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採用現場ニュース2017年11月

見直されてよい紹介採用

■今年も企業は、就職サイトへの出稿や就職イベントの開催、大学対策の強化などで膨大な費用をかけて採用活動に取り組んでいた。しかし、中小企業だけでなく大手企業までが採用難というなかでは、その成果は年々低下している。

こうしたなかで最近、リファラル採用(Referral recruitment)といわれる採用手段が注目されている。リファラル(referral )とは、紹介、推薦という意味だが、採用活動の中では、社員など個人的なつながりによる紹介あるいは推薦採用ということになる。その増加ぶりは、大手就職情報会社の調査によれば、「個人的なつながりによる紹介採用」を導入していると回答した企業は、42.3%に達していた(昨年は33.9%)。急増といってよい。

今後、リファラル採用が有力な採用手段になるのか、その背景やメリット、問題点を検討してみよう。

▼リファラル採用は、アメリカの有名IT企業の半数近くが導入していると聞けば、

よほどユニークで斬新なのかと思うかもしれないが、その実態は、社員による紹介採用のこと。これは、我が国においては、多くの企業がすでに中途採用において行っているはず。社員が、友人や後輩を会社に推薦して採用してもらう採用方式だ。それを今後は、新卒採用においても導入しようという動きだ。似たような採用手段としては、リクルーター採用や縁故採用があるが、どう違うのか。

例えば、リクルーター採用の場合は、企業が採用対象者を大学、学部、学科、ゼミ、サークルなどの枠を決めて社員にリクルーター係を命じて募集する。時には目標を課すこともある。一方、縁故採用の場合は、企業の取引先の子弟などを優先的に採用する手段だ。どちらも人物本位という選考基準ではない。それに採用担当者以外は知ることのできない非公開の採用活動である。そのため全社的に取り組む採用活動とは言えない。この点、リファラル採用は、全社的な社員のネットワーク活用であり、公開であり、選考基準も明確にされる。社員がこれはと思う学生がいれば推薦できる。当然、費用も多く掛からない。

▼こうしたリファラル採用は、従来の採用活動と比べてどのようなメリットがあるのだろうか、

具体的にあげてみると、第一は、企業にとって必要な人材を効率的に発見できるということだろう。新卒採用においては、多額の費用をかけて長期間にわたって就職サイトや就職イベントに参加して応募者を集め、その学生たちにエントリーシートを書かせ、面接をして絞り込んで採用をする。その費用と時間、マンパワーは、企業にとっては年々大きな負担となっている。これに対してリファラル採用では、推薦者である社員が、自分のさまざまなチャネルで人材を掘り起こし、企業にとって必要な人材を見つけることができる。効率的であることはいうまでもない。

第二にあげられるのは、ミスマッチ防止である。推薦できる学生を発見するまでのプロセスで社員は学生に企業のさまざまな情報を知らせることで納得してもらい、応募してもらうからだ。会社の経営方針、企業の将来、社長の人柄、仕事内容、人事制度、給料や賞与、仕事の面白さ、入社後のキャリアパスなど、学生にとっては聞きたい情報を社員から直接知ることができる。つまりネットやインターンシップなどではわかりにくい社風、労働条件、企業風土、働く社員の本音を知ることができる。そして学生は、社員と語り合うことで自分の関心事や能力を知ってもらえる。これは、ミスマッチを防ぐためにも効果は大きい。

第三は、社員が自信をもって学生に入社を進めるためには、社員は、常に会社の事業活動や会社の将来について関心を持ち、自分の仕事への取り組み姿勢も見直すことになる。このことによって社員は、会社と一緒になって「良い会社にしよう」という共通目標をもつことになる。それは、社員の会社に対する「思い入れ」や「やりがい」、あるいは「愛社精神」となってエンゲージメント(社員と会社との絆)を強めることにもなる。採用活動で会社が変わり社員が成長するのである。

▼このようにリファラル採用のメリットは多いが、課題も少なくない。

その最大の課題は、社員の会社に対する熱い思い入れがなくてはならない。実際のところ、熱心に採用活動を行い、魅力ある学生を探す能力を発揮するのは、自社の将来に期待している社員や自社に魅力を感じている社員だけかもしれない。こうした社員は、次世代の人材の採用が重要であることを十分に認識しているからだ。だから、リファラル採用では、採用人数の目標を立てたり、即戦力型の人材を採用したりするのはやめた方が良い。「この会社の将来を一緒につくろう」といったアプローチが基本だからだ。

もう一つの課題は、社員の人材ネットワーク力だが、これは社員の問題意識次第だ。日常的な活動の中で良い人材への関心を持っているかどうか、自分の友人や後輩に対して自社の魅力を伝えているか、そうした社員こそリファラル採用の担い手になる。
リファラル採用では、身近な社員というネットワークを使う、経費も掛からずに効率的だが、その大前提として社員が自分の友人や後輩に対して『自社の魅力を伝えられる』」会社であることが大前提になる。このことによってリファラル採用は、社員の活性化と社風の改革という大きな成果をもたらしてくれる。しかし、ここにあげた課題は、相当に重いかもしれない。

【掲載日:2017/11/06】

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景気によって大きく変動する「採用」の実態を、企業と学校、それぞれの視点でとらえ、一歩先のトレンドをお伝えします。
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キャリアコンサルタント 夏目孝吉

早稲田大学法学部卒業、会社勤務を経て現在キャリアコンサルタント。東京経営短期大学講師、日本経営協会総合研究所講師。著書に「採用実務」(日本実業出版)、「日本のFP」(TAC出版)、「キャリアマネジメント」(DFP)ほか。

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