第7回 犯人探しより原因探しを

コンプライアンス違反の再発防止のために、まず考えるべきは、「なぜ(コンプライアンス違反が)発生してしまったか」である。つまり、「なぜ、行為者はそのような行動を取ったのか、その原因は何であるか」である。しかし、現実には、「(行為者が)大らかな性格だから、ミスに気がつかなかった」「(行為者が)人に厳しく批判的な態度だから、暴力をふるった」など、行為者の独自な傾性から行動を推測し、問題を終結してしまうことが多い。
 
 本来ならば、行為者の行動の原因、つまり、「ミスに気がつかない原因」や「暴力をふるった原因」は行為者の性格や態度以外に主因があるはずである。この行動の原因を究明しなければ、再発は免れないし、「犯人探しを徹底するような雰囲気」のなかでは、行為者がますます名乗り出なくなる恐れが考えられる。これが、一般的に「犯人探しより原因探し」と言われるものである。

 人は、一般に自分を損ないたくないと思う傾向が強く、利得より損失に敏感である。自分が損なわれる状況におかれると、早く自分とは無関係であることを解明して、すっきりしたがる傾向がある。
 社会的に望まれない行動がなされるときは、行為者の独自な傾性を推測する手がかりとなる。傾性は安定的で持続されやすく、印象が持続しやすい。身近なところで例をあげると、テレビで見る犯罪容疑者の顔写真は犯罪者らしく見え、容疑者の性格や生活態度のナレーションを聞き、「やっぱり」と合点してしまうことが多くないだろうか。


 コンプライアンス違反の再発防止のためには、「なぜ(コンプライアンス違反が)発生したか、その原因は何か」を追及すべきである。その際、「誰が行為者であるか」や「行為者の性格や態度」で早合点することなく、「次に同じようなことが起きないようにするために」「これからどう対応するか」を考えることが重要である。

 次回は、「不祥事発生の要因を考える~不正のトライアングル~」を紹介する予定です。

【第7回のまとめ】

●コンプライアンス違反の再発防止のために、まず考えるべきは、「なぜ(コンプライアンス違反が)発生してしまったか」である
●社会的に望まれない行動がなされるときは、行為者の独自な傾性を推測しがちである
●「次に同じようなことが起きないようにするために」「これからどう対応するか」を考えることが重要である

(株)日本経営協会総合研究所 主任研究員 山根 郁子
(株)日本経営協会総合研究所 主任研究員 山根 郁子

奈良女子大学文学部卒業後、大手サービス業にて支社勤務を経て、経営企画、内部監査を担当。同社退社後、(株)日本経営協会総合研究所に入社。主に従業員意識調査、コンプライアンス意識調査を担当。内部監査の経験を生かし、仕組みや制度にとどまらない、健全な組織風土と個人の自律を支援している。筑波大学大学院人間総合科学研究科修了。修士(カウンセリング)。
公認内部監査人(CIA)。公認不正検査士(CFE)。経営倫理士(第15期)。産業カウンセラー。