従業員意識調査『NEOS』では、日本企業に多く見られる26の風土について、その認知状況を測定している。企業風土については、特に経営層でその関心が高く、風土醸成を目的とした分析の依頼を受ける機会も多い。今回は、調査枠内における企業風土の位置づけと、傾向について簡単にまとめてみた。
本調査は、モラールサーベイの第一人者である関本昌秀慶應義塾大学名誉教授が提唱された「Good People Company」のコンセプトのもと開発され、これまでに延べ500社(※2016年4月現在)を超える導入実績がある。経営者と従業員の双方の視点に立った本調査の枠組みは、会社(経営側)と職場(従業員側)に関する領域からなるモラール(※原因系指標)や会社の強み・弱みなどで設計されている。
今回のテーマである企業風土は、その中の結果系指標の一つとして位置づけられ、日本企業に多く見られる26風土(望ましい企業風土群/望ましくない企業風土群)について、その認知状況を測定している。下の表は、望ましい/望ましくない企業風土それぞれ上位5風土について、製造業5社(管理職約3,000名、一般社員約20,000名)の平均値を示したものである。『現場第一主義』や『社会的貢献性』『国際感覚』を認知する一方、『権威主義』や『タテマエ主義』などの風土を感じる割合が高いことがわかる。特に、望ましくない企業風土では、製造業の多くの企業で同様の傾向が見られ、“ピラミッド型組織”の影響を色濃く受けているものと思われる。また、企業理念などでよく見られる『現場第一主義』では、管理職と一般社員で「ある」と回答する割合に乖離があり、現場への浸透と風土の醸成がうまく進んでいない状況が窺える。
次回は、企業風土の醸成をテーマに、具体的な取組みにつなげるための分析事例を紹介する。
- 掲載日:2016/11/22
Vol.3 企業風土

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(株)日本経営協会総合研究所 研究員 吉川 和宏
【経歴】
大学卒業後、金融機関勤務を経て、(株)日本経営協会総合研究所入社。現在は、主に従業員意識調査およびコンプライアンス意識調査を担当。調査から得られる数値情報を基に、各企業の組織改善のための指導・支援を行っている。産業カウンセラー。