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第1回 「当たり前」のギャップ~大学生の消費者意識~

「授業中、トイレに行くのはダメなんですか??」
大学生に対するキャリア教育の授業後、アンケートに書かれていた一文です。
授業は、グループワーク中心だったので、椅子から離れて歩き回ることを許可していました。と同時に、「歩き回ってもイイけど、教室の外に出てはダメだよ」と注意事項を伝えていました。この注意事項に対する学生の疑問が、冒頭の一文です。

この4月、多くの元大学生が、未内定のまま社会に押し出されていきました。学生と社会人の「接続」は年々困難さを増しています。その要因はあまりに複合的で、残念ながら私は、根源的な解決策を提言できるほどの域には、まだ達していません。ですので、このコラムでは、リクルートスーツを着ていない、普段着の大学生像をお伝えすることと、経験則で得た若者と接する際のポイントなどをお伝えできればと思っています。何卒宜しくお願い致します。

(閑話休題)

さて、冒頭の一文を読んで皆さんはどうお感じになりましたか。私は、少し混乱してしまいました。この学生にとって、授業中のトイレに対する「当たり前」とはどういったものなのか?私の混乱の元はココです。

私の「当たり前」は、授業中は中座しないように、休み時間に用を済ませ、それでも仕方がないときだけ、先生に断って、申し訳なさそうに教室を出て行く、というものです。大学生になってからは、それほどまじめに授業に出席していたわけではありませんが(苦笑)、授業を抜け出すことは良くない、という前提はありました。

しかし、この学生の文章からは、そうした前提が感じられなかったのです。授業中トイレに行きたくなったら、当然の権利として、断りなく堂々と教室を出て行いけるもの、という「当たり前」が感じられたのです。

似たような「当たり前」のギャップは、他にもあります。
遅刻して教室に入るときは、なるべく目立たないように、コソコソと入り、万が一、先生と目が合ってしまったら、頭を下げながら急いで座る、というのが私の「当たり前」です。しかし、今の学生の中には、前方に置かれた資料を取るため、堂々と教壇の前を(つまり私の前を)突っ切り、ゆっくりと友人を探してから座る、という者までいます。

これらに共通して言えるのは、「先生」という存在に対する配慮の欠如です。道徳心が薄い、モラルがない、と言ってしまえばそれまでですが、私達が当たり前としていた先生への配慮(礼節)は、すでに当たり前ではなくなっているようなのです。そして、礼節に代わる彼らなりの「当たり前」が存在していると感じています。

彼らの「当たり前」とは、消費行動、つまり買い物と似ています。ギブに似合うだけのテイクが得られるか。「授業」という商品を売る先生と、買う学生という関係性で授業に参加している気がするのです。そう考えれば、中座も遅刻も学習機会を失って損をするのは学生であり、補填されこそすれ、責められるべきことではないと考えて当然でしょう。

ちょっと街中の広告に目をやれば、『急なキャンセルでも振り替え可能!合わない先生はチェンジ可能!』といった英会話スクールのコピーを目にします。学生は、この英会話スクールと似たような価値観を、大学にも持ち込んでいるように思うのです。

そうした「当たり前」が異なる学生と、どう接していくのか。私は、信頼関係(ラポール)を築いて、対話で直球勝負するしかないと考えています。残念ながら、先生だからということで、無条件に礼節をもって接してくれる時代は終わってしまいました。しかし、相手(学生)の考えを認め、そのうえで、本気で育てたいというコチラの想いを伝えれば、意外と苦言に対しても真摯に受け取る、ということを経験的に感じています。それが、互いの関係性を、売り買いの関係から、温かみのある人間的な関係に変化させているのではないでしょうか。
 
同様のことは、企業でも起こりえます。上司と部下という役割だけの関係では、本人が理解できる分かりやすい報酬(メリット)分しか仕事をしない。それ以上の仕事をするなら、明確な成長や賃金を提示して欲しい、といった主張をする。しかし、そのメンタリティで仕事をしていくことは、見えない可能性を広げていく新人時代には、とてももったいないことです。

4月に新社会人となった若者が、研修を終え、徐々に現場に配属されていくことでしょう。もし皆さんの近くに、ちょっと生意気そうで、理解に苦しむ新人がいたら、声をかけてみてください。そして、まず話を受け止め、その後(ちょっとクサイぐらいに)期待と成長させたい想いを伝えてあげてください。そうすれば、そこから何かがスタートするかもしれません。

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最近の学生気質

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新入社員の姿を見ると、「近頃の若い人は~」という台詞の使用頻度も高くなっているのではないでしょうか。いつの時代も世代間による価値観の違いはあるものです。先輩、上司として相互理解を図るためにも、最近の学生気質を探っておきませんか。
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キャリアコンサルタント 平野恵子

国立大学の教育学部卒業後、会社勤務を経て、現在キャリアコンサルタント(CCE,Inc.認定GCDF-Japan)。大学生や社会人などの若年層を中心としたキャリア支援を専門に活動している。また、人材会社の研究員として、就職活動に関する動向や意識調査をもとに、雑誌や専門誌への執筆も行う。

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