Vol.26 昇進・昇格の公平感

 従業員意識調査『NEOS』とコンプライアンス意識調査には、双方に共通する項目というのがいくつかある。例えば、人事の公平性に関するものもその一つで、組織の活性化や不正を起こさせない風土づくりを進める上で必要なピースであるものの、そこに不公平感や不満感を感じる者は多い。今回は、その中の項目から「昇進・昇格の公平感」を取り上げ、改善に向けた取り組みについて考えてみたい。

 年功序列や終身雇用の崩壊など、企業を取り巻く環境が変化する中、職能資格制度についてはさまざまな問題が指摘されているものの、依然として導入している企業は多い。制度についての説明は今回割愛するが、資格等級や職位が上がるかどうかは、給与・賞与に関わる問題でもあり、それ故不満も溜まりやすい。特に、職場内で中心的な役割を果たすことも多い30代の中堅層にとっては、私生活での結婚や子育てなどもあり、処遇に対する不満を抱きやすい。自身の職務遂行能力や日々の行動がどのように評価されたのかが曖昧になってしまうと、社員のモチベーションを下げることにもなりかねない。もちろん、100%公平な処遇というのは存在しないが、それに近づけるためのヒントとなる分析結果を(表1)に示したのでご覧いただきたい。

(表1)「昇進・昇格の公平感」と相関の高い上位項目(※製造業5社の分析結果より)

項目
分野
該当社数
能力の計画的育成 人材育成
5社/5社中
個人面談 上司の関係構築機能
3社/5社中
仲間の評価 上司の関係構築機能
3社/5社中
適切な企画・立案 上司の管理能力
3社/5社中
合理的な仕事の割当 上司の管理能力
3社/5社中
本社と拠点間のコミュニケーション 本社と拠点との関係
3社/5社中

(表1)は、当社で2015年から2017年に従業員意識調査『NEOS』を実施した製造業5社(※約3,120名)について、「昇進・昇格の公平感」と相関の高い上位項目を抽出し、各社で共通して挙げられたものをまとめてみた。これを見ると、「能力の計画的育成」が5社すべてで挙げられ、昇進・昇格が公平に行われていると回答する者は、会社における育成の取り組みに対する支持も高いことがわかる。人事施策の一つであるこれら項目の相関が高くなるのは想定の範囲ではあるものの、昇進・昇格を育成の機会として捉える人事担当者にとって、興味深い結果ではないだろうか。

 次に『上司』に関する項目が多く挙げられたが、着目すべきは昇進・昇格の公平感と「個人面談」との高い相関が示された点だ。この項目は、面談の実施の有無ではなく、時間をかけた話し合いがなされているかどうかを測定しており、「納得感」がどの程度感じられているかがカギとなる。この「納得感」を高めるためには、具体性のあるフィードバックが求められ、目標管理制度を導入する企業では、どのような目標を設定するかも併せて重要となる。いずれにせよ、考課者である管理職には、普段の業務場面において部下と接点をもち、彼らに関する情報を集める動きが必要となり、その他の項目として、上司による「適切な企画・立案」や「合理的な仕事の割当」が挙げられたことは、その証左と言える。

 今回の分析では、昇進・昇格の公平感を高める上で、面談の納得感と日常業務における上司の関与がポイントであり、人材開発とも無関係ではないことを指摘した。公平で納得感のある昇進・昇格を実現するためには、そのプロセスにおいて実施される各種試験を外部に委託するのも手段の一つであり、客観的立場から審査されることで、好き嫌い評価を防ぐ効果も期待できる。処遇への不満感は、着服や情報漏洩などの個人的不正の要因でもあり、コンプライアンスの観点からも検討する必要がある。

 適材適所の語源は伝統的な日本家屋や神社などの建築現場における木材の使い方に由来するとされる。杉か檜の使い分けと違い、ヒトは見た目だけで評価できず、そこには感情が伴う。だからこそ、公平性や納得性、客観性を意識した昇進・昇格が重要となる。組織を活性化させ、生産性を高めるための仕組みとしてこれを捉えるなら、働き方改革と併せた取り組みが必要ではないだろうか。

(株)日本経営協会総合研究所 研究員   吉川 和宏

【経歴】
大学卒業後、金融機関勤務を経て、(株)日本経営協会総合研究所入社。現在は、主に従業員意識調査およびコンプライアンス意識調査を担当。調査から得られる数値情報を基に、各企業の組織改善のための指導・支援を行っている。産業カウンセラー。