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採用現場ニュース2017年05月

人気ランキングの読み方と課題

■恒例となったランキング

大学生の就職人気企業ランキングが日経新聞4月26日号において発表された。

今年最も人気を集めた企業は、ANA、JTB、JALの3社だという。昨年は、JTB、ANA、HISだったから、航空、旅行業界の人気は変わることはなかった。
この人気企業ランキングは、毎年春、大手就職情報各社が調査、それをマスコミが採用活動の開始時期に合わせて取り上げることで話題となっている。ただ、識者の中には「企業の実態を知らない学生のイメージ調査」「宣伝や人気商品で社名を知っている企業のランキング」などの意見もある。それでも過去50年間変わらずに調査され、毎年話題を集めてきた。

それというのも過去の推移を見ると、1960年代は化学繊維や鉄鋼、自動車など重厚長大企業が上位を占め、2000年代前半は電気、通信、コンピュータ、そして近年は銀行、総合商社、食品とそれなりに時代の花形産業が人気を集め、産業構造の変化やトップ企業の推移を反映していたからだ。学生も案外、時代感覚は良いのではないか、とも思わせるからだ。

■今年の傾向

問題点はあるが、先の日経調査ではどんな特徴があったのか、いくつかあげてみよう。

文系学生の人気企業は、航空・旅行・アミューズメント。企業名でいうとANA、JAL、JTB、HIS、近ツー、オリエンタルランド、バンダイ、バンダイナムコ、タカラトミー。50位以内を業界人気としてみると、上記に続いて食品メーカー、住宅メーカー、印刷、医薬品業界などのトップ企業が学生の人気を集めている。もちろんメガバンクの三菱東京UFJ、三井住友、みずほ、損保の東京海上日動、損保ジャパン日本興亜などもしっかり10位以内に入っているが、これらは業界人気というのではなく日本のトップ企業として選ばれている。金融業界内では人気格差が拡大し、金融業界全体としての人気度は落ちてきている。数年前から人気業界としてクローズアップされてきた総合商社も、伊藤忠が22位から10位に躍進したものの業界全体では芳しくない。

さらに凋落と言わざるを得ないのがマスコミ人気。上位50社にテレビ、新聞は見当たらない。出版社の講談社、集英社が50位以内を維持しているだけである。マスコミは、文系学生にとってあこがれの職業ではなくなったようだ。

理系学生の就職人気上位50社の中で躍進したのは、業績の回復と採用活動を一新、攻めの採用に変身したソニーと総合食品メーカーのアサヒビールの2社だけとなった。注目したいのは、これらの製造業の人気度だ。資生堂、サントリー、アサヒビール、明治、味の素などは、製造業というものの大宣伝で知名度抜群の企業である。ソニーも同様だろう。「ものづくり」あるいはBtoBで日本経済を支えている素材産業や加工組み立て産業ではない。メーカーらしいメーカーでは、辛うじてトヨタ自動車が23位に食い込んでいるだけ。このように産業構造が変わったとはいえ、新日鐵住金や三菱重工、日立そして東芝の姿が見られないのは淋しい。

■ランキングの読み方と活用法

この就職人気企業ランキングは、現在、大手就職情報会社3社が発表している。だが、各社の企業ランキングは、かなり違っている。調査の対象者、調査時期、調査方法などが違うからである。それに回答の学生数が多くなるほど知名度とあこがれ度の高い企業が上位にくる。

今年の場合もこの日経調査と週刊東洋経済オンラインの「就職人気ランキング調査」(5月6日号)では、顔ぶれが大きく違っている。
東洋経済の調査では、1位が三菱東京UFJ銀行、2位みずほ、3位ANAに続き4位に野村證券、5位JTB、6位損保ジャパン日本興亜、7位日本生命、8位大和証券と上位は金融業界が独占する結果だった。この調査の対象学生の大学や地域などが前記の日経調査と違っているからだ。だが、これらの調査でも共通してランキングに登場する企業は存在する。それが、本当の就職人気企業といえるだろう。

では、こうした調査結果をどう活用するか。採用担当者がやるべき事は、調査データを取り寄せ自社への志望者の内訳だけでなく志望動機などを調べ、ライバル企業との違いを分析することだ。とくに採用PRとの関係や採用活動の評価を分析することが大事だろう。この人気ランキングは、これまでの企業活動の評価でもある。中堅企業でも100位以内にランクされていれば、社内外で話題になるだろう。とくにライバル企業より「やりがいがある」「経営理念に共感」などという理由でのランキングへの登場は、社員に自信を持たせ、優秀学生の応募者数増にも結びつくし、重複内定をしたときに優位に働くからだ。

それにしてもランキングを見るとおやっと思う企業がある。採用担当者としては、そうした企業を分析してなぜ評判が良いのかを学ぶこともこのランキング表の読み方である。企業の知名度がない、規模が小さい、地方企業などのハンディがあっても工夫次第でチャンスはある。これこそ採用担当者が今から取り組む次年度の課題である。

【掲載日:2017/05/11】

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景気によって大きく変動する「採用」の実態を、企業と学校、それぞれの視点でとらえ、一歩先のトレンドをお伝えします。
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キャリアコンサルタント 夏目孝吉

早稲田大学法学部卒業、会社勤務を経て現在キャリアコンサルタント。東京経営短期大学講師、日本経営協会総合研究所講師。著書に「採用実務」(日本実業出版)、「日本のFP」(TAC出版)、「キャリアマネジメント」(DFP)ほか。

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