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第46回 自分らしい社会人でいるために必要なこと

 就職活動を終えた学生が、内定者と呼ばれる時期になりました。入社は決まったけど、まだ社員ではない。期待と不安が入り交じった、不安定な時期でもあります。

 社会人になることで、これまで築いてきた“自分らしさ”を失ってしまうのかも…。学生と話をしていると、そんな揺れ動く気持ちを、感じることが多々あります。自分らしさへの喪失感が、内定者の不安の一因でもあるのでしょう。

 20代の社会人調査(※)で、「仕事に求めること」をきいたところ、約4割の人が「自分らしい生活ができること」と答えています。社会人として、自分らしくあることは、望みつつも、難しいことでもあるようです。

 先日、社会人1年目の元学生と、久しぶりに会いました。元気は元気なのですが、職場で自分らしさが発揮できないストレスを、元気いっぱいに語ってくれました(笑)。仕事経験も、社内ネットワークも乏しい新人が、仕事で自分らしさを発揮するには、もう少し時間がかかるでしょう。

 それより気になったのは、言葉の端々に感じる「言いたいことが言えない」ストレスです。職場で「自分の考えや意見を気兼ねなく言うことが難しい」そうです。「私の意見は違いますって、率直に言えばいいじゃん」とアドバイスしたら、「仲の良い先輩には言えても、上司には言えませんよ」と一蹴されてしまいました。

 自分の意思を、相手に伝えることができない。これは“自分らしい”という感覚を保持する上で、大きな障害になります。結局、彼のストレスの要因も、ココにありました。相手の立場(役職)や年齢に関係なく、言いたいことが言えるか否かは、社会人の自分らしい生活に大きな影響を与えているようです。

 自分の言いたいことを、適切に相手に伝えることがでれば、内定者であっても、新人であっても、自分らしくいられる可能性は高くなる。まぁ、理屈ではそうなのですが、学生の普段の対応を見るかぎり、これは相当に高いハードルといえます。

 気兼ねなく言いたいことが言える親しい友達以外、自分の意見を言いたがらない。そんな学生が増えていると感じます。自分の意見が否定されることを恐れ、言いたいことを飲み込み、その場を丸く収めようとします。もしくは、できるだけ空気を読んで、相手の望む答えを述べようとします。

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 また、学校社会には、先輩後輩という学年主義が、意外と色濃く残っています。1つでも上なら、何も言わずに従うといった、中学・高校の部活動的ルールが、もの言う行為を必要以上に阻害します。

 友達でもなく、他者でもない。年齢の異なる“知人”という距離感の相手に、自分の考えを理解してもらう行為を、彼らはほとんど経験したことがありません。大学生同士のグループワークでも、学年を確認してから、メンバーの顔色を伺いつつ、慎重に言葉を選んでいきます。

 相手と言葉を交わす前から、何かを察し、望むことや、失礼にならない発言を選別する。そんなことは不可能です。過剰な気遣いは、ストレスになります。彼らが、他者との関わりを避けたがる気持ちも理解できます。

 職場の人間関係も、同様の難しさがあります。慣れない関係性に、適切なスタンスが分からず、妙に馴れ馴れしい発言をしてしまったり、逆にいつまでも他人行儀な対応だったり…。ほどよい距離感で、社員と話すことに苦慮している内定者もいるでしょう。

 親密でもなく、赤の他人でもない。そんな職場という人間関係のなかで、相手の立場(役職)や年齢に関係なく、自分の考えを適切に伝えることができるスキル(対話力)は、確かに高いハードルです。しかし、“自分らしさ”を失わない社会人でいるためには、乗り越えたいハードルでもあります。

 内定者の中身は、まだ半分以上が学生です。社会人同士なら当たり前の感覚も、身に付いていません。不文律が成立しないからこそ、互いを言葉で理解し合う、対話の良いチャンスです。

 「私はこう思う、あなたはどう思うか」と、こちらから適切な対話を示してあげてください。少しずつ、言いたいことを伝える対話力が、彼らに身に付いていくでしょう。

 自分の言いたいことを、適切かつ明確な言葉で伝え合う行為は、察することの多い日本文化には、馴染みが薄いものです。「実は、自分も得意ではない」と感じている社会人がいるかもしれません。

 もしそうであれば、内定者とのコミュニケーションは、社会人であるあなたにとっても、自分らしくいるための対話トレーニングになるかもしれません。職場のなかで、自分らしくいられる感覚は、組織にとっても良い影響があるのではないでしょうか。


※アンケート集計結果「仕事に求めること」について/エン・ジャパン株式会社

【掲載日:2017/10/13】

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最近の学生気質

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キャリアコンサルタント 平野恵子

国立大学の教育学部卒業後、会社勤務を経て、現在キャリアコンサルタント(CCE,Inc.認定GCDF-Japan)。大学生や社会人などの若年層を中心としたキャリア支援を専門に活動している。また、人材会社の研究員として、就職活動に関する動向や意識調査をもとに、雑誌や専門誌への執筆も行う。

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