第2回 モチベーションを高める組織づくりとは?

意識調査を導入するに当たり、多くのお客様から、『社員のモチベーションを高めたい』というご要望を多く頂く。モチベーションは動機付けと訳され、特に仕事場面でのそれはWork Motivation(ワークモチベーション)とされ、産業・組織心理学の分野で多くの研究がなされており、主には「仕事への意欲」として位置づけられている。

■成果はどのように生み出されるか

上記で記した産業・組織心理学の分野では、「成果」に関して、下式のように示されることが多い。

成果=能力×モチベーション×(職場)環境

ここでは、この式が掛け算になっている事がポイントである。つまり、いくら能力が高くても、モチベーションが低ければ成果は上がらない、ということであり、能力が高く、モチベーションが高くても、職場環境に適応できなければ、成果は上がらないということである。

このようにして考えた場合、能力や環境が、一朝一夕に変化する事は考えにくく、これら両者の変化を期する活動(企業内教育や風土改善計画など)は、長期的視点に立ったものであることが多い一方で、モチベーションは、上記両者に比べれば、短期的な変化が期待されるからこそ、成果に影響を与えるインパクトとして注目されているのである。

■モチベーションの先行要因

では、個人のWork Motivationを高める為のポイントとはなんなのだろうか。下図は、これまでの意識調査の蓄積データから分析・析出された、Work Motivationの先行要因であり、それらを、「会社要因」「職場要因」「個人要因」として分類した結果である。つまり、ここで上げられたような満足度が高(低)ければ、Work Motivationも高(低)くなる、という関係である。

「会社要因」では、会社として明確なビジョンがあること、制度の運用面としての業務に関するフィードバックが適切になされていること、また、コ ンプライアンスに対して毅然とした対応がなされている事が挙げられている。

「職場要因」では、働きやすい職場環境の整備と、活発なコミュニケーションが上げられており、特にボトムアップのコミュニケーションの活発さが重要であるようだ。

最後に「個人要因」としては、自分の能力が仕事を通じて伸びている、またそうした機会があるとする実感(有能さの実感)や、権限委譲に関連する自主的な判断の余地、つまり裁量の大きさ(自己決定感)がポイントであるようだ。

ここで挙げた(有能さ)と(自己決定)は、Work Motivationにおける、特に内発的な動機付けを高める要因として、Deciなどの先行研究でも明らかにされているポイントである。
(Work Motivationには、報酬など、外部からの刺激から発生する外発的動機付けと、個人の内部から発生する内発的動機付けに大きく大別され、その強度や持続性は内発的動機付けのほうが優れている。)

■モチベーションを高める組織づくり

これまで、蓄積データからの分析結果を元に、モチベーションの先行要因について供覧してきたが、その先行要因は個人的要因だけ無く、職場、ひいては会社施策とも密接な関連がある事が理解できる。

換言すれば、Work Motivationを高めるという事は、社員一人一人の自己努力に求めるだけではなく、会社として、職場として、戦略的に取り組むべき重要な課題なのである。

(株)日本経営協会総合研究所 主席研究員 加藤 理
(株)日本経営協会総合研究所 主席研究員 加藤 理

慶応義塾大学経済学部卒、慶應義塾大学大学院社会学研究科修士課程修了(産業・組織心理学専攻)後、2002年に入社。現在、組織行動部門主席研究員として、多変量解析を用いた意識調査結果の分析や“現場”に赴いてのフィールドワークから、現場の接点と経営の視点のマッチング=人と組織のパフォーマンス最適化に向けた指導・支援を行なっている。