と言っても、やはりどこか腑に落ちない、不安げな顔をします。

 今までの常識が通用しない、不安の多い就職活動。だから学生は、明確な何かを欲しがります。それが、資格であったり、インターンシップに参加した実績であったりするのでしょう。学生スタッフが非常に活躍している、あるNPOでは、参加学生から、「参加証明書のようなものはありませんか?」と聞かれたそうです。

 最近では、親子三代会社員という家庭も珍しくありません。周囲で働く人といえば、会社員しかいないわけです。会社員は、家庭の中で、社会人としての顔を見せる機会はほとんどありません。つまり子供である学生は、就職活動を通じて、生まれて初めて社会人と触れ合うわけです。

 この夏以降、新米就活生が、インターンシップなどを通じて、皆さんの周りに出現しはじめるでしょう。右も左も分からず、生まれたての雛鳥のように、オドオドしているはずです。「そんなことも知らないのか」と驚くこともあるでしょう。しかし、勇気を振り絞って社会の入り口に立った彼らです。どうか温かく、そしてカッコイイ社会人の姿を見せてあげて下さい。雛鳥の刷り込みではありませんが、生まれて初めて教わったことや、教えてくれた人は忘れないものです。そこに信頼関係が育まれれば、将来の上司部下という関係に発展するかもしれません。

※1、「採用選考に関する企業の倫理憲章の理解を深めるための参考資料」より
http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/2011/015sanko.html

※2、インターンシップに参加しましたか?
        はい 40.2%
        いいえ 59.8%
文化放送キャリアパートナーズ 就職情報研究所
「新卒採用戦線 総括 2011」より


【掲載:2011年6月08日】

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キャリアコンサルタント 平野恵子

国立大学の教育学部卒業後、会社勤務を経て、現在キャリアコンサルタント(CCE,Inc.認定GCDF-Japan)。大学生や社会人などの若年層を中心としたキャリア支援を専門に活動している。また、人材会社の研究員として、就職活動に関する動向や意識調査をもとに、雑誌や専門誌への執筆も行う。

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