Vol.11 所属によるコンプライアンス意識の違い

 『コンプライアンス意識調査』は、従業員意識調査『NEOS』を導入いただいた企業のご要望を基に、2009年に開発された商品で、これまで延べ200社(※2017年3月時点)を超える実績がある。特に、近年は製造業を中心に導入いただく先も増えており、リスク管理の一つとして企業の間に浸透してきているのではないだろうか。そこで、今回はコンプライアンス意識の高い所属と低い所属ではどのような違いが見られるのかについて紹介する。

 表1では、過去実施した製造業6社(約10,500名)について、一元配置分散分析を行い、高群ー低群で乖離が大きい項目として各社で共通して挙げられたものを示した。まず注目すべきは、挙げられた項目の大半が『上司のマネジメント行動』と『職場の相互の信頼感』の2分野に集約された点である。コンプライアンス意識の醸成において、上司が部下の模範となる行動をとり、職場づくりに積極的に関与していくことの重要性が改めて確認された結果と言える。さらに項目を細かく見ていくと、「業務面談」や「上司の報連相しやすい雰囲気」「遠慮なく言い合う」等、上司⇔部下間もしくはメンバー間のコミュニケーションに関するものが多くの企業で挙げられた。(※表1青枠内)これらが機能している職場では、仮にコンプライアンス違反に繋がりかねない事象に遭遇した場合でも、職場内に相談できる上司や同僚がいるため、結果として問題の早期発見や適切な対応が可能となる。

 コンプライアンスに関連する法律や社内規則等をeラーニングで学ばせることも必要ではあるが、これだけでは実際に社員が葛藤する場面に遭遇した際、正しい判断と行動をとることができるだろうか。一見あまり関係がないように思える職場内のコミュニケーションの促進こそが、コンプライアンス意識を高める上で、非常に重要な役割を果たすことを、今回の分析は示唆している。無論、上司が倫理観をもっているということが前提条件であることは言うまでもない。

(表1)

(表2)所属別散布図および一元配置分散分析 イメージ図

(株)日本経営協会総合研究所 研究員   吉川 和宏

【経歴】
大学卒業後、金融機関勤務を経て、(株)日本経営協会総合研究所入社。現在は、主に従業員意識調査およびコンプライアンス意識調査を担当。調査から得られる数値情報を基に、各企業の組織改善のための指導・支援を行っている。産業カウンセラー。