Vol.4 企業風土の醸成に向けて

 前回は企業風土をテーマに、調査枠内における位置づけと製造業5社の傾向について触れた。今回は、風土の醸成をテーマに、調査結果からどのようなアプローチができるのかについてまとめてみた。

 企業風土とは、組織の中で日々活動している者によって暗黙の内に知覚される一連の特性(価値観や規範、慣習、雰囲気など)であり、メンバー個々の行動やモチベーションに影響を及ぼすものと考えられている。「事なかれ主義」や「責任のがれ」「減点主義」など、近年は企業不祥事に関するニュースの中で耳にする機会も多く、ネガティブなイメージが先行しがちである。実際、調査を行った企業の役員報告会の場では、これら『望ましくない企業風土』に関する質問を受けることが多いように思われる。
 従業員意識調査『NEOS』では、企業風土を結果系指標と位置づけており、醸成に影響を及ぼす項目(原因系指標)を明らかにする分析を行っている。下の表は、製造業A社(従業員約15,000名)で、「チャレンジ」風土と相関の高い上位10項目を抽出したものである。上位に挙げられた分野には、『経営施策の魅力』と『会社の顧客志向』に関するものが多く見られ、経営側の示す方針や施策と関係が高いことがわかる。更に細かく項目を見ていくと、「経営施策への現場意見の反映」や「顧客ニーズに応える経営施策」など、いかに現場の声や顧客ニーズに重きを置いた取組みができるかどうかが、A社における「チャレンジ」風土の醸成には重要であることが確認された。
 風土は社員の日々の行動やモチベーションに影響を及ぼすものであるからこそ、「チャレンジ」風土のような『望ましい企業風土』の醸成に取り組むことが今後は求められるのではないだろうか。

『チャレンジ』風土の醸成要因
項目 分野 相関係数
経営施策への現場意見の反映 経営施策の魅力 .373
顧客ニーズに応える経営施策 会社の顧客志向 .364
顧客へのサービス提供 会社の顧客志向 .343
経営施策の時代への即応性 経営施策の魅力 .338
挑戦的姿勢 職場の活力 .333
能力の計画的育成 人材育成 .318
経営陣の危機意識をもった経営 経営施策の魅力 .299
経営方針のブレイクダウン 経営施策の魅力 .298
経営方針の理解と共有 経営施策の魅力 .294
本社と工場などのコミュニケーション 本社と工場などとの関係 .280
(株)日本経営協会総合研究所 研究員   吉川 和宏

【経歴】
大学卒業後、金融機関勤務を経て、(株)日本経営協会総合研究所入社。現在は、主に従業員意識調査およびコンプライアンス意識調査を担当。調査から得られる数値情報を基に、各企業の組織改善のための指導・支援を行っている。産業カウンセラー。