リーダーシップのPM理論(三隅二不二)では、リーダーシップをPerformance function「目標達成機能」とMaintenance function「集団維持機能」の2つの要素で構成されるとしており、これらの能力の大小によって4つのタイプ(PM型、Pm型、pM型、pm型)があると提唱している。無論、P、M共に高い状態(PM型)が望ましいのだが、今回は従業員意識調査『NEOS』の導入企業のデータを用い、上司のマネジメントに対する一般社員の評価の現状を確認する。
従業員意識調査『NEOS』では、上司のマネジメント行動を「管理能力」「関係構築機能」「課題遂行機能」「人間配慮機能」の4つの領域でチェックしている。その中で、「(P)課題遂行機能」は業績志向のリーダーシップ」を測定しており、「精一杯の努力を求める」や「仕事の良し悪しの明確な評価」等で構成される。一方、「(M)人間配慮機能」は人間志向のリーダーシップを問うており、「職場の雰囲気づくり」や「失敗に対する配慮」等からなっている。
下の図1には、弊社で2008年から2015年に調査を実施した従業員1,000名以上の企業64社について、一般社員約25万名分の集計結果を示した。分析からは、「スパルタ上司(P>M)」に分類される企業が多く、『上司の人間配慮機能』がやや不足している現状が窺える。今回は紹介することができないが、職場内のコミュニケーションでも、上意下達は行われているものの、ボトムアップの意見の吸い上げに課題を抱えるケースがよく見られる。上司⇒部下への一方方向ではなく、双方向での関わり合いを上司自らが意識することで、Mの向上に寄与するだけでなく、風通しの良い職場づくりに繋がるのではないだろうか。
- 掲載日:2016/11/22
Vol.6 リーダーシップのPM理論


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(株)日本経営協会総合研究所 研究員 吉川 和宏
【経歴】
大学卒業後、金融機関勤務を経て、(株)日本経営協会総合研究所入社。現在は、主に従業員意識調査およびコンプライアンス意識調査を担当。調査から得られる数値情報を基に、各企業の組織改善のための指導・支援を行っている。産業カウンセラー。