Vol.5 経営施策の浸透

 会社の方針や施策が現場にどの程度浸透しているかは、経営層にとって関心のあるテーマの一つではないだろうか。企業理念や中期経営計画等は会社にとっての目指すべき方向性(ありたい姿)であり、言うまでもないことだが、それを示すだけでは社員一人一人に浸透することはない。
 従業員意識調査『NEOS』では、経営施策に関する項目が6項目あり、その中で施策の浸透度合いを3段階に分けてチェックしている。

段階①:方針が明確に示されているか(「経営方針の明確さ」)
段階②:方針が社員に理解され、共有されているか(「経営方針の理解と共有」)
段階③:方針が日常の業務目標に落とし込まれているか(「経営方針のブレイクダウン」)

 下の表1でも示す通り、多くの企業が段階②および③で課題を抱えており、施策の浸透は思うように進んでいないのが実情と言える。これらの要因はいくつか考えられるが、その一つとして経営層と一般層の間にある心理的距離感を取り上げたい。表1では管理職と一般の平均値の差を右端に示しており、「経営陣の危機意識をもった経営」が0.31と大きいことがわかる。管理職と違い、一般層は業務場面で経営層との接点も少なく、「経営陣=遠い存在」となっている状況が推察される。そのような状況下では、特に中間管理職の果たす役割が重要となり、経営層と一般層の橋渡し役を担う動きが期待される。
 
 余談になるが、仮に管理職が経営層(施策)に否定的な考えをもつ様な組織では、施策の現場浸透は更に遠のくこととなるのだが、その一方で職場や上司に対する満足度が高まるケースが稀に見られる。これは、管理職が「経営陣=誤(敵)」、「現場=正(味方)」の構図が社員に出来ており、管理職もこれに便乗する形で現場をまとめていることが要因と考えられる。組織の“タコ壺化”と我々は呼んでいるのだが、こういった状況にある会社は実は少なくないのではないだろうか。

従業員意識調査『NEOS』の蓄積データより

表1では、2008年から2015年に弊社で調査を実施した従業員1,000名以上の企業64社(管理職約5万名、一般社員約25万名)について、『経営施策の魅力』を構成する6項目の平均値を示したものである。

多くの企業では、「経営方針の明確さ」()が良好な一方、「経営方針の理解と共有」()では管理職、一般ともにスコアが低いことがわかる。更に一般の「経営方針のブレイクダウン」()でも同様の傾向が見られ、施策の浸透に課題を抱える企業が多いのが実情である。

(株)日本経営協会総合研究所 研究員   吉川 和宏

【経歴】
大学卒業後、金融機関勤務を経て、(株)日本経営協会総合研究所入社。現在は、主に従業員意識調査およびコンプライアンス意識調査を担当。調査から得られる数値情報を基に、各企業の組織改善のための指導・支援を行っている。産業カウンセラー。