第4回 インターンシップのひずみ

この数年、大学3年時に夏季インターンシップへ参加する学生が増え続けています。5年前のデータを見ると、約15%の学生が主に大学を通じてインターンシップ先を見つけ、参加していました。しかし現在は、約40%の学生が就職情報サイトを通じて参加する、という規模にまで拡大しています(※1)。そのため、インターンシップを実質的な就職活動のスタートと認識している学生が多いようです。

そうしたインターンシップの拡大が、学生に新たな不安を与えています。それを実感した2つの出来事をご紹介しましょう。

■海外ボランティア活動よりもインターンシップ?!

9月の終わり、国際問題について考えるサークルに参加している学生から相談を受けました。

「この夏、以前から興味のあったBOP(Base of the Pyramid)ビジネス(※2)について勉強するために、グラミン銀行が支援しているバングラディッシュへ行ってきました。現地で学べたことは多いと感じていますが、そのため1社もインターンシップに参加できませんでした。すでに就活に出遅れてしまったのでしょうか?私はこの夏の使い方を間違ってしまったのでしょうか?」

海外で活躍できるグローバル人材へのニーズが高まっている昨今、国外に出たがらない内向き志向の学生が多いことを憂いている人事担当者は多いでしょう。そんな大人から見たら、この学生の体験は確実に魅力的なものとして映るに違いありません。

それなのに、「就職活動に乗り遅れたのではないか」「就活生を対象としたインターンシップに参加した方が良かったのではないか」と不安がる状況は、なんだか本末転倒という感がありました。

■インターンシップで早々に戦線離脱

「今年は、学生相談の出足が早いんです」。ある有名私立大学のキャリアセンターの方が、ため息まじりに話をしていました。「就活生がキャリアセンターを有効活用しているのなら、歓迎こそすれ、困ることではないのでは…?」と聞くと、「大学3年生で、すでにメンタル支援が必要な相談が始まっているんです」との返事。

これまで、就活バーンアウト(燃え尽き現象)とでもいう状態に陥り、支援が必要になるのは、早くても年明けぐらいからでした。それが、大学3年の夏休み中から「就活に疲れた」と言って、キャリアセンターに相談に来る学生がいるらしいのです。その理由を聞くと、ほぼ全員が「インターンシップ選考で自信を失ってしまったから」とのこと。

夏季インターンシップ先を考える時期は、まだ就職を意識し始めたばかりで、全くと言っていいほど企業研究ができていません。ですから、本番の就職活動以上に大手企業に人気が集中しがちです。すると、本番よりもインターンシップの方が高い倍率を勝ち抜かなくては参加きないという、逆転現象が起きてしまいます。

闇雲に大手企業にばかりインターンシップを希望したある学生は、片っ端から選考に落ち、結局、全員参加できる1Dayインターンシップにしか参加できなかったと言って、キャリアセンターに相談に来たそうです。そして「自分は実社会から評価されるだけの能力が備わっていない。就職などできるはずがない」と言って、早々に就活離脱宣言(?)をして、何かしらの専門能力を身につけたいと、大学院への進学相談を持ちかけたそうです。

2012年卒生の就職活動は、まだ始まったばかりです。それなのに、すでに遅れをとったのではないかと不安がる学生。スタートラインに立つこともなく、戦線離脱した学生。『杯中の蛇影』のように、在りもしない影におびえる学生も困りものですが、それだけ強いストレスを与えている『就職活動』という存在も、その時期やシステムなど、見直す時期に来ているのかもしれません。


※1 文化放送キャリアパートナーズ・就職情報研究所「新卒採用戦線総括」より
※2 主として、途上国の低所得階層(年収3000ドル以下、全世界の人口の約7割、40億人)を対象とした持続可能なビジネスのこと。現地での様々な社会課題(水、生活必需品・サービスの提供、貧困削減等)の解決に資することが期待されている。

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キャリアコンサルタント 平野恵子
キャリアコンサルタント 平野恵子

国立大学の教育学部卒業後、会社勤務を経て、現在キャリアコンサルタント(CCE,Inc.認定GCDF-Japan)。大学生や社会人などの若年層を中心としたキャリア支援を専門に活動している。また、人材会社の研究員として、就職活動に関する動向や意識調査をもとに、雑誌や専門誌への執筆も行う。